お盆休みに考えたい、「“隠れ”塩漬け株」の片づけ方

お盆休み間近となり、帰省に合わせて、実家の掃除や片づけを考えている方も多いかもしれません。一方で、保有している株式のポートフォリオのお手入れについて、考えてみたことはあるでしょうか。

長年、手入れがされていないポートフォリオには、思わぬ「塩漬け株」が隠れていることがあります。今回は、その整理の仕方について、考えてみたいと思います。


塩漬け株かどうかの判定基準は?

一般的に「塩漬け株」といえば、「長期にわたり評価損益がマイナスで、売るに売れないような株」と説明されることが多いと思われます。しかし、この説明は必ずしも正確とはいえません。

塩漬け株のより正確な定義は、「保有する正当な理由がないにもかかわらず、保有を続けている銘柄」であると筆者は考えます。たとえ評価損益がプラスであったとしても、保有する理由がない銘柄は、将来的にポートフォリオにダメージを与えるおそれがある「“隠れ”塩漬け株」と呼ぶこともできます。

これまでの塩漬け株の考え方からすると、「手遅れになった銘柄を無理やり損切りする」という対症療法しかありませんでした。しかし、今回ご紹介する片づけ方を実践すれば、塩漬け株のダメージを抑えながら、皆さんのポートフォリオに将来大きなダメージを与えかねない「隠れ塩漬け株」も早期発見し、処分できるようになるかもしれません。

ステップ1:購入した理由を思い出す

塩漬け株を片づけるためには、保有しているすべての株を仕分けることが重要です。第1のステップとして、その株を購入した理由を思い出すことから始めてみましょう。

株を購入するには何らかの理由があるはずです。その企業の先行きを期待していたという理由もあれば、その企業のすばらしい製品を応援したかったといった理由もあるでしょう。このように、購入した理由が今もはっきりわかる銘柄については、次の仕分けステップに進めましょう。

一方で、この時点で購入した理由を思い出せない場合は、塩漬け株として処理をしていきましょう。その銘柄の評価損益がたまたまプラスであったとしても、同様です。

購入した理由が思い出せないということは、売る時期やタイミングの計画もあやふやになっていることになります。そのような銘柄は、評価損益がマイナスに転落してもズルズルと持ち続けてしまう「隠れ塩漬け株」の可能性が高いため、早めに処分することを検討しましょう。

ステップ2:保有を継続する理由を検討

第2のステップは、その株の保有を継続する理由を検討することです。保有し続けるか否かを判断するためには、購入した時の理由が今も有効か、という観点が重要です。

たとえば、A社の株を購入した時の事業計画は「新製品を作る」という内容だったにもかかわらず、直近の事業計画では「既存製品の増産に注力する」という内容にシフトしていたとします。この時、A社の株を購入した理由が現状では有効でないため、それでも保有する理由があるかを検討する必要があります。

A社の業績と事業計画を見比べて、「新製品に注力する」よりも「既存製品を増産する」ほうが市場のニーズに応えることができるという場合は、長期的な業績にプラスとなるでしょう。この場合は、たとえ購入当時の理由が有効でなくとも、保有している理由が正当なものであるといえるため、保有を続けてもよいかもしれません。

一方で、購入した理由と直近の事業計画に乖離があり、その内容に納得がいかない場合は、評価損益がプラスであろうとマイナスであろうと、処分してしまうことが賢明であるといえるでしょう。

残った株も一生安泰ではない

ここで注意しておくべきなのは、判断の基準については少なくとも一貫性を持たせるべきであるということです。塩漬け株を作ってしまう典型的な投資行動は、判断基準をコロコロと変えて、保有する理由をでっち上げてしまうことにあります。

たとえば、株価チャートの形状からして「2日で3%くらいの利益なる」という予想が外れて含み損になった際に、「予想が外れたとはいえ、長期的には有望な銘柄だから、いつかは戻るだろう」と、別の基準から保有する理由を作り上げてしまうという投資行動があります。

保有する正当な理由を同じ基準を使って見極めることが、塩漬け株を早期に片づけるうえで最も重要なステップとなります。

常に状況が変化する株はナマモノに近い性質をもっているため、処分を免れた株についても、塩漬け株や隠れ塩漬け株になる危険と常に隣り合わせになっています。そうならないためには、その株を「いつまで持つか」という期間を設定しましょう。

投資で最も難しいのは、売るタイミングかもしれません。身の回りでは、購入する時の情報は豊富ですが、その売り時までケアしてくれる情報は多くありません。しかし、売り時は「保有する理由がなくなった時」であるということを常に心にとどめておけば、問題はないでしょう。

今は塩漬け株の片づけ時?

今の時期は「夏枯れ相場」の真っ直中にあるともいわれ、一般的に市場の流動性が低い時期となります。流動性の低い時期における株価の急落や急騰は、一部の市場参加者の都合で動いてしまうこともあり、注意が必要です。

通常であれば、この時期は取引を控えるべきという見解もありますが、これはポジションが非常に大きい投資家に向けられたもの。それほど高額でないポジションであれば、現在の流動性でも難なく売り抜けることはできるでしょう。

足元では、アメリカと中国の貿易摩擦を背景とした経済停滞懸念による株価の下落が発生していますが、夏枯れ相場中の出来事であることを念頭に置き、少し様子を見ながら片づけ時を見極めておくとよいかもしれません。

今年のお盆休みは実家の片づけだけでなく、金融資産のポートフォリオの片づけについても検討してみてはいかがでしょうか。

<文:Finatextグループ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 古田拓也>

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