24時間と夜間の血圧値の組み合わせが脳心血管病発症リスク予測に有用

2019年8月7日
帝京大学

24時間と夜間の血圧値の組み合わせが脳心血管病発症リスク予測に有用
~自由行動下血圧と診察室血圧の総死亡と脳心血管病発症との関連~

帝京大学医学部衛生学公衆衛生学講座主任教授の大久保孝義と准教授の浅山敬が参画している国際共同研究から、自動血圧計を用いて測定された24時間と夜間の血圧値の組み合わせにより脳心血管病発症リスクの高精度の予測が可能であることが明らかになりました。

【本研究の概要と意義】
大久保主任教授と浅山准教授が共同研究者として参画している国際共同研究IDACO(the International Database on Ambulatory Blood Pressure in Relation to Cardiovascular Outcome)から、自動血圧計を用いて測定された24時間と夜間の血圧値の組み合わせにより脳心血管病発症リスクの高精度の予測が可能であることが明らかとなりました。
高血圧は、脳心血管病の最大の危険因子の一つで、生活習慣の改善や降圧治療によって改善を図ることが可能です。しかしながら、血圧値は変動しやすく正確な診断が困難であることから、将来の脳心血管病発症リスクを正確に予測する血圧測定についての研究が進められてきました。
本研究では、IDACOに登録された世界13地域・3大陸(東アジア、ヨーロッパ、南アメリカ)の一般地域住民 11,135名における24時間自由行動下血圧ならびに関連医療情報を解析した。IDACOはベルギーの Leuven大学により運営管理されている国際共同研究プロジェクトであり、我が国からは岩手県花巻市で 1986年より実施されている大迫研究(帝京大学、東北血圧管理協会などの研究機関と地元自治体との共同研究事業)が参画しています。
平均 14年間の追跡期間中に 2,836例の脳心血管病の発症 (死亡を含む)が認められました。追跡開始時に測定された診察室血圧、昼間自由行動下血圧、夜間自由行動下血圧、そして 24時間自由行動下血圧と脳心血管病発症との関連を、各種危険因子で調整して解析したところ、24時間ならびに夜間の自由行動下血圧が高値である場合、脳心血管病に最も高率に罹患することが判明しました。図のように(ヒートマップ)、24時間と夜間の自由行動下血圧値の組み合わせによって、10年間の脳心血管病発症リスクを明瞭に示し得ました。
本結果から、自由行動下血圧測定を夜間含めて24時間に渡って実施するべきであること、その測定値によって将来の脳心血管病の発症可能性をしっかりと把握し、早期からの血圧管理に向けて取り組むことが脳心血管病の予防に重要と考えられます。

【研究の背景】
高い血圧値が脳心血管病リスクであることはよく知られていますが、どのように測定された血圧値が最も脳心血管病発症リスク予測に有用かはこれまでわかっていませんでした。その為、世界13地域の一般地域住民 11,135名の国際共同研究データベースにおいて24時間自由行動下血圧ならびに関連医療情報と脳心血管病発症との関連を解析しました。
その結果、24時間と夜間の血圧値の組み合わせにより脳心血管病発症リスクの高精度予測が可能であることが明らかになりました。自由行動下血圧測定は、条件を満たせば保険適用になり、実地臨床での積極的な活用が求められます。
一方、同じ診察室外での血圧測定方法として、我が国では家庭血圧測定が広く普及しています。家庭血圧も自由行動下血圧と同程度に、脳心血管病の発症を高精度に予測することがわかっています。
本年改訂版が発行された日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン(JSH 2019)でも、高血圧の診断根拠として家庭血圧を診察室血圧よりも優先するよう定めるなど、家庭血圧に基づいた高血圧の診断・治療を推奨しています。本論文は、診察室外での多様な血圧測定に基づく高血圧の管理が脳心血管病の予防に重要であることを、改めて強調するものと考えられます。

本研究成果は、米国医学界雑誌Journal of the American Medical Association(JAMA)電子版に掲載されました。
Association of Office and Ambulatory Blood Pressure With Mortality and Cardiovascular Outcomes
掲載日:2019年8月7日 (日本時間) オンラインに掲載。
URL: https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2740719