サバイバルの予感漂う富士500マイル戦も勝負は1スティント目。GT-R以外の上位陣の展望《GT500予選あと読み》

 ニッサンGT-R+ミシュランタイヤ勢がフロントロウを独占することになったスーパーGT第5戦富士500マイル予選。今回のレースはいつもの約2.5倍の距離となる800km/177周の決勝レースとなるが、予選を終えて各陣営、どのような手応えを感じているだろうか。予選後のコメントをもとに、決勝のポイントを探った。

 まずお知らせしたいのが、予選Q2で1コーナーで大クラッシュをして赤旗終了の要因となってしまった塚越広大(KEIHIN NSX-GT)だが、予選後、体に問題はなく、マシンも決勝に向けて修復できることが判明した。

「予選Q2で最初のアタックで、クルマのフィーリングは午前中から良くなって今週の自分たちのベストのフィーリングにはなっていたのかなと思います。そこでまず1アタックを終えて、連続で2アタック目に入ろうとしたストレートエンドでブレーキを踏んだ瞬間にちょっと違和感があって、なんとかクルマをコントロールしようとしたんですけど粘りきれなくて、外側の方に行ってしまいました」と話す塚越。

 ブレーキングでタイヤスモークを上げた塚越のマシンはタイヤがロックしたような形となって、アウト側のガードレールに激しくぶつかり、マシンは回転して止まった。ブレーキの違和感は片側だけ効いているような感じだったという。

「そうですね。ブレーキのトラブルだったのではないかと聞いています。1アタック目は大丈夫だったんですけど、あの瞬間だけでしたね。体は大丈夫です。クルマも明日決勝には全然、間に合うと思います」と塚越。予選3番手のタイムをマークしながら、KEIHIN NSX-GTは赤旗の原因となってしまい予選Q2のタイムは抹消となり、予選8番手となってしまった。

 それでも予選8番手なら、実質予選3番手の速さがあっただけに500マイルの長距離レースでの巻き返しは十分可能だ。ただ、タイヤが四輪ともフラットスポットができているようで、もし決勝に向けて四輪交換という事態になればグリッド降格となり、明日のグリッド発表が気になる。

 前戦の第4戦タイの予選2番手(決勝3位)に続いて今回予選3番手を獲得したのがWedsSport ADVAN LC500だ。「明日は気温次第ですね」と話すのは坂東正敬監督。

「今回、ハードとミディアムのタイヤを持ってきていて、路面温度が下がればミディアムタイヤでポールが狙えるのではないかと思っていましたが、午前のフリー走行があまりに調子が悪くて、クルマのセットアップを変えたら良くなって、路面温度も午前の45℃から5℃くらい下がった40℃になったので、ミディアムで行きましたけど、(上位2台の)ミシュランも温度の許容範囲が広かったですね。決勝の路面温度が下がったら、チャンスがあると思っています」と、坂東監督が話すように、前戦に続く連続表彰台だけでなく、ヨコハマタイヤ勢としても久々のGT500優勝を狙えるポジションとなった。

■路面温度5℃の違いで変わる勢力図。鍵を握る決勝レースでのタイヤのデグラデーション(摩耗)

 WedsSport ADVAN LC500としては、上位のGT-R+ミシュランの2台は高温になると、さらに速さを増すと見ている。ヨコハマタイヤ勢としては今季は各スティントの後半で失速してしまうケースが目立つだけに、レースでのタイヤのデグラデーション(摩耗)の耐久性が大きな鍵になるだろう。

 ランキング4番手で燃料リストリクターが一段階絞られながら予選4番手を獲得したのがZENT CERUMO LC500だ。まずはQ1でブリヂストンタイヤ勢トップとなる4番手を獲得した石浦宏明が話す。

「クルマは予選の時が一番良かったですね。第2戦の富士のときのセットアップとも違いまして、予選Q1が始まる10分前に村田(卓児)エンジニアがセットアップを変更して、それが抜群でした。さすが村田エンジニアという感じです」と石浦。Q2を担当した立川祐路も予想以上の手応えに自信を深める。

「状況を考えると、もっと前に行きたかったですし、もう1周アタックに行く予定でしたけど(赤旗で中止)、それでもタイムが上がったとしても上とはタイム差があるので、順位がどこまで上がったかはわからない。それでも十分、明日は表彰台、状況によっては優勝も狙える位置につけれたと思っています。前回のタイ戦のことを考えると正直、もっと苦しむことになるかなと思って富士に来ていたので、思ったより行けましたね」と立川。ランキングを争う同じレクサス勢が予選で苦しんだチームが多いだけに、明日の決勝は大きなチャンスとなる。

 多くのチーム、ドライバーが話すように、決勝は選択したタイヤ、そしてタイヤメーカーごとのパフォーマンスと耐久性が大きなポイントになってくる。振り返れば第2戦の富士でも予選でポールポジションを獲得したMOTUL AUTECH GT-Rは決勝ではタイヤのデグラデーション、そしてピックアップ(自分のタイヤカスが取れずに自分のタイヤに付いてしまいグリップダウンを招く)の症状が起きてしまい、ZENTに優勝を奪われてしまった。

 日曜の決勝の気温と路面温度次第で、ペースの上がるチーム、苦しくなるチーム、夕方になって気温が下がってから復調するチームなど、それぞれのコンディションにいかに適切なタイヤを選択していけるかが大きな勝負となるが、いずれにしても、決勝では最初のスティント、予想される5スティントのうちのワンスティント目のペースを見れば、おおよその正解が見えてくるだろう。

 1スティントでどのチームが速いラップタイムで、そして長い周回を走行できるか。それによって、その後の戦略が楽になることから、1スティント目が大きな勝負となるだろう。

今季5戦で3度目のポールポジションを獲得したMOTUL AUTECH GT-R。決勝ペースが今季は課題になっている
予選Q2の終盤にクラッシュしてしまったKEIHIN NSX-GT。決勝に向けて修復作業が続く

© 株式会社三栄