セクター別分析から見えた「日経平均」5日ぶり反発の持続力

7月まで値動きの乏しい相場が続いていた株式市場ですが、8月に入り大きく乱高下しています。8月1日には2万1,540円だった日経平均株価は、同月7日に2万0,516円まで下落。翌8日には2万0,593円と、5営業日ぶりに反発しましたが、力強さに欠ける展開でした。

では、日本の株式市場はこのまま中長期的な下落基調に転じるのでしょうか。今回は、業種分類別の値動きから、日本株市場全体の先行きを見通してみたいと思います。


なぜ株価は下落を続けたのか

まず前提として、足元の株価急落を振り返っておきましょう。きっかけは、再びドナルド・トランプ米大統領のツイッターでした。

中国が約束した米国の農産品の購入拡大などを実施していないとして、3,000億ドル相当の輸入品に対して、9月1日から10%の追加関税を賦課すると表明したのです。現時点で25%の追加関税が賦課されている輸入品と合わせると、中国からのほぼすべての輸入品が追加関税の対象となる計算です。

また、8月5日には米財務省が、貿易で有利になるよう意図的に通貨を切り下げているとして、中国を「為替操作国」に指定したと発表しました。このように米中対立が激化したことを嫌気して、世界的に株価が下落しました。

意外と軽い?貿易戦争の影響度

ここで、話を日本株に戻しましょう。現在、3月期決算企業の決算発表が峠を超えつつあります。

株価水準を読み解くカギとなる日経平均株価の1株当たり利益を見てみると、決算発表が本格化する前の7月16日時点で1,787円だったものが、8月7日時点では1,763円と、24円(1%)の減少に留まっています。米中貿易戦争の影響は徐々に決算上にも現れてきていますが、日経平均株価全体としてみると、影響はまだ限られています。

実際の株価を見ても、その様子がうかがえます。下のグラフは、年初からの業種別騰落率のうち、年初からの騰落率の上位と下位を示したものです。

上位には精密機器や電気機器など、米中貿易戦争の影響を強く受ける業種が含まれています。米中貿易戦争の激化に伴い、これらの業種は昨年末にかけて大きく売り込まれましたが、投資家の警戒感が強すぎた反動で、年初からの値動きは堅調なものとなっているのです。

日経平均はどう動くのか

7月末の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、米連邦準備制度理事会(FRB)はフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を従来から0.25ポイント引き下げました。欧州中央銀行(ECB)も、6月から利下げ方向に転じる姿勢を示しています。

このように、世界的に見てみると、まだ金融の緩和余地が残されているわけです。そのため、しばらくは米中貿易戦争に伴う実体経済の悪化と、金融緩和による株価押し上げ効果が拮抗し合う展開が予想されます。

日本の場合、金融緩和の余地は限定的ですが、一方で前述したように企業収益の悪化はまだ限られています。日経平均株価は引き続き2万~2万2,000円のボックス圏での動きが続くと考えています。下がりすぎた局面では、押し目買いのスタンスで望むのが良いのではないでしょうか。

<文:シニアマーケットアナリスト 窪田朋一郎>

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