坂本龍一氏が設立、”more trees”の知られざる森林保全活動

今現在、世界中で森林の崩壊が進んでおり大きな問題となっています。
森林から様々な恩恵を受けて生きている人間にとって、それは決して他人事ではありません。
そんな危機的状況にアクションを起こしたいと立ち上がったのが音楽家の坂本龍一氏です。坂本龍一氏は「more trees」という森林保全団体を設立し、国内外で幅広い取り組みを行っています。
今回は「森と人がずっとともに生きる社会」を目指す「more trees」の活動をご紹介していきます。

森が生み出す豊かな恵みを失わないために~「more trees」の活動

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■森が生み出す豊かな恵みを失わないために~「more trees」の活動

音楽家である坂本龍一氏が代表を務める一般社団法人more treesは森林破壊と地球温暖化という地球環境の深刻な状況に対し、何らかのアクションを起こし、それを発信していく取り組みを行っています。
発起人は坂本龍一氏、細野晴臣氏、高橋幸宏氏、中沢新一氏、桑原茂一氏の5人で、そのほか幅広い業界からの著名人100人以上の賛同人を得て、2007年に設立された団体です。
その活動は多岐に渡りますが、地域との協働で森林保全を行う「more treesの森」の展開や国産の木材を活用した商品やサービスの企画・開発、セミナーやイベントを通じた森の情報やその魅力の発信などといった活動を中心に取り組んでいます。

日本は国土の約2/3が森林に覆われている大地です。
非常に身近な存在である森林は、私たち人間や地球環境にとって重要な役割を果たしています。役割として、

「木々が根を張ることで土壌を斜面に繋ぎとめる」

「土壌が雨水を蓄え、洪水や渇水を起こりにくくする」

「生物多様性が保たれる」

「大気中の二酸化炭素を吸収して気候変動を抑制する」

「安らぎや癒しなどのリラックス効果を与えてくれる」

など多項目あり、これだけ大切な機能を兼ね備えている必要不可欠なものであることが分かります。

森林破壊は人間を含む殆どの生きものの命を脅かす大きな問題です。「more trees」は、その活動により危機的状況を多くの人々に伝え、ひとつでも多くのアクションを起こすよう呼び掛けています。

 

more treesが取り組む「森づくり」とは

■more treesが取り組む「森づくり」とは

【森を保つ】

国内11ケ所、海外2ケ所と各所にmore treesの森を展開し、森の保全活動を行っています。
日本の森では「木を育て、手入れをし、適切に伐採し、素材として活かす」というサイクルを維持することで森の保全へ繋げることを目的にしています。「保全=木を伐らない」のではなく、木の成長を促し、森を健全に保つための間伐も行います。
また森林の減少が進む海外の森では、森林の再生を目指すための植林と、火災防止のための防火帯や貯水池などといったインフラ整備を行っています。

【森を感じるツアー】

more treesの森がある地域とのネットワークを活かし、森を感じるツアーが実施されています。そのツアーでは、more treesの森見学、林業(間伐・枝打ち)体験、木材市場・製材所見学、木造建築見学、きのこ狩り、蜂蜜採集見学、森林セラピーなど様々なプログラムが用意されており、実際に森を訪れることで「森や地域との繋がり」を実感できるツアーとなっています。

【カーボン・オフセットサービスの提供】

地球規模の気候変動が深刻な状況と言われていますが、原因のひとつに挙げられるのが、経済活動によって排出される二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの増加です。そこで欧州や米国、豪州などを中心に積極的に取り組まれているのが「カーボン・オフセット」。削減努力をしていても、どうしても排出されてしまう温室効果ガスもあります。「カーボン・オフセット」は、その排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資するという取り組みです。
「more trees」では企業活動などにより排出された二酸化炭素を「more treesの森」が吸収することで相殺する、森林由来の「カーボン・オフセットサービス」を提供しています。
このサービスは国内・国外でそれぞれ認証を受けており、カーボン・オフセットプロバイダーとして持続的な森づくりと気候変動対策に貢献しています。

木材を活用したアイテムの販売や大人気の体験型イベント開催

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■木材を活用したアイテムの販売や大人気の体験型イベント開催

・森から「もの」を届ける~産出された木材を活用したアイテムの販売

森林保全には定期的な間伐などの手入れ、そこで産出された木材の有効活用も必要不可欠。「more trees」では国産材等の森の恵みを活用し、オリジナルプロダクトを企画・販売しています。森づくりに繋がる寄付つきの商品やノベルティーなどのコラボアイテムの提案、また木材を活かした店舗やオフィスなどの空間づくりも行っています。
ここではそんなオリジナルアイテムの一部をご紹介します。

