貯蓄残高100万円、2人目を産んでも家計は大丈夫?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、2人目の子供がほしいという28歳の男性。現在、妻は扶養内でパートとして働いていますが、出産で働けなくなると貯蓄が底をつくのではないか心配だといいます。FPの三澤恭子氏がお答えします。

貯蓄残高100万円で、2人目の出産を考えても大丈夫ですか。昨年に義実家所有のマンションを2000万円ほどで購入しました。月々の返済は8万円、返済期間は20年です。管理費を含めると月10万円の支払いになります。現在は、妻のパート代を毎月の貯蓄に回しています。もし妻が2人目を妊娠・出産となると、月々貯金ができない上に出費が続き貯蓄が底をつくのではないかと心配です。家具・家電の購入や運転免許の取得、固定資産税など、まとまった出費で、ここ3~4ヵ月程は貯金ができていません。子供用品はフリマサイトを使用したり、お古をいただいたりで抑えています。これから子供の幼稚園や習い事が始まったり、2人目の出産費用などを考えると心許ないです。

住宅ローンが20年と短めであることと、積立型の生命保険は学資保険代わりで子供が18歳時に約600万円の資金にできるので、この20年をどう乗り切るかが問題かなとも思います。アドバイスよろしくお願いいたします。

〈相談者プロフィール〉
・男性、28歳、既婚(妻:28歳、パート)、子供1人(2歳)
・職業:会社員
・居住形態:持ち家(マンション)
・毎月の世帯の手取り金額:40万円
(夫35万円、妻5万円)
・年間の世帯の手取りボーナス額:40万円
・毎月の世帯の支出目安:約35万円

<資産状況>
・毎月の貯蓄額:5万円
・現在の貯蓄総額:100万円
・現在の投資総額:仮想通貨5万円
・現在の負債総額:住宅ローン1820万円、奨学金100万円

<支出の内訳>
・住居費:10万円(うち管理費2万円)
・食費:5万円
・水道光熱費:2万円
・教育費:3.5万円
・医療費:0.5万円
・保険料:2.5万円
(夫:積立型生命保険 44歳時に600万円)
・通信費:0.5万円
・車両費:0.5万円(カーシェア代)
・お小遣い:5.3万円
(夫4.5万円、妻0.8万円)
・奨学金:1.2万円(35歳まで)
・夫実家への仕送り:2万円
・その他:1.4万円


三澤:ご相談ありがとうございます。ファイナンシャルプランナーの三澤恭子です。奥様と協力しながら家計をやりくりされている様子がうかがえます。家族が増えるのは喜ばしいことですね。それと同時にご主人様は一家を支えていかなくてはという責任が増してきます。安心して妊娠、出産ができるような家計を考えていきましょう。

妊娠・出産で「かかるお金」と「貰えるお金」

2人目の妊娠・出産に関する費用からみていきましょう。

母子健康手帳の交付とともに妊婦健診を公費の補助で受けられる補助券が発行されます。「妊婦健康診査の公費負担の状況調査(平成28年4月)」によると、全国平均は102,097円となっていますが、検査内容によっては補助券とは別に5万円~10万円が全額自己負担となることもあります。

奥様の場合、出産費用は家族出産育児一時金として夫の健康保険から子供1人につき42万円(産科医療保障制度に加入していない医療機関などで出産した場合は40.4万円)が支給されます。

利用する医療機関によって異なりますが、東京都の出産費用の平均値は約62万円(国民健康保険中央会「出産費用 平成28年度」より)。国からの補助を除き、少なくとも妊娠・出産で30万円ほどかかりそうです

幼稚園の費用はどうでしょう。2019年10月から「幼児教育・保育の無償化」により利用料は無料(一部の幼稚園に月額25,700円の上限あり)になりますが、文部科学省の「平成28年度 子供の学習費調査の結果」をもとに筆者が試算したところ、年間の通園送迎費、食材料費、行事費など、公立17万円、私立27万円がこれまでと同じく各ご家庭での負担金額となりそうです。

