社説(8/3):パワハラ規制/国際基準へ見直しが必要だ

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 企業や職場でのパワーハラスメントが絶えない。

 芸人の「闇営業」問題に絡み、吉本興業社長の「全員首だ」との発言は「典型的なパワハラ」と批判が広がった。北海道大では、学長が職員へのパワハラで解任を迫られる事態となっている。

 パワハラをどう規制するのか。先の通常国会で、パワハラ防止策を企業などに義務付ける女性活躍・ハラスメント規制法が成立した。しかし、行為自体を禁止する規定がなく、国際的な水準には程遠い。国はハラスメントを法律で明確に禁止するなど規制を強化するべきだろう。

 6月に開かれた国際労働機関(ILO)の総会では、職場での暴力とハラスメントを全面的に禁止する条約が採択された。ハラスメントを巡る初の国際基準となる。

 日本政府は採択で賛成票を投じながら、条約の批准については消極的だ。国内法の規定が条約の求める基準を満たしていないためである。国内法を国際的な基準に見合うよう見直し、批准に向けて早期に検討する必要がある。

 条約はハラスメントを「身体的、精神的、性的、経済的損害を引き起こす許容できない行為や慣行、その脅威」と幅広く定義。禁止を法律で義務付け、民事上の責任や刑事罰などの制裁を設けるよう求めている。対象の範囲も幅広く、労働者にとどまらず、求職者や実習生、ボランティアなども含む。

 条約は、各国から集まった政労使の代表により、圧倒的多数の賛成で採択された。ハラスメントの被害根絶は国際的な潮流とも言えるが、日本の使用者代表の経団連は投票を棄権した。

 企業側は規制法の成立過程でも警戒心が根強かった。損害賠償の根拠となるパワハラ禁止規定は「業務上の適正な指導との境界があいまい」などの理由で反対。規制法は結局、「ハラスメントを行ってはならない」と理念を示すにとどまった。保護の対象も就職活動中の学生や顧客などは見送られた。

 パワハラは確かに、仕事の指導と区別が不明確な面もある。しかし、だからといって働く人の尊厳や人格を踏みにじるような暴言や行為がまかり通っていいはずがない。

 執拗(しつよう)な叱責(しっせき)や罵倒で精神的に追い詰められ、うつ病や自殺などにつながる事例は後を絶たない。

 全国の労働局に寄せられた「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は年々増え、2018年度は約8万2000件に達した。厚生労働省によると、18年度に仕事が原因でうつ病などの精神疾患になったという労災申請は1820件で、過去最多を更新した。

 深刻な被害を踏まえると、ハラスメント対策の実効性を高めることは急務だろう。規制法の再検討とともに、それぞれの職場でハラスメント根絶の取り組みを強めたい。