1本30万円!「ワインボトル入り高級緑茶」は何が違うのか

ワインボトルに入った1本30万円(税別、以下同)の超高級な緑茶「King of Green MASA Super premium」が発売されました。製造・販売を手掛けるのは、G20大阪サミットの夕食会で商品が使われた実績もある、ロイヤルブルーティージャパンという企業です。

量販店で購入できる一般的なお茶と、30万円の高級茶は何が異なるのでしょうか。東京・六本木の旗艦店「ロイヤルブルーティー六本木ブティック・THE T BAR」で開かれた記者発表会の内容から探ります。


緑茶をワインボトルに入れる理由

ロイヤルブルーティージャパンは、高級レストランや料亭など、約300の飲食店にワインボトルに入れた高級茶を提供しています。同社の売れ筋の商品は、5,000円辺りの価格帯のラインナップ。一般的な緑茶と比べて高価な印象がありますが、お酒を飲めない人でも周囲に引け目を感じない、「高級飲食店で楽しめるノンアルコール」として、リピートする客が多いようです。

茶葉を効率的に摘採できる「機械摘み」が現在の主流ですが、同社の商品は手間のかかる「手摘み」の茶葉を使用。生産の過程で添加物をいっさい入れず、3〜7日間をかけて水出しでお茶を抽出しています。

容器にワインボトルを採用している理由について、同社の吉本桂子社長は「お茶を高額で販売したいからではない」と話します。飲食店で「水出し茶」を作って提供するのは、安全面のリスクが高いからだといいます。

同社では食品衛生管理基準「HACCP(ハサップ)」の認証を取得した工場で、1本ずつ手作業でワインボトルに充填しています。

また、急須でお茶をいれる場合、味を一定にして複数人に提供するのは高い技術が必要ですが、ワインボトルを使うことで「いつでもどこでも誰がサーブしても、本物のお茶の魅力を正確に伝えられる」と吉本社長は説明します。

30万円でも「当社はまったく儲からない」

8月1日から販売を始めた、1本30万円の「King of Green MASA Super premium」は、同シリーズの第4弾。第72回全国茶品評会「普通煎茶(手摘み煎茶)の部(4キロ)」農林水産大臣賞(1等1席)を受賞した、静岡県浜松市天竜区のお茶を使用しています。

ロイヤルブルーティーブランドの「シンボル」という位置づけの商品で、贈り物やパーティーでの飲用などを想定。高価格な商品ですが、「30万円で販売しても、当社はまったく儲からない」と吉本社長は語ります。15本限定の受注生産で、材料費や製造コストなどがかさむようです。

吉本社長の口から繰り返し語られたのは、「世界基準」や「新しい様式」といった言葉です。緑茶の超高級ブランドを作り出した背景にあるのは、ペットボトルの緑茶飲料の普及による急須でいれる「リーフ茶」の消費量減少と、それに伴う茶農家の困窮です。

農林水産省が公開している資料「茶をめぐる情勢」によると、2007年以降はリーフ茶と緑茶飲料の1世帯あたりの年間支出額が逆転。特に若年層は「簡便な形態での飲用にシフト」している傾向が顕著だといいます。

30万円の緑茶の味は……

緑茶は摘み取りの順番で「一番茶」「二番茶」「三番茶」と呼ばれます。茶農家の大きな収益源となるのは、価格の高い一番茶です。しかし、ペットボトルの緑茶飲料に使用されるのは、低価格な二番茶以降となります。

そのため、ペットボトル緑茶飲料の原料となる茶葉の生産量がいくら伸びても、茶農家にあまり利益は出ません。大規模化して大量販売できない茶農家にとっては、一番茶が売れないのは経済的に厳しい状態というわけです。

同社が狙うのは、緑茶市場のピラミッドのトップ。最高級のお茶で新たな基準を提示することで、急須でいれた普段使いのお茶、ペットボトルのお茶との違いを示し、業界全体の活性化も目論んでいます。

記者会見では、30万円のお茶の試飲する機会がありました。吉本社長によると「万人受けする味ではない」ですが、試飲した人たちから感嘆の声が漏れていました。3日間かけて低温抽出しているので苦味や雑味がなく、だしのような強い旨味が口の中に余韻として残ります。

普段飲んでいるお茶の何杯分…と考えてしまうと購入するにはハードルの高い商品ですが、祝い事など特別なシーンで活用されるかもしれません。

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