教育費全体については、次のキャッシュフロー表の中でみていきましょう。

「産後1年だけ」夫の支出をコンパクトにする

以下の前提条件のもとキャッシュフロー表を作成し、20年間のライフプランを見える化しました。

<前提条件>
・夫の収入および基本生活費(食費・水道光熱費・医療費・通信費・車両費・お小遣い・その他)、その他支出の物価上昇率を1%とする
・基本生活費のうち食費は子供7歳時に6万円、13歳・16歳時に12万円ずつ増額
・その他の支出は、固定資産税や年間の雑費としてボーナス分40万円を充当していると仮定。第2子のミルク・おむつなど30万円。乳幼児期が終了後も習い事や塾代として同額の支出があるものとし、2人とも13歳からは塾代を15万円増額とする。
・教育費は、私立幼稚園、公立小学校・中学・高校、私立大学理系と仮定
・貯蓄残高の運用率は考慮しない

相談者様の奥様は、夫の扶養内でパートとして働いているので、出産手当金や育児休業給付金(育休手当)の対象とはなりません。しかし、パートで働く人も産前産後の休業(産休)や育児休業(育休)を取ることができます。妻が無給の1年間だけ、相談者様の支出を思い切って削ってみてはどうでしょうか。

【産後1年間の支出の改善点】
・夫の小遣い1万円、妻0.3万円、その他0.2万円を削減、夫実家への仕送り2万円を1年間ストップしてもらう、カーシェアも利用がなければ解約し月4万円を捻出。
・児童手当1.5万円は1年間のみ、ミルク・おむつ代などに充当
・食費と水道光熱費は現状維持

キャッシュフロー表をみると、相談者様が支出を切り詰めることで妊娠・出産で貯蓄が底をつくことはなさそうです。

教育費は、積立型生命保険の600万円が救いに

年間収支は上の子が中学に入る頃から赤字となり、子供達の進路に柔軟に対応するのは難しくなりそうです。

また年齢が3つ違いだとすると、大学と高校の入学が重なり年間収支の赤字がもっとも大きくなります。救われるのは、上の子が18歳時に600万円の教育資金が準備できていることです。自宅通学であれば私立大学の理系も可能です。ただし、自宅外通学となると上乗せが必要になります。

下の子の教育資金は、2年目から児童手当を含め、上の子と同じように年額30円貯めると、19歳時に510万円になります。

2人とも私立大学を卒業させることはできそうですが、余裕があるとは言えません。

妻が「雇用保険」に加入できる条件で働く

現在の貯蓄が心許ないのであれば、妻の収入を増やし生活費の6ヵ月分の貯蓄を確保しましょう。

夫の扶養内で働くパートであっても、雇用保険に加入し育児休業給付金(育休手当)の対象となるような働き方に変えていくのはどうでしょう。1週間の所定労働時間が20時間以上で31日以上の雇用が見込まれることが、雇用保険の加入条件です。

今から会社や同僚の協力を得ながら育休に入れる関係性を作っておくことも大切です。子供の成長につれお金がかかります。いずれは夫の扶養から外れ正社員を目指すというのも1つです。

妻が雇用保険に加入できる働き方を選んだ場合、以下の前提条件をもとに作成したキャッシュフロー表をみてみましょう。

【妻の働き方を変えた場合】
・妻の月収を8万円とする
・2年後から妊娠・出産、育休に入ると仮定
・育休明けより職場復帰、同条件で働く

妻の収入が増えることで出産前に貯蓄残高300万円を確保できます。出産後も48万円の育児休業給付金がでることでキャッシュフローは安定、貯蓄残高は増え続けます。

しかし、上の子が中学に入った頃から貯蓄がスローダウンするでしょう。そろそろ夫の扶養から外れた働き方に変えてもいい頃ではないでしょうか。そうすることで、下の子が中学高校の間は収支が黒字に転換、学校の選択肢も広がり、想定外の支出にも耐えられる強い家計を作ることができそうです。

漠然とした不安は薄れたでしょうか。ご夫婦でよく話し合い、安心して新しい家族を迎える準備をしてください。出産の知らせを楽しみにしています。

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