【MLB】大谷翔平に昨季2被弾の右腕、1年後に雪辱できたワケ「より多くの情報を…」

インディアンス・クレビンジャーから四球を選び出塁したエンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】

1年前に2打席連続被弾のクレビンジャー、3日は2打数無安打1四球とリベンジ

■インディアンス 7-3 エンゼルス(日本時間3日・クリーブランド)

 エンゼルスの大谷翔平投手は2日(日本時間3日)、敵地インディアンス戦に「3番・DH」で2試合ぶりに先発出場。1年前に2打席連続本塁打を放った快速球右腕クレビンジャーとの2度目の対決に挑み、2打数無安打1四球で快音は発せなかった。

 昨年8月3日(同4日)以来となる対決はトレードマークの長髪をなびかせ力投したクレビンジャーに軍配が上がった。1打席目はストレートの四球。3回の2打席目は外角チェンジアップを引っかけさせた二ゴロ。6回の3打席目は内角直球で左飛に仕留めた。直球、カーブ、チェンジアップを駆使した14球の勝負。好結果を生んだのは、サンプルの増えたデータを十分に咀嚼できたことにあるようだ。クレビンジャー曰く、

「去年と違うのは、今年はより多くの情報を得ているということだね。バットをコンタクトさせる率の高いゾーンや、彼が得意とするゾーンなどがより多く数値化できている」

 大谷はこの日の試合までに289打席に立ち、昨季の367と合わせると米移籍後は計656打席に立っている。密度の濃い対策を講じられるのもうなずける。

 昨季からインディアンスのコーチングスタッフに加わったブライアン・スウィーニー氏(元日本ハム)が投手目線でこんな話をしてくれたのは4月のこと。

「僕は07年から3シーズン日本で投げたけど、ここは日本と違ってどこの球場に行っても、まるで監視されているかのようにデータ収集用のカメラがあちこちに設置されている。我がチームには投手の動きを専門に分析している担当者がいるので解析したデータを大いに役立てている。例えば、本塁に投げる時と牽制を入れる時の体の使い方の違いはすぐに分かるし、腕をどう使うかのバリエーションからも癖は見抜けてしまう。投手はマウンドで投げれば投げるほど“丸裸”にされていくんだ」

登板翌日のランニングを終えたインディアンスのクレビンジャー【写真:木崎英夫】

「この夜一番の失投」は二ゴロ「あれは彼が打ち損じた」

 逆もしかりだ。長足の進歩を遂げるデータ収集機器により、打者も研究されている。昨年は大谷に対し自分が攻めやすいストライクゾーンを突く意識が強かったというクレビンジャーは今回、データに基づいた被打率の高いスポットに注意を払い「両コーナーに散らす」戦略で臨んだ。それでも手元は狂った――。

「この夜一番の失投」としたのが、二ゴロに仕留めた2打席目の初球だった。真ん中低めの96マイル(約154キロ)直球を大谷が左方向へファールしたことで命拾いした。「あれは彼が打ち損じたものだったね」と苦笑する。付言すれば、内角の直球で仕留めた3打席目の左飛は、捕手の要求と違う逆球。昨夏に被弾した2本目と同じコントロールミスだったが、事なきを得た。この日、プログレッシブ・フィールドの左中間には打者に有利となる追い風が吹いていた。

 厚みを増したデータからは、打者心理を読み解くためのヒントも得た。クレビンジャーは投手優位のボールカウント「2-2」を一例に出し、大谷の傾向を掴んでいる様子。このカウントでは投手はまだ1球遊べる余裕があり、打者は三振警戒で際どい球をカットにかかる圧力がかかる。また、このカウントに至るには最低でも4球が費やされ、打者には配球の傾向が見えてくる。両者の駆け引きがぶつかり合うカウントで、その優位を無駄にしないための大谷の“傾向”をデータから掴み取った様子。

 洗いざらしの髪に手をやりながらこの日の勝負を振り返った右腕は、一つだけ言い淀んだ――。「大谷の弱点?……。それは、これから分かっていくことだよ」。

 28歳右腕と25歳の好打者の対峙は、これから一層、味わい深いものになっていくだろう。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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