IR事業者選定の課題 投資額より収益性重視

識者インタビュー 関西学院大経済学部・上村敏之教授

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上村敏之教授

 県と佐世保市がハウステンボス(HTB)への誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート施設(IR)について、県はIRの建設・運営を委ねる事業者の選定をどのように進めるべきか。大阪IRに関するコンサルティング業者を決める府・市の選定委員を務めた、関西学院大経済学部の上村敏之教授に聞いた。

 -IRはこれまでの公共事業とどう違うのか。
 日本で認められていなかった事業で、専門性が高い。事業者には海外実情に精通していることが求められる。整備手法はPFI(民間資金活用による社会資本整備)で、民間に運営権を委ねる「コンセッション方式」に近い形になるのではないか。

 -投資額は大きいほどいいのか。
 初期投資額が大きいほど、建設期間中の地域経済への波及効果は大きい。しかし、収益性が低ければ投資を回収できない。IRは民設民営で、失敗しても行政の負担は生じない。だが事業規模が大きいだけに、地域経済に与えるマイナスの影響は大きい。撤退すれば廃虚が残る。

 -「長崎IR」に関心を持つ事業者のアピールが熱を帯びている。懸念はないのか。
 事業者のアピールはIRを地元に周知するいい機会だ。互いにアイデアを出し合うことで最終的な提案内容も磨かれる。ただ、大阪府・市のIR誘致も同じような雰囲気があり、現状は巨額の投資やイメージが先行して一種のバブルのように感じる。過熱しすぎると過剰投資につながりかねない。

 -何を重視して事業者を選定するべきか。
 最も重要なのはIRのビジョンや構想だ。事業者は地元の特色をうまくアピールしてほしい。海外にあるものを日本に建てる必要はなく、地元の良さを組み込まなければ埋没する。県は、世界で一つのIRをつくることができる事業者を選ぶべきだ。
 IRが誘致できれば地元が潤う、という短絡的な発想ではなく、周辺地域も含め、持続可能性を評価するべきだ。例えば、周辺の観光資源との連携や交通機関を含めたアクセスの改善、広域の経済循環などを考慮したほうがいい。地域経済の観点では、地元企業が参加する仕組みづくりも大切だ。

 【略歴】うえむら・としゆき 1972年、神戸市生まれ。専攻は財政学、公共経済学。関西学院大学長補佐、財務省財政制度等審議会財政制度分科会臨時委員などを務める。