【高校野球】奥川が圧巻投球も旭川大能登も負けず劣らず データで楽しむ夏の甲子園【第2日目(第3、4試合)】

第101回全国高等学校野球選手権、2日目の試合結果一覧

星稜の奥川は94球の省エネ投球で3安打完封

 どちらの試合も1-0の緊迫した試合となった夏の全国高等学校野球選手権大会第2日目の第3、4試合。セイバーメトリクスの指標で各校の闘いぶりを振り返ってみます。

指標の説明は以下の通り

〇攻撃
OPS 出塁率+長打率1を超えると優れている
wOBA 各プレーの得点価値を累積して算出した打撃指標
O-swing% ボールゾーンに来た球をスイングした割合
Z-swing% ストライクゾーンに来た球をスイングした割合
Swing% スイングした割合
O-contact% ボールゾーンに来た球をスイングした際にバットにボールが当た
った割合
Z-contact% ストライクゾーンに来た球をスイングした際にバットにボール
が当たった割合
Contact% スイングした際にバットにボールが当たった割合
Zone% ストライクゾーンを球が通過した割合
SwStr% 空振り率
WHIP 1イニングあたりに許したランナーの数
P/IP 1イニングあたりに投球した球の数
GB/FB フライに対するゴロの割合

星稜 1-0 旭川大

【星稜】
打率.290 OPS.708 wOBA.317
O-swing% 40.3% Z-swing% 58.5% Swing% 47.7%
O-contact% 32.3% Z-contact% 87.1% Contact% 59.7%
Zone% 40.8% SwStr% 19.2%

【旭川大】
打率.107 OPS.245 wOBA.114
O-swing% 34.2% Z-swing% 67.9% Swing% 54.3%
O-contact% 46.2% Z-contact% 92.1% Contact% 80.4%
Zone% 59.6% SwStr% 10.6%

星稜 投手の各指数
奥川恭伸
9イニング 打者数30 投球数94
WHIP0.44 P/IP10.44 GB/FB0.82
Zone% 59.6% 空振り率10.6%

旭川大 投手の各指数
能登嵩都
9イニング 打者数34 投球数130
WHIP1.33 P/IP14.44 GB/FB0.69
Zone% 40.8% 空振り率19.2%

 1時間34分で終わった近年稀に見る投手戦を制したのは奥川投手の星稜でした。最速153キロのストレートを武器に、旭川大打線を被安打3(すべて単打)、与四球1、WHIP0.45、被OPS.245と付け入る隙を与えず96球で完封勝利を納めました。66%がストレートという組み立てでしたが、25%の割合で投げるスライダーで20.8%、8.5%の割合で投げるチェンジアップで12.5%の空振りを奪っています。

 対戦した旭川大の能登投手も大変素晴らしいピッチングを披露しました。こちらは33.8%の割合で投じたスライダーが主体のピッチングでしたが、そのスライダーで20.5%の空振りを奪っています。また25.4%の割合で投じたチェンジアップでは実に4割近い確率で空振りを奪っています。

 特筆すべきデータは星稜のO-swing%がなんと40.3%であるということ。ストライクゾーンの端を丁寧につくコントロールで星稜打線に的を絞らせませんでした。ただ惜しむらくは2回表。この回だけはストライクゾーンの真ん中に球が寄っており、そこを星稜が連打で1点をもぎ取りました。わずかなチャンスをものにした星稜に軍配が上がりました。

立命館宇治の高木は3安打完封の好投

立命館宇治 1-0 秋田中央

【立命館宇治】
打率.208 OPS.656 wOBA.363
O-swing% 16.0% Z-swing% 63.8% Swing% 36.8%
O-contact% 58.3% Z-contact% 100% Contact% 89.8%
Zone% 43.6% SwStr% 3.8%

【秋田中央】
打率.111 OPS.361 wOBA.189
O-swing% 27.5% Z-swing% 53.8% Swing% 38.8%
O-contact% 36.8% Z-contact% 89.3% Contact% 68.1%
Zone% 43.0% SwStr% 12.4%

立命館宇治 投手の各指数

高木要
9イニング 打者数34 投球数121
WHIP0.89 P/IP13.44 GB/FB1.63
Zone% 43.0% 空振り率12.4%

秋田中央 投手の各指数

松平涼平
7回0/3イニング 打者数33 投球数123
WHIP1.71 P/IP17.57 GB/FB3.00
Zone% 45.4% 空振り率3.4%

 結果的には1-0という試合になりましたが、内容としては立命館宇治の高木投手を打ち崩せなかった秋田中央と、毎回のように出塁しチャンスは作るもののあと一本が出なかった立命館宇治という構図になりました。立命館宇治は6回を除き毎回先頭打者が出塁したのですが残塁が12と好機でヒットを出せず。逆に7回裏、四球とバントヒットでノーアウト満塁のチャンスが秋田中央に舞い込みました。この最大のピンチを高木投手はスライダーで内野ゴロに仕留め、切り抜けました。その好投が裏の攻撃に繋がったのではないでしょうか。鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ・ラジオ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。

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