ステーキ界の“新星”が欠品間近、どうなる「ウルグアイ牛」

国内のステーキチェーンとして初めてとなる「ウルグアイ産牛」のステーキを5月に発売したブロンコビリー。このステーキ界の“新星”について、7月24日に開かれた同社の第2四半期決算説明会で、衝撃の事実が明らかにされました。

超厚切りの目玉商品として売り出したところ、あまりの人気に供給が追い付かず、8月中にも欠品になる可能性が高いというのです。発売から、わずか3ヵ月で頭をもたげた欠品騒動。はたして、ウルグアイ産牛の今後はどうなるのでしょうか。


「赤身が詰まったジューシーな肉」

東名阪を中心に130店舗超、社名と同名のステーキレストランを展開しているブロンコビリー。同社が5月27日から販売しているのが、ウルグアイ産牛を使った「炭焼き 超厚切り 熟成サーロインステーキ」(200グラム・税別1,780円)です。

ウルグアイ産牛は生育過程でホルモン剤を打っておらず、他国産の牛に比べると、同じ育成期間でも2~3割ほど小さいといいます。しかしその分、「赤身が詰まったジューシーな肉になる」(ブロンコビリーの竹市克弘社長)のが特徴です。

他国産の牛肉と比べると断面は小さめだが、その分、同じ分量でも厚切りで提供可能

他国産の牛に比べると小ぶりなため、カット面も小さくなります。ブロンコビリーではこれを逆手に取り、あまり多くの量を食べない日本人客にも厚切りで提供。これに同社が強みとする炭焼きを組み合わせることで、外はカリッと、中は肉汁を閉じ込めてジューシーに焼き上げているといいます。

他のステーキチェーンに先駆けてウルグアイ産牛の提供を始めた竹市社長。7月24日の決算説明会でも、「炭焼きという“武器”に良質な赤身肉を掛け合わせることで、先駆者メリットを生かしながら、新たな価値を提供できている」と自信をのぞかせました。

好調な売れ行きには“伏線”があった

実際に、売れ行きも絶好調。2月から提供を開始した同じ価格帯のメニューと比べると、1.8倍の出数を記録しています。その要因として、ウルグアイ産牛の超厚切りステーキが“新たな価値”を提供できたのに加えて、もう1つ伏線があったと考えられます。

2016年には15.6%という経常利益率を誇ったブロンコビリーの業績ですが、2017年は12.7%、2018年は11.9%と高水準を維持しながらも、ピークアウトの傾向が顕著になっています。背景にあるのが、価格帯の安いハンバーグに需要が偏ったことに伴う、客単価の伸び悩みです。

こうした事態を受け、同社はこれまで2,000円台が中心だったステーキ系商品に関し、2月から1,000円台のメニューを投入。静岡県内限定で提供した「炭焼き 黒毛和牛ステーキセット」(160グラム・同1,980円)は発売から2週間で完売したといいます。「もう一度、原点に立ち戻って、ステーキを取ってもらえるメニュー構成にしました」(竹市社長)。

このようにステーキへの取り組み強化が実を結び始めた中で、満を持して投入されたのがウルグアイ産牛。超厚切りという新たな魅力を加えたことで、会社の想定を上回る売れ行きになったというわけです。

超厚切りステーキの今後はどうなる?

その結果、「8月には欠品になる可能性が高い」(竹市社長)というウルグアイ産牛ステーキ。売れ行きが好調なのであれば、早めに手当てすれば良いように思われますが、そううまくはいかない事情がありました。

ネックとなったのが、輸送に要する期間です。ウルグアイは日本から見ると、地球のほぼ真裏に位置する国。船便だと、どうしても輸送に60日程度が必要になってしまいます。

もちろん、ブロンコビリーとしても厚切りステーキへのニーズが高いとわかったため、産地へのフィードバックとアピールを通じて、供給体制の再構築を進めています。しかし、急激に伸びた需要にはさすがに間に合わなかったというのが現状のようです。

こうなってくると気になるのが、超厚切りステーキの今後でしょう。ブロンコビリーでは、同等のニュージーランド産牛で超厚切りステーキ(200グラム・同1,780円)を開発。計画を前倒しし、8月から提供を始める予定です。

「高齢になると、霜降り肉はどうしても重たく感じてしまいます。そこで、高品質なタンパク源として、シニアや女性でも食べられて、活力が沸くのが赤身肉。徹底的に当社の強みである炭火を生かしながら、他チェーンとは違うことをアピールしていきたい」(竹市社長)

既存店テコ入れにあの手この手

同社では、他にもサラダバーの名称変更も検討中だといいます。自社の野菜ソムリエが考案し、店内で調理した新鮮なサラダがブロンコビリーの売りの1つですが、同業他社も相次いでサラダバーを導入したことで陳腐化が進んでいるからです。

店内調理が売りのサラダバー

せっかく品質の高いサラダを提供しているのに、同じ名称を使っていては期待した効果も上がりません。「当社の強みは食材の調達力・加工力・調理力なので、そこをアピールできるコンセプトは何なのか、見直しが必要」と竹市社長は語ります。

また、消費増税に伴う軽減税率の導入を控えて、税率が8%で据え置かれるテイクアウトの提供も検討を始めたといいます。「どの程度の品質水準であれば、持って帰ってもおいしいと思ってもらえるか、考えていきたい」(同)。

「今はピンチですが、既存店改革を進めて、復活させていきたい」と抱負を述べる竹市社長。矢継ぎ早に打ち出した策が功を奏すのか、その成否はそう遠くない将来に明らかになりそうです。

© 株式会社マネーフォワード