日産の最新運転支援装備が搭載された軽乗用車、「デイズ」の乗り心地は?

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私はモータージャーナリストとして、何千万円もする高級車から手軽な軽自動車まで年間100台以上のニューモデルや話題の車を試乗しています。これから、みなさんが車と楽しく付き合っていけるような情報をお届けしていきたいと思っています。

今回ご紹介するのは世界に誇る庶民の味方、軽自動車です。2019年3月に登場以来、堅調に売れている日産「デイズ」をピックアップして、搭載された最新機能、その独特の成り立ちなどを解説します。スズキやダイハツといった軽自動車の老舗メーカーばかりか、日産、ホンダといった自動車メーカーからも続々とニューモデルが投入される軽自動車は、車好きからも無視できない存在になっています。

なかでも日産「デイズ」は、その代表格ともいえる、軽自動車の最新形です。


失敗できない車

このところ矢沢永吉さんに手放し運転をさせるCMが話題になり、“自動運転”と“技術力の高さ”を売りにしている日産。そうしたメーカーとしての意気込みは、2019年3月に登場したばかりの軽自動車、2代目の「デイズ」に試乗した際によく理解ができました。「なるほど、これ1台があればすべて解決だ」と思えるほどの仕上がりを見せています。

その軽自動車の人気車がフルモデルチェンジを行ったわけですから、それなりに期待値も高く、話題になります。おまけにカルロス・ゴーン問題真っ只中と言うこともあり、商品力とはあまり関係ないところでも注目の的。言わば“失敗のできない車 ”と言うわけです。

「デイズ」は、日産と三菱自動車が軽自動車を共同で企画製造するために2011年に設立した合弁会社「NMKV(Nissan Mitsubishi Kei Vehicle)」が、それから2年後の2013年に世に送り出した軽のハイトワゴン(居住性を良くするために車の背を高くしたワゴン)です。共同開発ですから、三菱自動車も4代目「ekワゴン」というブランドで販売しています。

ハイウエースターはリアにルーフスポイラーとエアロタイプのバンパーを装着。フロントから後方に向かって上昇していくようなラインと共に、ノーマルモデルよりスピード感、スポーティ感のある外観を演出しています。ボディカラーは17種のカラーバリエーションがあります

この「デイズ」は業界では大きな話題となったのですが、デビューからモデルチェンジまでのモデルサイクル途中で燃費データの不正問題で、大きくつまづきました。それでも日産の販売力もあって健闘し、発売以来、累計で約43万台。とくに昨年(2018年)はモデル末期でありながらも14万台あまりが販売され、軽自動車販売ランキングで第3位を誇るまでになりました。

外観のデザインが少し違った兄弟車、三菱「ekワゴン」も同時に“6年ぶりのフルモデルチェンジ”として販売されました。

最新技術を惜しみなく軽自動車に注いだ

先代モデルの開発と製造を担当したのは三菱で、日産は企画と部品調達を担当しました。今回の2代目モデルは企画・開発を日産が行い、製造担当は三菱と、役割分担がより明確になり、日産が得意とする技術がたっぷりと投入されているのです 。車にとっての骨格となるパワートレンやプラットフォームを刷新するなど資金をかけていますが 、何よりも今回の目玉は、日産がこれまでじっくりと研究開発を進めてきた充実した先進運転支援装備が与えられたことです。このテクノロジーはすでに「セレナ」や「リーフ」などに「プロパイロット」の名で搭載されているものであり、軽自動車としては初設定されたサポート機能です。残念ながら冒頭のCMで登場する最新の“プロパイロット2.0”ではありませんが、それでも評価の高い技術です。

「プロパイロット」の機能の代表的なものとして “アダプティブクルーズコントロール”と車線中央をキープする“ステアリングアシスト”があります。“アダプティブコントロール” は0~100km/hの範囲内で対応し、先行車に追従走行しながら走行できる優れもの。ドライバーのストレスをかなり軽減してくれたり、追突事故などのリスク低減に役立ちます。

