第25回参議院議員通常選挙(以下、今回の参院選)の投票率は戦後2番目に低い48.80%という結果に終わりました。特に18、19歳の投票率は31.33%(総務省発表の速報値)で、18歳選挙権がはじまって以来下落が続いています。
そんななか、ネット上で政治や選挙に関心の薄い若い人たちになんとか振り向いてもらおうと活動しているYouTuberを発見!現役の国会議員の娘さんで「政治家娘YouTuberみこちゃんねる」を運営している大学生のみこさんにYouTubeチャンネルを始めたきっかけや発信を続けてきて感じたことなどを聞きました。
親が政治家でも政治について何も知らなかったところから始めた
選挙ドットコム
「政治家YouTuberみこちゃんねる」を始めたきっかけはなんですか?
政治家娘YouTuberみこ(以下、みこさん)
私は地元が石川で、お父さんが国会議員なんですね。(近藤和也議員)
お父さんが初めて選挙に出たのが私が小学生のときで、みこちゃんねるを始めたのは大学生になってからなんですけど、その間も含めて今までお父さんは4回選挙に出ましたが4回中2回しか勝ててなくて(笑)そろそろ安定的に勝ってほしいなぁ、何かしたいなぁ、とは思ってたんです。
私自身もお父さんの仕事のことや、友達に「お父さんって、政策で何がしたいの?」とか聞かれても全然答えられなかったんです。
あと若い人って政治とか選挙に関心ないじゃないですか、私の周りでも「政治家さんが何したいかわからん」みたいな子もいて。なので若い人に政治を知ってほしい、関心を持ってほしいというのと、私が個人的に政治のことを知りたいな、と思って始めました。
選挙ドットコム
なぜYouTubeチャンネルという形で発信しようと思ったんですか?
みこさん
大学2年生のときに私が企業のインターンに行ったらYouTuberがたくさんいるちょっと変わったインターンで。YouTuber、動画チャンネルだったら若い人も見てくれそうだなと思って。じゃあ試しにやってみようかな、って思ってYouTubeを始めました(笑)
選挙ドットコム
試しに、だったんですね(笑)
チャンネルではどんなことをされているんですか?
みこさん
与野党問わず色んな議員さんにインタビューしたり、学生に政治や選挙についてどう思うか聞いてみたりしています。
「政治家娘YouTuberみこちゃんねる」のYouTubeチャンネルより
今回の参院選だと兵庫の安田真理さんや、静岡の榛葉賀津也さん、東京の水野素子さんのところに行きました。
選挙のときではないですが、与党だと自民党の石破さんに出演していただいてます。国民民主党の玉木さんにもインタビューしたことがあります。
地元の石川にも今回の参院選で行きたかったんですが大学の授業とかテストとかがあっていけませんでした…
選挙ドットコム
普段は大学生をされている傍らで色んな党の国会議員に会いに行かれているんですね!
みこさん
そうなんです、与党は石破さんしか行けていないんですが…本当はもっと他の党の議員さんのところにも行ってみたいんですよ、共産党の議員さんとか、公明党の議員さんとか。あとは最近話題のNHKから国民を守る党の方にも!私の住んでいる選挙区で1回も選挙に行ったことがない、っていう子が「山本太郎に入れた!」「NHKから国民を守る党に入れた!」っていう子もいて。N国は行動力とか、発想がすごいなぁって思います。
本当は全部の政党の政治家さんにお話を聞いてみたいんですが、まだちょっと難しいです… でも、お父さんが国会議員で私がまだ大学生の今のうちに色んな人のところに行きたいと思っています(笑)
お父さんが当選できるのは当たり前じゃないなっていうのはすごい感じているので…
選挙ドットコム
積極的にアプローチしているんですね。
みこさん
はい、行けそうだな、出てほしいな、という議員さんにはアプローチしています。石破さんとは私が議員宿舎のエレベーターで会ったときに話しかけたんです。「今度チャンネルに出てください!」って。そしたら石破さんは「あっ…誰ですか?」って仰って(笑)
そのとき石破さんご本人から名刺をいただいて、その後直接事務所にお願いして出ていただけるようになりました。
政治や選挙に関心のない人にどうやって広めていくかが悩みどころ
選挙ドットコム
チャンネルを始めてみて、どんな印象でしょうか?手ごたえみたいなものはありますか?
