きちんと維持管理 住まいに資産価値 ―ユーザー版2019年春季号から

既存住宅市場で売買しやすく

 『スムストック』という名前をご存じだろうか。一般に、木造住宅は築後20年で建物の査定価格がゼロになってしまうのはよく知られた話。だが、そうした見方に一石を投じるべく、戸建住宅の大手企業を中心に組織された、一般社団法人優良ストック住宅推進協議会が定めたブランドだ。

 協議会加盟企業が供給した戸建ての新築住宅(スムストック住宅)に対して、将来の売買にあたり独自の「3原則・3手法」を用いて適正に評価される。これまでの実績では、築年数が21年目以降でも平均建物価格546万円という成約額となっており、「きちんと維持管理が行われた住まいには価値がある」との主張の裏付けとなりつつある。

 「安心して既存住宅が買える世の中にする」との意気込みで発足した同協議会。その目的は「大切な住まいの資産価値を適正に評価すること」であり、質の良い新築住宅に住み手が手を加えていくことで資産価値が維持され、既存住宅市場で売買されやすくしようという試みだ。スムストックは、既存住宅の流通システム構築を目指した新たな取り組みといえる。

 スムストック化の条件が「3原則」。まずは「住宅履歴データ」が整備されていること。過去に不具合があっても、それをきちんと修理した記録が残されている必要がある。次いで50年以上にわたって「長期点検・補修制度」を守り続けられること。さらに、一定の「耐震性能」(新耐震基準)を有している住宅であること、などが原則となる。

 また、「3手法」では、専門のスムストック住宅販売士が査定から販売まで担当すること、及びスケルトン(躯体)とインフィル(内装)で建物評価するとともに、建物・土地価格を分離表示する手法をとるというものだ。

 一般の既存住宅の査定は、建物価格と土地代を合わせた総額表示。これに対し、スムストックでは建物と土地の価格を分ける分離表示を採用している。例えば、土地付き一戸建てで評価額5200万円の住宅の場合、従来は「総額5200万円」だが、スムストックは「土地価格3200万円」、「建物価格2千万円」と個別に査定し表示する。

 従来査定(一般木造)では、新築でも20年後に資産(建物)価値がゼロになるため、35年ローンならその時点で残高は15年分。スムストックの場合は、適切なリフォームの実施で、ローン完済後も資産価値は残る。メンテナンスやリフォームなどに伴う利用価値の維持向上が、資産価値に反映される仕組みである点が特徴だ。

独自の販売士制度も

 スムストックを特徴付けているのが、独自の『スムストック販売士』有資格者でなければ、査定や販売ができないという仕組み。宅地建物取引士資格が必須で、土地と建物両方の査定ができるのもそのためだ。

 さらに、『スムストック専用瑕疵保険』もポイント。CS(顧客満足)向上のためのサービスの一環で、売り手(仲介事業者含む)にも買い手にもメリットがある。

 住宅保証機構の住宅瑕疵担保責任保険「まもりすまい既存住宅保険」の仕組みを利用。その上で、スムストック査定時点検を、保険加入の前提となる検査と同じ位置づけと認める。これで、負担する費用が保険料だけですみ大幅に圧縮できることとなった。しかも、保険料自体も会員各社が負担するため、保険加入に関しての売り主の費用負担はゼロにできる。

 買い主側のメリットは、瑕疵保険が付保されるという点に加え、適合証明の代わりになるという点。「築20年を超えると、住宅ローン控除に適合証明が必要になる。取得には、また数万円の費用がかかるわけで、本来かかるはずの費用が不要になるということは、買い主側にとって大きいはず」(同)としている。

 一方で、国も不安・汚い・わからないといった従来の「中古住宅」のマイナスイメージを払拭し、安心して購入するための基礎的な条件を備えた既存住宅に対し『安心R住宅』の標章を付与する制度を創設した。「安心R住宅」が付いていると、質の高い住宅であることに、国がお墨付きをあたえるものだ。同協議会は、17年12月にこの制度の第1号登録団体ともなっている。

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