IR事業者選定 巨額投資、壮大さ…アピールに熱

オシドリインターナショナルが開いた長崎IRのPRイベント。多くの関係者が集まり熱気に包まれた=福岡市中央区

 長崎県と佐世保市がハウステンボス(HTB)への誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート施設(IR)を巡り、IRの建設・運営を目指す事業者のアピールが熱を帯びている。県は“タッグ”を組む事業者を2020年の前半に公募し秋ごろ決定する方針。すでに国内外の事業者が巨額投資や壮大なイメージをPRしている。事業者選定では、公平性や透明性などをいかに担保するかが課題となる。今後の流れを探った。

 6月1日、福岡市にある高級ホテルのホールは熱気に包まれていた。主催は「長崎IR」への参加を目指す香港の投資グループ、オシドリインターナショナル。会場にはルーレットなどを配置してカジノの雰囲気を演出。ディーラーやドレスを着た女性らが接客した。壇上では地元福岡選出の国務大臣らがあいさつし、九州への誘致に期待を寄せた。元格闘家や韓国のアイドルグループも登場して盛り上げた。
 オシドリは、最高級ショッピングモール、海洋博物館などを備えたIR施設のほか、敷地内にモノレールを造るイメージを発表。取材に「4千億円規模の投資を計画している」と明らかにした。シンガポールの世界的なIR「マリーナ・ベイ・サンズ」を手掛けた関係者も支援を約束した。

オシドリインターナショナルが示した長崎IRのイメージ(同社提供)

 6月27日には佐世保商工会議所などが佐世保市でセミナーを開いた。オシドリを含む6事業者がプレゼンテーションをした。
 この中で、マカオを拠点とする企業グループに属するIR事業会社のカレントは「5500億円の資金を確保している」と表明した。エンターテインメント機能を備えた船舶やバスで長崎空港まで移動するアイデアも披露。本社を長崎市に設けるとした。

カレントが示した長崎IRの一部のイメージ。HTBの既存ホテルと先進的施設の融合を提案している(同社提供)

 ほかの事業者も国際的な実績や強みを紹介した。これに加え、防災拠点としての施設整備や地域経済の振興策などを示している。

長崎IRに関心を持つ事業者がアピールした主な実績と提案

 県と佐世保市は、現在、20社程度とやりとりを続けている。今年4月には県と市、HTBの3者が、IR用地として約30ヘクタールを確保する基本合意書を結んだ。
 県などは本年度中にコンセプトを募集する。県はコンセプトを踏まえて長崎IRの水準などを含む実施方針を策定。建設・運営を担う事業者の公募を始める。プロポーザル方式で審査し、パートナーとなる優先交渉権者を決める。

県・佐世保市が想定する長崎IRのスケジュール

 IRは民設民営で整備する。公設の場合は予算が限られるが、投資額は事業者が判断するため“青天井”とも言える。県は有識者らによる選定委員会を設置し、応募事業者の提案を審査する方針だが、評価項目は県側が決めるため、適正な選考基準を設定できるかが課題となる。県IR推進課は「過去にないスケールの事業。公正に審査できるよう慎重に準備を進めている」としている。

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