アナログなスピードメーターとエンジン回転計。そのセンターにあるカラーディスプレイには運転をサポートする燃費情報やフロントタイヤの向きなど車両譲歩の他、登録すれば個人的な記念日など情報を表示されます

また、社会問題化している緊急自動ブレーキについては全車に標準装備としたほか、車線逸脱警報および車線逸脱防止支援システムや踏み間違い衝突防止アシスト、移動物を検知可能なアラウンドビューモニターなども採用しています。

ここまででも軽自動車としてはかなり贅沢な内容となっているのですが、さらに事故時などに自動で緊急通報を行う「SOSコール」を軽自動車としては初搭載しているのです。

200万円超えでも納得

さあ、ここから実車レポートに移ります。

まずは最新機能を試そうと、車を受け取るとすぐに首都高速に上がり、「プロパイロット」のスイッチをオン。ボタン操作ひとつで行えるため使い勝手は実に簡単。ステアリングを握っていれば、同一車線内であればアクセル操作や、ハンドル操作もなく、ほぼ自動運転の感覚なのですが、あくまでもプロパイロットは“運転支援レベル”の技術です。自動運転ではありませんから注意を怠ってはいけません。その使い勝手はリーフやセレナなどの上級車種とほぼ同じ。「軽もここまで来たか」と思わず唸ってしまうほどの仕上がりです。

この安全機能に守られていると言う安心感を実際に一般道で試乗しながら、 思い浮かべると技術的な進化と企業の努力に、ちっとした感動さえ覚えました。おまけに日産が「スマートシンプルハイブリッド」と呼ぶ、システムのおかげでアイドリングストップからの走り出しが非常にスムーズに行われることに感心すると同時に、もちろん燃費向上にも役立つことを考えると、もはや“凄い”と言うしかありません。

フロントタイヤとリアタイヤの間、ホイールベースは先代モデルより65mm延長されました。そのおかげで足下の広さなどはプレミアムカー並みを確保されています

またプラットフォームを一新したことでもいくつかの高評価を得ることになりました。おかげでエンジンルームを縮小でき、ホイールベース(前輪と後輪の長さ)を旧型より65mm長く確保できたのです。これによって前後への揺れが軽減され、乗り心地がゆったりとします。さらに室内スペースが拡大することで、後席のニールーム(膝周辺の空間)が前後に70mm、荷室長が135mmと、それぞれ拡大できています。ボディ外寸がすでに軽自動車規格ギリギリのところまで拡大されている最近の軽自動車にとって、このキャビンの拡大は、まさに乾いたタオルをさらに絞るような努力によって実現したことになります。

上質なインテリアにも注目

そしてもう一点、インテリアのクオリティが高いことも高評価のひとつ。そのお陰で「もう車はこれでいいよ」と結論を出しても後悔しないレベルにあります。そしてこの写真のスポーティな仕様である「ハイウェイスター」は上質なインテリアに加え、一目で分かる外観のカッコ良さで、軽自動車の人気車種になっています。 ちなみに三菱で販売される「ekワゴン」と、そのSUVバージョンの「ekクロス」なども、上質なインテリアと三菱流の個性的なフロントマスクが人気を得ていますから、日産と三菱にとって久し振りに明るいニュースといえます。

リアハッチには車名とグレード名、そしてSハイブリッドであることを示すエンブレム

でも、少し落ち着いて考えてみると、試乗車のオプション価格の総額は50万円近くとなり、車両の価格の総額は200万円を超えます。この価格は軽自動車としてどうなんでしょうか?

そしてなによりも日産「マーチ」や三菱「ミラージュ」といった、つまり軽自動車のひとクラス上行く1リットルクラスの普通車が、良く出来た軽自動車に食われてしまって、メーカーにとって痛し痒しとならなければいいなと、少々心配になりますが。