サッカー海外組のリアルな移籍事情

選手の移籍情報が活発に飛び交っている昨今。この夏の期間は、ヨーロッパ主要国以外でプレーしている日本人選手たちも、例外なく移籍が多くなる時期です。そこで今回は、私自身が新しいチームと契約をするまでに経験してきたことをご紹介します。

久保健英選手のレアルマドリード移籍をはじめ、多くの選手の海外移籍が日本サッカー界を賑わせています。また、既に海外チームに所属している選手の移籍情報も、サッカーファミリーの皆様であれば気になるところではないでしょうか。大きくニュースには取り上げられていませんが、私のような、ヨーロッパ主要国以外での海外リーグでプレーする選手たちにとっても、この夏の時期はあらゆる国や地域で移籍期間が設けられており、多くの選手が活躍の場を求めて新天地へと向かいます。そこで今回は、過去に何度も海外チームでの移籍やトライアルを経験した私の実体験をご紹介します。

2017年、タイでのトライアル中に行われたトレーニングマッチの様子。

移籍期間について

はじめにお伝えしたいのが、選手がチームを移籍する際には「移籍期間」が存在します。移籍期間以外であれば、どんなに実力があろうとも移籍することが不可能です。また、移籍期間は国によって異なります。久保選手が移籍したスペインリーグは、2019年7月1日~9月2日までが移籍登録期間となっておりますが、同じヨーロッパでもお隣のポルトガルリーグでは、2019年7月1日~9月22日までとなっており、終了時期が異なります。しかし、各国の移籍期間が重なるタイミングがヨーロッパのみならず、世界各国含めて大きく分けて2回存在し、現在の夏の期間と、冬の期間です。このタイミングに移籍市場は活発に動きます。

ニュージーランドへの挑戦

2016年シーズン、私はニュージーランドへチャレンジしました(以下、ニュージーランド=NZ)。NZは”夏”と”冬”2つのリーグが共存する特殊なシステムです。夏の期間に行われるサマーリーグは11月~4月まで、冬の期間に行われるウインターリーグは3月~9月に開催されます(南半球に位置する国なので日本とは季節が逆です)。

サマーリーグは、NZのトップリーグです。全10チームから構成される全国リーグで、昇降格はありません。上位チームはオセアニアチャンピオンズリーグに出場することができ、その大会で優勝するとクラブW杯に出場できます。

ウインターリーグは、NZ国内の各地域からなるリーグです。各カテゴリーが1~3部に構成されていて、旧首都であるオークランドのリーグが一番レベルが高いとされています。夏と冬で開催時期がずれていますので、両リーグ共にプレーする選手も多数います。

私が現地へ向かったのは、既にウインターリーグが開幕していたリーグ戦真っ最中の5月でした。シーズンは既に始まっていましたが、5月末までが移籍期間でしたので、5月中であればウインターリーグのチームと契約することが可能です。代理人にチームを紹介して頂き、現地のチームへ直接練習に参加する、トライアルという形でした。

練習参加をしたのが『Three Kings United(スリー キングス ユナイテッド)』という、当時オークランド地区の1部リーグに所属していたチームです。チームメイトにはオークランドシティやワイタケレといった、過去にクラブW杯に出場したクラブに所属していた選手も在籍していて、決してレベルは低くありませんでした。

約1週間の練習参加の末、無事にチームと契約。監督からは自分のことを即戦力として評価していただき、迷わずこのクラブでプレーすることを決めました。この時はスムーズに物事が進み、自分のプレーする場所を見つけることができました。

しかし、ウインターリーグでのプレーを経て、NZトップリーグであるサマーリーグへの移籍を模索しましたが、トライアルのオファーを受けていたチームには残念ながら加入できず、そのまま移籍期間も終了してしまいました。結果、NZでのプレーを続けれなくなてしまった私は、違う国へ行くことを決意します。

