【高校野球】前評判通りの打撃を見せた八戸学院光星 データで楽しむ夏の甲子園【第1日目】

第101回全国高等学校野球選手権、初日の結果一覧

開幕ゲームでもOPS1.121と精度の高い打撃を見せた八戸学院光星

 第101回全国高校野球選手権記念大会が開幕しました。出場49校のうち、地方大会を1人の投手で勝ち抜いた学校はわずか1校。複数の投手による継投や、連投を避けるような起用など、投手への負担を軽減しながら勝ち進んできたチームが増えてきました。また高校野球でもデータによる戦術、戦略が取り入れられる時代となっています。そこでセイバーメトリクスの指標で甲子園での各校の闘いぶりを振り返ってみます。

指標の説明は以下の通りとなっています。

OPS 出塁率+長打率 1を超えると優れている
wOBA 各プレーの得点価値を累積して算出した打撃指標
O-swing% ボールゾーンに来た球をスイングした割合
Z-swing% ストライクゾーンに来た球をスイングした割合
Swing% スイングした割合
O-contact% ボールゾーンに来た球をスイングした際にバットにボールが当た
った割合
Z-contact% ストライクゾーンに来た球をスイングした際にバットにボール
が当たった割合
Contact% スイングした際にバットにボールが当たった割合
Zone% ストライクゾーンを球が通過した割合
SwStr% 空振り率
WHIP 1イニングあたりに許したランナーの数
P/IP 1イニングあたりに投球した球の数
GB/FB フライに対するゴロの割合

八戸学院光星 9-0 誉

【八戸学院光星】
打率.344 OPS1.121 wOBA0.472
O-swing% 25.3% Z-swing% 60.6% Swing% 41.1%
O-contact% 36.4% Z-contact% 97.7% Contact% 96.9%
Zone% 44.9% SwStr% 9.5%

【誉】
打率.129 OPS.408 wOBA.221
O-swing% 21.0% Z-swing% 55.9% Swing% 38.0%
O-contact% 69.2% Z-contact% 81.8% Contact% 78.3%
Zone% 48.8% SwStr% 8.3%

八戸学院光星 投手の各指標

後藤丈海
5イニング 打者数17 投球数59 
WHIP 0.20 P/IP 11.80 GB/FB 1.00
Zone% 52.5% 空振り率5.1%

山田怜卓
4イニング 打者数17 投球数62
WHIP1.25 P/IP15.50 GB/FB2.00
Zone% 45.2% 空振り率11.3%

 青森県大会15本塁打の強打を誇る八戸学院光星ですが、開幕戦でもOPS1.121とその打棒を発揮し9-0で快勝しました。Z-contact%97.7%であることから、ストライクゾーンに来た球をしっかりとらえる精度の高いバッティ
ング技術を培ってきたことがわかります。

 先発投手を任されたのは、県大会でほとんど出場していなかった後藤投手。140キロを超えるストレートはわずか1球で、空振り率も5%程度ではありましたが、打たせてとる丁寧なピッチングで5イニングでわずかヒット一本に抑えました。6回からはエースナンバー1の山田投手に系統。こちらもストレート、スライダーで10%以上の空振りをとるなどの活躍で、完封リレーを果たしました。

 誉の投手陣は与死球7を含む9つの与四死球を許すなどペースを掴めず終い。打撃陣も単打4本では成す術がありませんでした。

鍛え抜かれたバットコントロールを見せた神村学園

神村学園 6-3 佐賀北

【神村学園】
打率.226 OPS.628 wOBA0.350
O-swing% 20.3% Z-swing% 53.8% Swing% 38.7%
O-contact% 76.9% Z-contact% 95.2% Contact% 90.9%
Zone% 54.9% SwStr% 3.5%

【佐賀北】
打率.192 OPS.497 wOBA.230
O-swing% 31.3% Z-swing% 68.7% Swing% 50.4%
O-contact% 60.0% Z-contact% 91.3% Contact% 81.8%
Zone% 51.1% SwStr% 9.2%

神村学園 投手の指数

田中瞬太朗
9イニング 打者数33 投球数131
WHIP0.89 P/IP14.56 GB/FB1.70
Zone% 51.1% 空振り率 9.2%

佐賀北 投手の指数

川崎大輝
9イニング 打者数36 投球数142
WHIP1.13 P/IP17.75 GB/FB1.64
Zone% 54.9% 空振り率3.5%

 神村学園は序盤で5点のリードを掴み終始優位に試合を運んでいきました。Z-contact%95.2%、空振り率3.5%という鍛えられたバットコントールで徹底的にスライダーを狙い撃ちした様子が伺えます。特に2回裏の3連続2塁打はストライクゾーンに入ったスライダーを狙ってスイングしています。佐賀北は初回の守備の乱れなどによる3失点が大きく響きました。

 また打線も5安打でOPS.497と低迷。O-swing%31.3%からもわかるようにボール球に手を出してしまいペースをつかむことができませんでした。神村学園の田中投手はスライダー、フォークで15%の空振りを奪取するなど、被安打5、WHIP0.89の好投で出場3大会連続の初戦突破に貢献しました。

長打を生かした高岡商と併殺でチャンスの逃した石見智翠館

高岡商業 8-6 石見智翠館

【高岡商】
打率.313 OPS.957 wOBA0.429
O-swing% 19.8% Z-swing% 64.2% Swing% 37.0%
O-contact% 47.6% Z-contact% 93.0% Contact% 78.1%
Zone% 38.7% SwStr% 8.1%

【石見智翠館】
打率.270 OPS.724 wOBA.338
O-swing% 20.0% Z-swing% 63.6% Swing% 40.7%
O-contact% 41.2% Z-contact% 91.8% Contact% 78.8%
Zone% 47.5% SwStr% 8.6%

高岡商 投手の指数

荒井大地
8回1/3イニング 打者数37 投球数124
WHIP1.80 P/IP14.88 GB/FB1.08
Zone% 50.0% 空振り率8.9%

石見智翠館 投手の指数

迫広佳祐
6回2/3イニング 打者数32 投球数121
WHIP2.10 P/IP18.15 GB/FB2.00
Zone% 38.8% 空振り率9.9%

 序盤に先制の高岡商に対し、終盤徐々に差を詰め延長戦に持ち込んだ石見智翠館。決着は10回表、2回表に2ランホームランを放っていた1番・森田選手の3塁打によってつきました。なお3塁打に仕留めた球は見逃せばボールとなるような低めの球でしたが強烈に引っ張り、強い打球をライトに運びました。

 両チームとも出塁率4割超えで多くのランナーが出たのですが、高岡商は本塁打、三塁打という長打が効果的だったのに対し、石見智翠館は序盤の2併殺でチャンスを逃し、試合の主導権を握れず終いでした。石見智翠館の迫広投手はZone%38.8%で四死球8と終始コントロールに苦しんでいた様子が伺えます。高岡商の荒井投手は、ランナーを許しながらもボールの出し入れでうまく打ちとっていましたが、終盤は球が真ん中に集まる傾向が見られ、それを狙い打たれてしまいました。鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ・ラジオ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。

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