・つみき(7ピース~)

隈研吾氏がデザインした、これまでのつみきの概念を覆す商品。建築的な要素を取り入れた三角形のつみきで、おもちゃとしてだけではなく、インテリアとしても利用したくなるおしゃれなアイテムです。宮崎県諸塚村のスギ(FSC認証)の無垢材を使用、無塗装なので小さな子どもにも安心です。

・ブローチ

端材を用いた緩やかな丸みのブローチ。木目の表情が楽しめるナチュラルな商品となっており、男女問わず幅広い世代が付けやすいアイテムです。スギ、ヒノキ、マツ、ナラ、クルミなどがあり、丸亀市の山一木材三代目社長でありKITOKURASディレクターの熊谷有記氏のデザインとなっています。

・りんごのけん玉

ニュートンが「万有引力の法則」を発見するきっかけとなったりんごを、けん玉の玉に引用して、地球の引力を体感できるという玩具です。遊べば遊ぶほど玉の塗料が落ちてきて、本物のりんごの表皮のような色合いになります。本体はヤマザクラ、玉はカバ、台座はヒノキで作られており、プレゼントやインテリアとしてもオススメです。デザインはアーティストであり、武蔵野美術大学空間演出デザイン学科准教授として活躍する鈴木康広氏が担当しています。

日本の国土の約7割が森林であるにもかかわらず、木材の自給率は2015年現在で30%以下と少なく、使用する木材の多くを輸入に頼っているという現状があります。
more treesではこの状況を多くの人に知ってもらうために、国産材マーケットの活性化に取り組み、木のぬくもりを通じて森と都市が繋がるオリジナルプロダクトをスタートさせたのです。ここで紹介したアイテムを含めたオンラインストアの売り上げの一部は、more treesの森づくりに活かされています。

 

・大人も子どもも楽しめるイベント「木とあそぼう 森をかんがえよう with more trees 2019」

都会にいながら親子一緒に日本各地の木とふれあい、森を感じることができるイベントです。ヒノキ玉のプールや木のパズル、そして隈研吾氏デザインの木のつみきでも遊ぶことができます。このイベントで大人も子どもも夢中になるのがワークショップ。自分だけのアイテムが作れる様々なメニューが用意されています。2019年はGW中の3日間、アークヒルズのアーク・カラヤン広場で開催されました。
開催されたメニューは下記様々ありました。

  • 木のネームプレートづくり byあすなろ手芸店
  • 木とタイルのモザイクコースターづくり byメロンモザイク
  • 木のぬくもりアクセサリーづくり by木遊木
  • 丸太でぶんぶんごまをつくろう by東京チェンソーズ
  • 木のスプーンづくり+スイーツ体験 by DEAN&DELUCA+more trees
  • 泥んこ遊びdeこけ田んぼづくり by SATOMACHI
  • 木のおともだちキョロキョロづくり by ARK HILLS KIDS COMMUNITY
  • 木の輪ゴムてっぽうづくり by百年杉の加藤木材
  • 「メキシコ」×「こけし」な「メキシこけし」絵付け体験 by CHIDO PROJECT
  • 木のイスづくり byTree to Green+more trees
  • 木の紙でオリジナルタンブラーをつくろう by STARBUCKS COFFEE
  • 水のワークショップ~実験で森と水のつながりを知ろう~ by SUNTORY
  • アークヒルズ 木とみどりのまちたんけん by ARK HILLS COMMUNITY

 

これだけバラエティに富んだワークショップが開催される機会はなかなかありません。
さらに期間中はアークヒルズのレストランで「蝦夷鹿肉カレー」や「鹿肉ジビエバーガー」などといったジビエ料理が用意され、多くの参加者の興味を引きました。。
体験型イベントを通し、自然に触れて、そのすばらしさを実感できる取り組み。
都会にいるとついつい忘れてしまいがちな「自然と向き合うことの大切さ」を、改めて再確認する機会となり、大人も子どももワクワクしながら、環境保全に対する意識が深まる取り組みとなっています。

 

 

今回の記事では「都市と森をつなぐ」をキーワードに、「森と人がずっとともに生きる社会」を目指した取り組みを行っているmore treesの活動についてご紹介しました。
私たち人間は、森の様々な機能や豊かな恵みを受けて生きています。これからも共存していくためには、森の保全活動が必要不可欠であり、喫緊の課題でもあります。
深刻な状況にある森林破壊問題に対して目を逸らすのではなく、しっかりと向き合うことが、地球の未来を救う大きな一歩に繋がります。

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