地球に接近する小惑星。壊滅的な被害をもたらす「シティ・キラー」は8割以上が未発見

2019年7月25日、地球接近小惑星「2019 OK」が地球の目の前を通過していきました。欧州宇宙機関(ESA)は8月2日付で、国際科学光学ネットワーク(ISON)によって撮影された2019 OKの姿を公開するとともに、改めて地球接近小惑星の危険性に言及しています。

■2019 OKのサイズは100m級の「シティ・キラー」だった

小惑星のニアミスそのものは日常的な出来事です。大気圏内で燃え尽きてしまうような小さな天体は毎日のように地球へと落下しており、時には流れ星として私たちの目を楽しませてくれます。

しかし、2019 OKは日常的に接近する小惑星とは異なり、その大きさは100m前後に達すると推定されています。このサイズの小惑星は、仮に人口密集地に落下すればひとつの都市全体に甚大な被害をもたらしうることから「city killer(シティ・キラー)」とも呼ばれています。

そのうえ、2019 OKは地球にかなり近付きました。最接近時の距離は地表からわずか6万5000km(地球と月の平均間隔のおよそ6分の1)だったのです。

突発的に出現する天体を探している「パンスターズ」「ATLAS」の観測データをさかのぼったところ、地球最接近の数週間前には2019 OKが撮影されていたことがわかりました。にもかかわらず、最接近の前日になるまで誰も2019 OKの存在に気が付かなかったのです。

■シティ・キラーは8割以上が未発見!?

ESAが2019 OKの画像とともに公開した地球接近小惑星のインフォグラフィックでは、小惑星のサイズごとにどれくらいの数が見つかっていて、未発見の小惑星がどれくらいあると推定されるかが示されています。

それによると、恐竜を絶滅に追いやったとされているような1km以上の小惑星はほとんど発見されていますが、2019 OKと同じ100m級の小惑星はまだ8割以上が未発見で、その数は3万個に達すると見積もられています。

■地球接近小惑星を早期発見するための試み

今回通過していった2019 OKはこの先200年ほどは地球に近付きませんが、シティ・キラーを含む未発見の地球接近小惑星は、まだ数多く存在しているはずです。

ESAは地球接近小惑星を観測するために、6.7度(満月の見かけの直径のおよそ13倍)の視野を一度に観測できる望遠鏡「Flyeye(フライアイ)」の建設計画を進めています。日本では、東京大学木曽観測所超広視野CMOSカメラ「Tomo-e Gozen(トモエゴゼン)」が観測を始めており、すでに10m級の地球接近小惑星を発見する成果を上げています。

シティ・キラーが地球に衝突する確率は10万年に1回とされていますが、それが明日ではないとは断言できません。今すぐ食い止める手立てはないとしても、より多くの地球接近小惑星の位置を把握し、衝突の危険性を早期につかむためにも、充実した観測体制が望まれます。

Image Credit: S. Schmalz / ISON
https://www.esa.int/Our_Activities/Space_Safety/Asteroid_s_surprise_close_approach_illustrates_need_for_more_eyes_on_the_sky
文/松村武宏

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