【令和に咲く】焼酎粕研究、地元に貢献 光合成細菌、農家向け販売 大学院生でベンチャー企業社長・古賀碧さん(熊本市)

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「くまレッド」を手にする古賀碧さん
崇城大院生でCiamo社長の古賀碧さん=熊本市西区

 トマトジュースにも見える赤い液体は、農作物に散布すると成長を促進させる効果がある光合成細菌だ。商品名「くまレッド」。開発と販売元はベンチャー企業Ciamo[シアモ]。社長の崇城大(熊本市西区)工学研究科博士後期課程の古賀碧[あおい]さん(25)=同区=は「多くの農家に使ってほしい」とPRする。

 崇城大生物生命学部の頃、古賀さんの部活動は起業部。同級生と球磨焼酎をベースに梅やバンペイユなどを使ったリキュールを開発した。その時に知り合った人吉球磨地方の蔵元に廃棄物の焼酎粕[かす]の処理に多額の費用が掛かることを聞いた。

 研究室の教授のアドバイスも受け、焼酎粕を光合成細菌の培地として活用することを発案。「子どもの頃の夢は研究者」という古賀さんは、土壌から採取した約50のサンプルの光合成細菌を地道に調べ、焼酎粕に合う2種類の細菌の組み合わせにたどりついた。

 自ら会社を興すようなタイプではなかったが、応募したビジネスプランコンテストでの高評価も後押しになり、「光合成細菌を活用してもらうには会社設立」と考えるようになった。昨年4月、くまレッドを柱に、学生ら5人でCiamoを設立。株式会社とし、崇城大が出資した。

 500ミリリットルの光合成細菌と菌を増やす培養液がセットで約5千円。くまレッドは、県内を中心に口コミで広がり、昨年度は約200本を販売。「収量が上がった」と、農家の評判は上々という。ただ、ビジネスとして軌道に乗せるには全国的に知名度を上げる必要がある。今後は「マルシェなどのイベントに積極的に出店したい」という。光合成細菌を使って育てた農作物を販売することで、くまレッドの価値をPRしていく考えだ。

 大学院では現在、クルマエビの養殖など、くまレッドを農業以外に活用するための研究に取り組んでいる。会社経営との両立に追われる日々だ。「光合成細菌の可能性を広げる研究をして、その成果をビジネスや社会貢献につなげたい」。学究の徒の澄んだ表情の中に、たくましい起業家の顔がのぞく。(文、写真・園田琢磨=28歳)

◇こが・あおい 1994(平成6)年、あさぎり町生まれ。人吉高から崇城大に進んだ。アウトドア好きの行動派で、趣味は車での九州温泉巡りや食べ歩き。地元を離れてみて、人吉温泉の良さにも気が付いた。

<取材を終えて>人吉球磨に愛着湧いた 人吉球磨地域は高校を卒業したら地元を離れる人が多い。古賀さんも、あさぎり町から熊本市内に進学したが、廃棄物である焼酎粕の活用に取り組むことで古里に貢献しようとしている。私も球磨支局に赴任して球磨焼酎を飲む機会が増え、この土地に愛着が湧いた。いずれ異動で離れることになるが、人吉球磨のために、できることを続けていきたいという気持ちを呼び起こしてもらえた取材だった。(球磨支局・園田琢磨)

(2019年8月9日付 熊本日日新聞朝刊掲載)