みこさん
自分でチャンネルをやってみて、チャンネル登録やTwitterのフォロワーも増えているんですが、そうしてくれる方って政治や選挙にもともと興味のあるオジサンとかが多めなので、結局内輪でやっている感じなってしまうんですね。なのでもっと広めていきたいんですがどうしようかな…と思っています。
最初始めたときはいけるかな?と思ってたんですがやればやるほどわからなくなってきて
政治や選挙に興味があまりない、っていう人に広がっていかないのが悩みです…
若い人でフォローしてくれる人や熱心に応援してくれる人もいるんですが、「なんとか学生会議」とか?どこかの党を熱心に応援している…ちょっとよくわからないんですが「学生部」っていうんですかね?私からするとそういう若い人たちもどちらかというと内輪の方に行っちゃっているんじゃないかなって感じます。私が伝えたいターゲット層とはちょっと違うかな、って。
選挙ドットコム
興味関心が薄い人にどう届けていくか、っていうのはこういった活動をするとぶつかる悩みですね。
みこさん
私の友達でみこちゃんねるを見ていない、興味ない、っていう人にどうやったら興味持つ?って聞いたら「みこのメイク動画とか。政治の話難しいからそういう普通のことやってよ~!」って言われて(笑)
今までは政治家さんとの一対一のインタビューを企画してきたんですけど、最近は同じ層にしか見てもらえないなって。じゃあ全然関係なことをしてみようかなって思っています。バラエティ番組のアメトーク!とかあるじゃないですか、それの議員さんバージョンみたいな。
最近出した動画だと、国民民主党の伊藤たかえ議員と、そのお子さんたちに出ていただいたんです。子供と親の共演!みたいな。
※選挙ドットコムではみこちゃんねるに出演された伊藤たかえ議員に「みこちゃんねる」の活動についてコメントをいただきました。
選挙ドットコム
みこさんの「政治家娘YouTuberみこちゃんねる」の活動についてどう思われましたか?
伊藤たかえ議員(以下、伊藤議員)
私も2人の娘がいますが、政治家の子供・娘という立場だと、政治や選挙と距離を置きたいと思う娘の方が多い気がするのに、みこさんは父親を想う気持ちからこういう活動をされています。それを見たらもう応援するしかないな!と思っています。
みこさん(写真中央左)と伊藤たかえ議員と2人の娘さん
選挙ドットコム
若い人に興味を持ってもらう上での取り組みとして「みこちゃんねる」を見た感想はいかかでしょう?
伊藤議員
やっぱり若い人に政治や選挙について興味を持ってもらおうとすると「主権者教育」や「政治教育」ということになります。そういった取り組みも大事ですが、どうしても若者との距離が遠くなってしまう面があるのも確かです。なのでみこちゃんねるのような取り組みには頑張ってほしいですし、みこさんには若い人の立場でも、政治家の娘という立場でも、本当に頑張ってほしいなと思っています!
選挙ドットコム
選挙ドットコムもみこちゃんねるを今後見守っていきたいです。本日はコメントをいただきありがとうございました!
プチ炎上して逆に思った「政治について発信するハードルは案外低いのかも」
選挙ドットコム
興味や関心があまりない人たちに届けるにはやはり普通のことではいけない、と。
みこさん
でも最近は興味や関心のない原因が少しわかってきた気がして。ちょっと前に国民民主党の玉木さんの発言があったじゃないですか、憲法改正について「生まれ変わった、議論を進めていく」っていう。
普段動画でもTwitterでも中立というか、政治の話をあえてしないようにしていたんですけど、結構その発言で玉木さん叩かれてたじゃないですか。ハッシュタグで「#裏切り者に死を」「#玉木に説教スタンディング」とか。
私はなんで議論をしようと思っているのにダメなんだろう?話し合いすればいいんじゃん、なんで最初から断るの?っていうツイートをしたらたくさん反応があって。
結構自分の考えを押し付けるというか、自分の中でまとまっている考えを押し付ける感じの方が多かったので、こういう発言をしたらそういう反応が返ってくるんだろうなぁと思うと若い人がせっかく興味を持ってくれたとしても嫌がってしまう人が増えちゃうのかなぁって思って。
選挙ドットコム
みこさんはこの件で政治について発信をするのが嫌になったり、政治から距離を置こうとは思わなかったんですか?
みこさん
私はあんまり気にしてなかったです(笑)でも他の人はすごい心配してくれて。嫌だなぁとは思ったんですけど逆にハードルが下がったなというか。
選挙ドットコム
ハードルが下がった、というと?
みこさん
それまでは何か政治とか選挙について発信するのはすごく考えたり知識が必要だったりするのかな、って思っていたんです。でもこの件のリプとかを見ていると「とりあえずダメだー!」っていう人もたくさんいて!
