「奇怪な醜態」金正恩氏が文在寅氏を罵倒した理由

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北朝鮮は6日、またもや短距離弾道ミサイル(あるいは大口径操縦ロケット砲)と見られる飛翔体を日本海へ向けて発射するとともに、米韓を激しく非難する外務省報道官の談話を発表した。

米韓合同軍事演習が前日から開始されたことを受けて出された談話は、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の再開を示唆しながら「(米韓に)疲弊するほどの代価を払わせる」と警告している。

韓国の文在寅大統領はこの前日、対立が深まる日韓関係を巡り「南北の経済協力で平和経済を実現すれば、一気に(日本に)追いつくことができる」と強調したばかりだった。金正恩党委員長は文在寅氏からの「平和のメッセージ」にまったく配慮することなく、無慈悲な「核の警告」で応じたわけだ。

金正恩氏はそもそも、文在寅氏を個人的に見切っているフシがある。

北朝鮮の対韓国宣伝サイトである「ウリミンジョクキリ(わが民族同士)」は6月28日付の記事で、南朝鮮の執権者――つまりは文在寅氏に対して「奇怪な醜態」などと悪罵を浴びせている。このときは名指しこそ避けたが、北朝鮮メディアが実名を挙げて罵詈雑言を並べるようになるのは時間の問題だったかもしれない。

かろうじてそうなっていない理由は他でもない、6月末に金正恩氏とトランプ米大統領との「板門店対話」が電撃的に実現し、場所を提供した文在寅氏も加え、3者で仲良く写真に収まる一幕があったからだ。金正恩氏も、これをきっかけに米朝対話が進展するならばと、いったんは文在寅非難の矛を収めたのだろう。

ところが、北朝鮮が嫌悪してきた合同軍事演習を米韓が強行する運びとなり、金正恩氏の堪忍袋は再び緒が切れそうになっているのかもしれない。

そもそもなぜ、金正恩氏は文在寅氏を見切っているのか。

それは恐らく、2月のベトナムでの米朝首脳会談決裂にある。

文在寅氏はこの間、米朝間の仲裁役を自任して、双方に様々なメッセージを発してきた。そのメッセージはたぶん、ものすごく楽観的なものだったのだろう。文在寅氏には、ものごとを都合よく解釈して「バラ色の未来」を語ってしまう癖がある。


それを信じた金正恩氏は、喜び勇んでベトナムまで出かけて行った。ところが、結果は周知のとおりである。

文在寅氏はなおも、北朝鮮との関係改善を切望している。

目下の外交上の危機を乗り越える手立てが、それしかないからだ。だが、金正恩氏がその期待に応えることはないように思われる。もし、少しでも文在寅氏と仲良くやっていくつもりがあるのなら、再会したときの気まずさを考えて、前述した「ウリミンジョクキリ」の記事のような罵詈雑言をぶつけることはなかったはずだから。