軽い星ほど歳をごまかす?恒星の年齢と自転周期の変化に関する研究結果

アメリカ天文学会は8月2日、軽い恒星では加齢による変化が乏しいとするコロンビア大学のJason Lee Curtis氏らによる研究結果を紹介しました。研究成果は論文にまとめられ、7月3日付でThe Astrophysical Journalにて公開されています。

■恒星は歳を重ねるほど自転周期が長くなる

太陽に見られる黒点のように、恒星の光は表面で発生する現象によってわずかに減光することがあり、その周期を測ると自転周期を求めることができます。

恒星の自転周期は加齢とともに長くなる(つまり自転速度が遅くなる)と考えられていて、自転周期がわかればその恒星の年齢を知ることが可能です。恒星の自転周期から年齢を求めるこのような手法は「ジャイロクロノロジー(gyrochronology)」と呼ばれています。

今回Curtis氏らの研究チームは、自転周期が長くなるペースは恒星の質量に左右されるのかを確かめるために、まずははくちょう座の散開星団「NGC 6811」にあるF型、G型、K型の恒星を調べました。使用されたのは「ケプラー」宇宙望遠鏡によって観測されたデータで、NGC 6811の年齢はおよそ10億4000万歳であることがわかりました。

■星団の年齢をシミュレーションで3億歳老化させて比較

研究チームは次に、かに座の散開星団「プレセペ星団」に目を向けました。プレセペ星団の年齢はおよそ6億7000万歳であることがすでに判明していますが、研究チームはジャイロクロノロジーを応用したシミュレーションモデルを使って、プレセペ星団の年齢を人工的に10億歳まで老化させたのです。

これは、2つの星団の年齢を揃えることで、恒星の自転周期を比較できるようにするためです。シミュレーションが正しければ、質量が異なるF型、G型、K型の各恒星の自転周期はおおむね一致するだろうと予想されていました。

■K型の恒星は自転周期がほとんど変わらなかった

ところが、観測されたNGC 6811の恒星の自転周期と、シミュレーションで老化させたプレセペ星団の恒星の自転周期がよく一致していたのは、質量が大きいF型とG型の恒星のみでした。質量が小さなK型の恒星の自転周期はシミュレーション結果と一致せず、むしろNGC 6811よりも3億歳以上若い実際のプレセペ星団とほとんど変わらなかったのです。

なぜK型の恒星では自転周期が変わらないのか、その理由は今のところわかっていません。研究チームは「軽い恒星ほどゆっくりとしたペースで自転周期が長くなる」といった単純な理由ではなく、恒星の磁場や恒星内部の対流などが原因となって、一時的に自転周期がほとんど変化しない時期がある可能性を示唆しています。

Curtis氏らは、K型の恒星の自転周期が年齢によってどのように変化するのかを明かし、ジャイロクロノロジーがどのように適用できるかを探るために、今後はより古い星団「Ruprecht 147」(およそ25億歳)などの観測を希望しています。

Image Credit: Miguel Garcia/Intihuatana
[https://aasnova.org/2019/08/02/not-so-fast-some-stars-show-a-spin-down-slowdown/]
文/松村武宏

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