金正恩氏「最愛の妹」が幹部らを無慈悲に処罰…権力中枢で何が

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の妹・金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長が最近、複数の幹部に無慈悲な処罰を下す事件があったという。

平壌の消息筋は7日、デイリーNKに対し、「首領様(金日成主席)逝去25周年の記念行事で、平壌市党委員会名義で寄せられた弔花の花かごの中に発泡スチロールが仕込まれていたことが発覚した。温室栽培の生花が足りず、発泡スチロールの詰め物でかさを増やしていたようだ」と伝えた。

兄の「隠された私生活」

消息筋によると、発泡スチロールの詰め物は追悼行事の現場で、党宣伝扇動部の幹部によって見破られた。そして、ことはここで終わらず上層部にまで報告され、関係者の処罰に至ったというわけだ。そして、処罰を決済したのが、金与正氏だったという。

結局、責任を問われた幹部は3人で、ひとりは「警告」、もうひとりは「厳重警告」の懲戒を受け、もうひとりは左遷されたという。これが一頃の金正恩氏であれば、現場で怒鳴り散らして責任者を銃殺し、「怒りの動画」をテレビで公開したことだろうが、金与正氏はさすがにそこまでしていない。

一方、こうした一連の出来事が事実であれば、非常に示唆的で興味深い。平壌市党委員会がからむような重要事件の処分は、北朝鮮国内の政務と人事を一手に掌握する党組織指導部で行うのが普通だ。

そのような重要案件が金与正氏の手に委ねられたということは、権力中枢における彼女のパワーが一段と増したこと見ることもできる。

実際、前出の消息筋はデイリーNKに対し、「今回の事件をきっかけに幹部らは『金与正部長が革命の首都・平壌の党と行政問題に警鐘を鳴らした』と評している」と語り、金与正氏の肩書を「部長」としていたという。これまで、金与正氏は党宣伝扇動部の第1副部長として知られていたが、これは日本の中央省庁で言うと事務次官や官房長クラスに当たる。部長ならば、大臣クラスということになる。

もっとも金与正氏にとっては、肩書そのものはさほど重要ではないのかもしれない。

なんといっても金正恩氏にとっては、心から信頼することのできる数少ない血縁なのだ。

また、金正恩氏の動線管理をしながら出世してきたとされる金与正氏は、兄の「隠されたプライバシー」までをも知る側近中の側近だ。


どのような形であれ、彼女のパワーが今後も強まっていくことは間違いないだろう。

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