「人手不足」関連倒産、7月は36件、全国8地区で広く発生

 「人手不足」関連倒産は、2019年1-7月累計で過去最悪を記録した昨年と並ぶ227件(前年同期比±0.0%)に達した。人手不足は中小企業ほど深刻なしわ寄せを受けており、年間を通して過去最多を更新する可能性を残している。
 「人手不足」関連倒産は、企業倒産が低水準をたどる中でも広く発生しており、今後の動向が注目される。

7月の「人手不足」関連倒産は36件、「従業員退職」が5倍増

 2019年7月の「人手不足」関連倒産は36件(前年同月比14.2%減、前年同月42件)で、2カ月ぶりに前年同月を下回った。
 内訳は、最多は代表者や幹部役員の死亡、入院、引退などの「後継者難」が25件(前年同月32件)。次いで、幹部や中核社員の独立、転職などの退職から事業継続に支障が生じた「従業員退職」が5件(同1件)で5倍増した。また、人手確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」が4件(同5件)。この他、賃金等のコストアップで収益が悪化した「人件費高騰」は2件(同4件)だった。

産業別 サービス業他が最多

 産業別では、最多はサービス業他の11件(前年同月10件)。次いで、建設業6件(同12件)、製造業5件(同4件)、卸売業(同5件)、小売業(同4件)、不動産業(同ゼロ)が各4件、運輸業(同2件)と情報通信業(同3件)が各1件。農・林・漁・鉱業(同2件)と金融・保険業(同ゼロ)は発生がなかった。

地区別 8地区で発生

 地区別では、全国9地区のうち8地区で発生した。関東11件(前年同月21件)を筆頭に、九州9件(同5件)、中部(同4件)と近畿(同2件)が各4件、東北3件(同ゼロ)、四国(同3件)と北海道(同ゼロ)が各2件、中国1件(同6件)。北陸(同1件)のみ発生がなかった。都道府県別では、最多が東京7件(同11件)で、福岡6件(同3件)、大阪4件(同ゼロ)が続く。

人手不足関連倒産月次推移

2019年1-7月の累計は前年と同じ227件

 2019年1-7月の「人手不足」関連倒産は累計227件(前年同期比±0.0%)で、過去最多を記録した前年同期に並んだ。
 内訳は、「後継者難」が134件(前年同期比24.7%減、前年同期178件)、「求人難」が51件(同112.5%増、同24件)、「従業員退職」が25件(同127.2%増、同11件)、「人件費高騰」が17件(同21.4%増、同14件)だった。「後継者難」が約6割(構成比59.0%)を占めるが、「求人難」や「従業員退職」の急増ぶりが際立った。

2019年1-7月累計、サービス業他、小売業、運輸業で増加

 2019年1-7月累計の産業別では、サービス業他が74件(前年同期比23.3%増、前年同期60件)で最多だった。次いで、建設業39件(同11.3%減、同44件)、製造業27件(同25.0%減、同36件)、卸売業23件(同42.5%減、同40件)、小売業21件(同16.6%増、同18件)、運輸業19件(同72.7%増、同11件)、情報通信業8件(同33.3%減、同12件)が続く。
 地区別では、9地区のうち九州(23→44件)、近畿(20→29件)の2地区で前年同期を上回った。一方、減少は関東(102→85件)、中国(15→10件)、北海道(11→7件)、北陸(3→1件)、中部(27→26件)、四国(11→10件)の6地区。東北は前年同期と同数の15件。

© 株式会社東京商工リサーチ