「米国の利益に深刻な被害」文在寅氏の“感覚のズレ”に募る警戒感

訪日したエスパー米国防長官は7日、岩屋毅防衛相、安倍晋三首相と相次いで会談し、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が維持されることを「心の底から願う」と強調したという。

エスパー氏は8日から訪韓しており、鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相らとの会談でも同様の意向を伝えると見られる。

日韓関係が悪化の一途を辿る中、韓国政府は日本による半導体関連材料の輸出規制措置に対抗し、GSOMIAを破棄する可能性をチラつかせている。7日には世論調査会社のリアルメーターが、GSOMIA破棄の賛否を問う世論調査の結果を発表。賛成(47.7%)が反対(39.3%)を上回っており、雰囲気的にも破棄が現実味を帯びてきている。

しかし、冒頭のエスパー氏の発言にもあるように、米国は絶対反対の立場だ。

外交問題評議会(CFR)シニア・フェローのスコット・スナイダー氏は米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対し、「米国はGSOMIAが交渉のカードに使われることなど想定していない」としながら、「GSOMIAは韓国と日本の2国間関係だけでなく、米国を含む3者の協力とも密接に関係しているだけに、これを解体しようとする行動は、韓国に致命的な結果をもたらす」と指摘している。

また、在日米国大使館の首席公使などを歴任したジェームス・ズムワルト米国笹川平和財団代表もVOAの記事で、「韓国がGSOMIAを破棄するならば、北東アジアにおける米国の利益に深刻な被害を及ぼすだろう」との警告を発している。

もちろん、韓国国内にも冷静な意見はある。聯合ニュースによれば、予備役将官らの団体である「大韓民国守護予備役将星団」は7日、韓国政府によるGSOMIA破棄に反対する声明を発表。「中国がロシアや北との軍事的結束を基に周辺国に圧力をかける新冷戦時代において、GSOMIAは韓日安保協力の懸け橋、韓米日の3カ国安保(協力)の足掛かり」だと強調した。

しかし問題は、文在寅大統領がこうした「安保イメージ」を共有しているかどうかだ。文在寅氏は先日、「南北の平和経済実現で日本に追いつく」と語りながら、すぐさま北朝鮮のミサイル発射で打ち砕かれてしまった例は記憶に新しい。

文在寅氏と米国の「感覚のズレ」を物語るエピソードは、ひとつやふたつではない。


文在寅氏がGSOMIA破棄に突っ走ったとき、日米韓の安保協力に、どのような事態が持ち上がるのだろうか。

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