2016年、NZのスリーキングスユナイテッドでプレーした際の様子。

カバン1つで乗り込んだタイ

2017年元旦、私は東南アジアのタイへ単身乗り込みました。この時点では、特にトライアルや契約の宛ても無く、専属のエージェントもいない状況でした。しかし、年末年始は移籍期間真っ最中で、特に東南アジアでは日々色々な情報が飛び交っているので、まずは現地に行くことを選択しました。

案の定、1月3日にタイで長年プレーしている私の友人から「僕の古巣のチームが新しい外国人選手を探してますよ!」という情報を教えていただきました。そのチームの監督と私をFacebook上で繋げてもらい、1月7日に『Kamphaengphet FC(カンペーンペットFC)』という、T3(タイリーグ3部)のチームがトレーニングマッチを行う会場へ向かいました。この時、バンコクに滞在していた私は、試合会場であるシンブリーという町にバスとタクシーを乗り継いで一人で向かったのですが、なんとタクシーのおじさんが試合会場ではない場所で私を下ろすというプチ事件が…(笑)。

初めて来たタイの田舎町で、私は迷子になってしまったのですが、監督に電話&近くにいた工事現場のおじさんに助けを求めたところ、30分後に監督が車で迎えに来てくれました。何とか無事にチームに合流し、その日のトレーニングマッチに出場。1ゴールを決めて、その後のチーム活動にも帯同を許されました。

「この試合で獲得する外国人選手を最終的に決める」と事前に知らされていた、数日後のレーニングマッチでも1ゴールを決めることができ、チームから契約書が出てきました。

タイへの移籍は、何も決まっていない状況からスタートしましたが、自ら行動を起こすことの重要性を実感した時間でした。

2017年、タイのカンペーンペットFCでプレーした際の様子。

モンゴルからのオファーのはずが…

2017年にプレーしていたタイのチームとは1年契約。契約が満了したので新たな移籍先を模索していましたが、2018年シーズンにプレーするチームが中々見つからない状況でした。そんな時、2015年にプレーしていたモンゴル時代のチームメートから届いた一通のメッセージ。

「今年はどこでプレーするんだ?チームが決まってないなら、また一緒にプレーしよう。」

私が海外プロ生活をスタートさせた、モンゴルリーグ1部の『FC Ulaanbaatar(FCウランバートル)』が、私のことを欲しがってくれているとのことでした。

”現役中にもう一度モンゴルでプレーしたい”という気持ちがあったので、私はモンゴルに行くことを決意しました。現地に渡航する前に、直接オーナーとやり取りをして、細かい契約条件なども確認しました。あとは現地で契約書にサインをすればOKという状況かと思われたのですが…

チームは2018シーズンから新たな監督に変わり、外国人選手に関しても監督自らが判断して全て決める、ということになりました。マネージャーから「お前も他の外国人選手と一緒にトライアルね~。」と言われ、直接やり取りしていたオーナーからは「お前なら大丈夫でしょ、がんばれよ~。」と言われました。当初とは話が違うのに、なんとも軽い対応でした…(笑)。

それでも、監督に認められなければ試合に出れないのは、トライアルだろうがチームに加入していようが変わらないので、気持ちを切り替えて日々の練習に取り組みました。その結果、新監督にも認められて、無事に契約を勝ち取ったのが2018年でのモンゴルでの出来事です。

2018年、モンゴルのFCウランバートルでプレーする様子。

移籍に必要な「運」という要素

新しいチームへ移籍する際は、サッカーの実力以外にも様々な要素が複雑に絡んできます。紹介させていただいたように、上手くチームが決まったこともあれば、チームが決まらなかったことも同じぐらい経験してきました。そのことから感じたことは、ある意味『運』も重要な要素だと思います。その運を掴めるように、日頃から何事にも真摯に取り組むことが、選手自身ができる唯一の方法だと私は思います。きっと、久保選手も幼い頃から真摯にサッカーと向き合ってきたからこそ、レアルマドリード入りを実現できたと、私は分析しています。

事務局からのお知らせ

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