解きほぐす務め

 ずっと昔にも思えるが、民主党に政権交代したのは10年前の今頃だった。8月の衆院選で大勝し、与党になった民主党は、大型の公共事業を「一刀両断」のやり玉に挙げる▲新幹線の整備もまた「白紙」とされたが、それから3年足らずで九州新幹線長崎ルートの諫早-長崎間が着工した。足踏みから前進へ、驚くような展開だった▲止まっては進み、進むかと思えば止まる。政治の都合に振り回される整備新幹線の長崎ルートは「政治新幹線」とも呼ばれた。迷走劇にやっと幕だ。着工の折にはそう思われた▲それからとんとん拍子にいっていたら「10年前は白紙の憂き目に遭ったもんだ」と、今頃は昔語りもできたろう。実際は足踏みがなお続く▲未着工の区間について、ミニ新幹線ではなくて「フル規格での整備が適当」とする考えを、与党の検討委員会がまとめた。もとより新幹線の整備に反対という佐賀県知事はこれを「中央からの押し付け」と取り、「フル」が前提ならば話し合いに応じない、と突っぱねる▲昔語りになるどころか、またも視界がかすんでいく。幅の違う新幹線と在来線の線路をひと続きに走れる電車の開発に失敗し、事はここまでもつれている。解きほぐすのは国の務めであり、政治が滞らせた物事を前に進めるのは、政治の務めに違いない。(徹)

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