初歩的なコミュニケーションとかを別に気にしなくても好きに発言できるんだ!って思うと意外とハードル低いんだな、好きにやってもいいんだな、って。ちょっと前向きになってきてます(笑)
私と全然違う考えの人がいらっしゃるのも分かったので、「なんでそういう考えを持つようになったんだろう?」とか「どういう今までの暮らしがあって、これまでやってきたんだろう?」とかを考えるようになって。発言している人たちも、真面目に、ちゃんと自分の考えを持っているから、面白いなぁと思いました。「意外と好きなことをボンボン言っていいんだよ~」っていうのを若い人に広められると意外といけるんじゃないかなって感じてます。
色んなことを言う人はいますが、そういう人もすごく純粋で、ちゃんと言ったら意外とわかってくれるというか。ご自身の考えをちゃんと持って発言しているので違う考えを否定しようとは思いません。たまーに言い返してブロックされることはあるんですけどね(笑)
今は広まればいいかなぁというのと、ターゲット層はそこじゃないって思っているので。
色んなことを言われて、なるほどなぁと思うこともあればそうでないこともあるので自分の考えの整理にはなる気がします。
野党議員の娘だけど最初は「野党って要る?」って思っていた
チャンネルを続けたら政治の見え方は変わってきた
選挙ドットコム
自分で発信したり、他の人から意見をもらったりする中で、お父さんの政治信条や、所属する政党のスタンス、もっと大きく野党っていう括りについて、以前と見え方は変わりましたか?
みこさん
もともとは「野党って要るの?(笑)」って思っていて。自民党が色々決めるならお父さんも自民党に行けばいいじゃん!受かるし!と思っていたんです(笑)
でも意外と野党でも法案を出せたり、小さい党でもちゃんとしたことを言えば話を聞いてくれたりするのを見ると「あ、野党の役割ってこういうことなんだな」って最近分かってきました。全然政治のことがわからないからこそ「なんでこういうことをしているんだろう?」っていう疑問を持って、政治の中の話を引き出せるのかなぁって思っています。
動画を撮影する表情は真剣そのもの
選挙ドットコム
みこさんと同年代の方って正直選挙に行く人は少ないじゃないですか。今回の参院選で18、19歳の投票率は30%代前半という数字が出ていますし。そのことって単純にどう思われますか?
みこさん
確かに選挙行かない人多いですね。「なんでなん?」って周りにも聞くんですけど、「もっと自分たちのところに話をしに来てよ」とか「別に今は生活に困ってないし」という子が多くて。まあ確かに仕方ないのかなって思います。私も今はそんなに困っていないですし、何か課題感がなければ別に行く意味がないなというのはわかります。
選挙ドットコム
投票率をもっと上げたほうがいいって思いますか?
みこさん
私は…絶対に投票率を上げないといけない、とは思わないですね。自分が考えて、誰に投票する、しない、あるいは投票に行かない、っていうのは全然ありなんじゃないかなって思います。選挙の日を知らないとか、政治とかどうでもいいっておいうのはちょっとまずいなぁって思うんですけど。
興味を持って、選挙を意識してもらえたらなぁって思います。それを意識してもらえたらお父さんの票増えるかなぁ~って(笑)
でも、本当は「あくまでも私が知りたい!」っていう気持ちが強いです。
「私みたいに詳しくない人も政治について発信していいんだ」
楽しいからこそ続けていられる
選挙ドットコム
こういったインタビューをすると何かしらの「答え」を求めてしまいがちで。「なぜこれをやったんですか?」とか「誰のためにやっているんですか?」とかを聞きたくなってしまいますが、そういったところはフワッとしているんですね。
みこさん
まぁ、楽しいからやっているだけです(笑)
票を増やすためにこういうことをやって、支持率を上げるにはこうして…とかガチガチに考えていたらなかなか続けられないし、苦しくなっちゃうと思うんです。私みたいな人が政治について発信してもいいんだよ~って感じなのかな。
最初は強い意志を持とう!と思っていたんですけど、そのうちお父さんのことは考えずに勝手に色んな議員さんのところに行って。それでもしお父さんに迷惑がかかってもしょうがないかなぁ、なんて(笑)ただそれがプラスの効果になってお父さんが当選してくれたらな、とは思いますけどね。
選挙ドットコム
お父さんの所属する政党や他の政党について不思議だなぁ、なんでだろう?と思うことはありますか?
みこさん
国民民主党は…なんでこんなに支持率低いんだろう?別に変な人がいる訳じゃないのに…って思います(笑)
あとは自民党はうらやましいなって思います。もし私が自民党の国会議員の子供だったらこんな活動してないと思うんで(笑)たぶんちやほやされて、優越感にひたれてると思うんです(笑)
私のお父さんはまだ2回しか当選していないので、私の感覚もまだあんまり政治に染まっていないと思うんです。世襲とかでもないですし。だからある意味他の人と目線が近いんじゃないかなと。例えば自民党で、代々の政治家一家の娘とかだったら全然考え方が違うと思うんで、そこは私の強みかな思っています。その立場だからこそできることをこれからも考えていきたいですね。
選挙ドットコム
中立の立場から「みこちゃんねる」を通じて政治や選挙について広く若い人に伝えたい、という気持ちもあり、一方で議員であるお父さんのためにも頑張りたい、という気持ちの両方があるんですね。素直なところを話してくださり、本日はありがとうございました!