食野のシティ移籍は?プレミア移籍の“壁”、労働許可証はこうやって取得する

現在マンチェスター・シティへの移籍が噂されているガンバ大阪FW食野亮太郎。すでに本人が渡欧して交渉をまとめているとも。

ただ日本人がプレミアリーグでプレーするために立ちはだかるのは労働許可証の問題だ。取得できなければイングランド国内でプレーすることは出来ず、他の国へと貸し出されてしまう。

では、労働許可証とはどのような基準で発行されるのか。プレミアリーグのハンドブックからまとめてみよう。

手続きについて

労働許可証を獲得するためのプロセスには3つある。自動認定基準、例外パネル パートA、例外パネル パートBだ。

・自動認定基準

これを満たせば他の条件にかかわらず労働許可証が発行されるもの。選手が所属する国の代表の、過去2年の試合における出場割合(※1, 2, 3)がこの基準以上であることが条件だ。FIFAランキング別の基準は以下の通り。

  • 1~10位:30%以上の出場
  • 11~20位:45%以上の出場
  • 21~30位:60%以上の出場
  • 31~50位:75%以上の出場

(※1:21歳以下の場合は、対象期間が2年から1年に短縮される)

(※2:原則的に対象は公式戦のみであるが、全試合のうち公式戦が30%以下の割合であった場合は親善試合も計算される)

(※3:怪我などで出場不可能だった試合については対象から除外される)

この自動認定基準に達さなかった場合、「例外パネル」での判定となる。日本代表は現在33位であるため、ここをクリアするためには75%以上の国際試合でプレーしている必要がある。

・例外パネル パートA

例外パネルはFAが任命する3名のメンバーによって構成され、主観的および客観的なレビューを実行する。選手とクラブ側は口頭での対面調査を求めることができるが、例外パネルはそれを受け入れる義務はない。

例外パネル パートAでは客観的基準をスコア加算方式で調査する。ここで4ポイント以上を獲得した場合、主観的レビューにおいて労働許可証の発行可否を決定する。

  • 選手獲得時に支払われた移籍金は、移籍金基準値(※4)の75%を超えたものである(3ポイント)
  • 選手獲得時に支払われた移籍金は、移籍金基準値(※4)の50~75%である(2ポイント)
  • 選手に支払われる給与は、給与基準値(※5)の75%を超えたものである(3ポイント)
  • 選手に支払われる給与は、給与基準値(※5)の50~75%である(2ポイント)
  • 選手はトップリーグ(※6)のクラブに属し、プレー可能な出場時間の30%以上でプレーした(1ポイント)
  • 選手が所属していたクラブは、過去12ヶ月以内に行われた大陸選手権(※7)に出場し、選手はプレー可能な出場時間の30%以上でプレーした(1ポイント)

(※4:前シーズンのプレミアリーグ全ての移籍金が発生した取引を対象として設定されたもの)

(※5:前シーズンのプレミアリーグ全クラブの給与額上位30名、計600選手の給与額を対象として設定されたもの)

(※6:欧州の6大リーグ+過去二年間FIFAランク20位以内の国で最も選手が多くプレーしている南米の国のリーグ2つ)

(※7:UEFAチャンピオンズリーグ、UEFAヨーロッパリーグ、コパ・リベルタドーレスのみ)

なお項目1と2、項目3と4は排他的関係でポイントが重複しない。これで3ポイント以下になった場合、例外パネルBに移行する。

Jリーグでプレーしている場合は項目5および6を満たすことが不可能であるため、給与額か移籍金の額がかなり高額にならなければ4ポイント以上を取得するのは不可能だ。

・例外パネル パートB

例外パネル パートBの要件については以下の通りとなっている。

  • 選手獲得時に支払われた移籍金は、移籍金基準値(※4)の20~50%である(1ポイント)
  • フリートランスファーやローンバックの場合、その選手価値(パネルが判断)が移籍金基準値(※4)の20~50%である(1ポイント)
  • 選手に支払われる給与は、給与基準値(※5)の20~50%である(1ポイント)
  • 選手はセカンダリーリーグ(※8)のクラブに属し、プレー可能な出場時間の30%以上でプレーした(1ポイント)
  • 選手が所属していたクラブは、過去12ヶ月以内に行われた大陸選手権(※7)予選ラウンド以上に出場し、選手はプレー可能な出場時間の30%以上でプレーした(1ポイント)
  • 選手の所属する代表チームは2次パーセンテージ(※9)で示されたFIFAランキング以上で、選手は12ヶ月以内にその基準で示された割合以上の試合に出場している。あるいはアジアカップ、アフリカネーションズカップで準決勝に進出している(1ポイント)

(※8:FIFAランク20位以内の国のリーグ+過去二年間FIFAランク20位以内の国で3番目に選手が多くプレーしている南米の国のリーグ1つ)

(※9:FIFAランキングにおける2次パーセンテージの基準は以下の通り。こちらも21歳以下の場合は過去1年に短縮される)

  • 1~10位:過去2年の国際試合で25%以上の出場
  • 11~15位:過去2年の国際試合で30%以上の出場
  • 16~20位:過去2年の国際試合で40%以上の出場
  • 21~25位:過去2年の国際試合で45%以上の出場
  • 26~30位:過去2年の国際試合で55%以上の出場
  • 31~50位:過去2年の国際試合で60%以上の出場
  • 51位以下:過去2年の国際試合で75%以上の出場

パートAとパートBを合わせて5ポイント以上を獲得した場合、例外パネルは労働許可証を発行するための推薦を行うことができる。ただしそれは義務ではなく、主観的なレビューによって決定される。

また、もしパートAとパートBの総合スコアが5ポイント未満であった場合でも、主観的レビューで労働許可証が発行される場合がある。

Jリーグの選手の場合、項目4と5を満たすことは不可能である。そのため、代表チームで数多く出場することと移籍金、給与額を高額にすることによってポイントを稼ぐ他ないだろう。とはいえ、もちろん例外パネルはポイントだけで決まるものではないが…。

・労働許可証の種類

労働許可証には2種類あり、Tier2とTier5が発行される可能性がある。

Tier2(スポーツパーソン)の有効期限は3年間、あるいは選手としての契約期間となる。更新される場合も同様だ。Tier5(クリエイティブ&スポーツ短期労働者)は12ヶ月、あるいは選手としての契約期間となる。

内務省によって設定された英語テストの要件をクリアした場合にはTier2が、それ以外の場合はTier5が発行される。後に変更を申請することも可能である。

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