地域の手で大山道照らす 新灯籠伊勢原の柏柳さん手作り

地域に受け継がれる大山灯籠(左)と新設した金属製の大山灯籠(右)を囲む柏柳さん(右端)ら地域住民=伊勢原市小稲葉

 夏山の季節に合わせて、大山へと続く「大山道(おおやまみち)」を照らす「大山灯籠」1基が、伊勢原市小稲葉の住民の手で初の金属製に生まれ変わった。江戸時代中頃に立てられたとされる大山灯籠を飾る行事は市の無形民俗文化財だが、その老朽化などが課題となっていた。新たに製作した柏柳順三さん(61)は「今までずっと受け継がれてきた行事が長く続いてほしい」と話している。

 市内の文化財の保護を行う有志の団体「ISEHARA・おもてなし隊」によると、大山灯籠は、多くの参詣者が関東各地から大山を目指した江戸時代、登山が許された夏山の時期(7月27日~8月17日)に道の辻や大山が見える場所に立てられた。沿道の明かりが多くの人を山へ導いたという。

 1923(大正12)年の関東大震災や都市化の影響で多くが途絶えたものの、おもてなし隊の調べでは今も小稲葉に4カ所、北高森と東大竹に1カ所ずつの計6カ所が残っている。7月下旬から8月中旬ごろまで設置され、ろうそくの点灯や灯籠の撤去、保管は地域住民が担っている。

 ただ、近年は灯籠の木製の土台の傷みが目立ってきたほか、高齢化に伴って住民の設置や撤去作業の負担も増している。地域からは「重い灯籠を持ち運ぶことが大変」との声も上がっていたという。

 こうした事情を聞き、一肌脱いだのが柏柳さん。自動車会社で長年、部品作りに携わってきた経験を生かし、4月に灯籠の製作に取り掛かった。

 「作ることが好きだからね。難しいことではなかった」と振り返る柏柳さん。鉄板を切って溶接し、銀色に塗装。従来に比べて大幅に軽量化し、高さ約170センチの灯籠を仕上げた。

 実は、時期は定かではないものの、これまで使われた灯籠は柏柳さんの父が50~60年前に手作りしたもの。柏柳さんは「夏になると道に灯籠がともっている風景を見て育った」と目を細め、「地域全体で頑張って管理し継承していきたい」と笑った。

 一方、同市小稲葉では今月4日から中旬までの土日に、大山灯籠の周辺におもてなし隊の隊員が手作りした竹灯籠15、16基も並べ、大山灯籠の周知に努める催しも。点灯は午後6時~8時を予定している。地元自治会長の高部忠美さん(63)は大山灯籠について「地域で行事を引き継ぎ、次の世代に残していきたい」とうれしそうに語った。

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