被災の大作絵画 試練越え存在感 総社南高卒業生展に寺尾さん出品

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西日本豪雨で被災した寺尾さんの大作「境界」

 西日本豪雨で倉敷市真備町地区のアトリエが被災した気鋭の洋画家寺尾佳子さん(41)=総社市=の制作中だった大作が、総社吉備路文化館(同市上林)で6日開幕した総社南高美術工芸系卒業生企画展「Exhibition18―19」に出品されている。泥水に漬かりながらも救い出された作品は、試練を越えた存在感を放っている。

 寺尾さんは総社南高卒。広島市立大大学院などを経て、同高非常勤講師を務めながら創作。東京での個展などで独自の人物表現が高く評価されてきたが、アトリエにしていた真備町地区の祖母宅が豪雨で全壊。作品40点と絵の具や筆など画材のほとんどを失った。

 その中に大作「境界」もあった。5枚組で、一部は「銀箔(ぎんぱく)を貼った下地に描き始めたくらい」のまだ制作初期だった。その画面に保護用の紙が泥水にぬれて貼り付き、取ると絵の表面が一緒にはがれて意図せず、水面のような模様が浮かび上がった。豪雨の“水”が描いたその模様を見て「『完成した』と思った」と振り返る。

 今回はうち3枚(幅185~138センチ。高さはいずれも91センチ)を組んで展示する。「『生と死』の境界を描きたかった作品。人にとって水はかけがえのない大切な存在だが、時に尊い命を奪ってしまうものでもある。それを思うと胸が苦しくなる」と打ち明ける。

 アトリエを失い、総社市の自宅で制作を続ける寺尾さん。被災を経て「水を主題にする機会が増えそう」といい「水や風、時間など、目に見えないものをどう表現していくか。自分なりの手法を模索し続けたい」と話す。

 同展には、やはり被災した元同高教諭の彫刻家金盛秀禎さん(80)=倉敷市真備町地区=も出品。2人の作品は他の卒業生と元職員と共に16日までの前期展示に並ぶ。在校生も出品する後期は18~30日。11、18日には出展者のギャラリートークがある。月曜休館。入場無料。