環境と住み心地抜群、身近にたくさんあるサスティナブル住宅とは?

住居、それは私たちの生活の基盤になる場所です。

何を重要視するかは人それぞれですが、近頃機能性や健康・環境に配慮した家が注目を集めています。

この記事では機能性やエコな点で優れている日本の伝統的な家屋や、外国の環境共生型住宅などをご紹介します。

機能性と健康面への配慮に優れた日本の伝統的な家

■機能性と健康面への配慮に優れた日本の伝統的な家

日本の場合、古くより寝具はベッドではなく布団を使用してきました。

布団は折り畳んで収納しておけるため、夜は寝室として使っている部屋であっても昼間はリビングやダイニングとして利用することも可能です。

またイスやテーブルではなく、座布団や座卓といった移動しやすいアイテムを使っている点も特徴です。部屋と部屋を仕切っている襖の用い方ひとつで、その広さを調整できるなど、シーンに合わせて柔軟にそして簡単に部屋の姿を変えられる日本の家屋は、他国ではあまり見ることができない日本ならではの伝統文化と言っていいでしょう。

日本の家屋といえば、畳は最も代表的なアイテムのひとつ

また日本の家屋といえば、畳は最も代表的なアイテムのひとつです。

普段はフローリングやカーペット中心の家で暮らしている人でも、畳の上に座ると「何だか、落ち着くよね」と思う人も多いのではないでしょうか。

一般的に畳に用いられているのはい草ですが、そこには使われてきた理由がきちんとあります。

 

まずは吸湿性が抜群にいいことです。湿度が高い日本の生活には吸湿性は非常に重要なポイントです。い草は空気中の水分が多い時は湿気を吸収し、逆に乾燥している状態の時は水分を放出し、空気中の水分を適度にコントロールしてくれます。気密性が向上している住宅が多くなっている現代ですが、湿気や乾燥は呼吸器系の疾患の大きな敵でもあるため、い草は健康面でも優れた効能を発揮しているのです。

 

さらにい草には空気の浄化作用もあり、二酸化窒素やホルムアルデヒドを吸収します。車の排気ガスやタバコの煙、暖房機器やガスコンロなどから発生する有機化合物などの二酸化窒素、またシックハウス症候群の原因にもなるホルムアルデヒドも吸着し、室内の空気の清浄に大きく貢献する働きがあると明らかにされています。

もう一つのメリットは消臭作用です。い草は悪臭の原因となる様々な化学物質を吸着させる高い消臭性も併せ持っています。暑い時期に気になる汗のニオイにも効果があります。そしてい草の香りには高いリラックス効果があり、ストレスを軽減し、心を落ち着ける働きもあるのです。

そして日本家屋の良さは木を大切に利用すること。塗料をたくさん使って木目を隠したり、全く違う色にしたりといった加工ではなく、あくまでも「木の姿」を大事にした家づくりも特徴のひとつと言っていいでしょう。特にヒノキのような高級木材は、床の間などに丸ごと使用している場合もあります。木目や木の色、その香りも大切に活かす方法が日本の家屋の伝統的な造りとなっています。

 

改めて見つめ直してみると、日本家屋はサスティナブルな住宅であることがよく分かります。この国ならではの気候や機能性を考慮し、健康面でもメリットの多い住宅が受け継がれてきているのです。

歴史的価値も高い、海外の環境共生型住宅とは

■歴史的価値も高い、海外の環境共生型住宅とは

・地下に広がる石灰岩層を建築材として利用した「トゥルッリ」

南イタリアのプーリア州にあるアルベロベッロという街には、「トゥルッリ」というとんがり屋根の円い石の家があります。紀元前8世紀には既につくられていたと考えられており、1996年にはユネスコの世界遺産に登録されました。この地域の地下には石灰岩層が広がっており、その石灰岩を建築材として用いています。厚い壁の内側と外側の両方に白い石灰が塗られおり、紫外線を防ぎながら外気をしめだして保温する役割を担っています。厚みがあるため外からの光が取り込みにくく、また暑さを避けるため入り口や窓が小さくつくられています。通常ならば部屋の中が暗くなりやすくなりますが、石灰岩の白さで明るさと広さを演出しています。

 

・イラン中部にある採風塔「バードギール」を用いた家

イランの中央に位置するヤズドは夏は40℃近くまで気温が上昇、冬はマイナス20℃まで下がるなど、夏と冬の気温差が大きい地域となっています。そんな大きな気温差が発生する環境においての住宅にも様々な工夫が施されており、夏と冬とで部屋を住み分けたりなどの対策もされています。

中庭には樹木がたくさん植えられ、夏の厳しい日差しを遮る役割をし、涼しさを運んでくる池も設けられており、また風を取り入れる「バードギール」と呼ばれる高い塔が建てられ、上空の涼しい風を家の中に取り込む役割をしています。細長い通気孔が並び、ダクトを通じて外部からの風を導く仕組みで、厳しい夏を乗り越えるために必要不可欠な天然の空調設備となっています。

 

・奇岩を利用したカッパドキアの「洞窟の家」

トルコの中心部アナトリア高原にあるカッパドキア。標高1,000メートルの高さにあり、1年を通して乾燥が強く、朝晩と昼の気温差が大きい地域です。

3つの火山による火山活動により大量の溶岩や灰が堆積して凝灰岩の地層を形成。何万年もの時間をかけて雨水や風などに削り取られ、様々な形をした岩が並んでいます。

その中につくられた洞窟の家には紀元前3,000年頃から人々が住み始めたと言われており、敵から身を守るために何層にもなる巨大な地下都市をつくっており、たくさんの部屋を繋ぐ廊下には敵の侵入を防ぐ石の蓋が置かれたりなどという工夫もされています。

季節によっても、冬は暖かい洞窟の内部で、暑い夏は開放的なテラスで過ごせるようになっています。保湿性に優れた暗く涼しい場所は食料の貯蔵庫として、明るく暖かい部屋はキッチンもしくは家畜小屋や鳩の小屋として利用されています。カッパドキアはこの奇岩の風景と洞窟の住居で、1985年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。

 

■人口減少率ワースト1位から…SDGs未来都市「下川町」の取り組み

1980年に人口減少率北海道ワースト1を記録した下川町。マイナス30℃を記録する日本の最寒地域であり、約9割の面積が森林に覆われています。その森林資源を利用し、新しい産業や雇用を創出。未活用の林地残材はバイオマス燃料としてエネルギー自給を図り、過疎化が進む地域では点在していた高齢者の住宅を屋根付きの通路で結び、歩いて行き来ができるようなバイオビレッジを建設しました。この下川町はSDGs未来都市として注目されています。

 

それぞれの地域の気候や文化によって築き上げられてきた個性的で機能性あふれる伝統的な住宅は、どこの国や地域においても快適に暮らすための工夫が数多く施されていること、それが現代にまで受け継がれてきていることに先人の知恵の素晴らしさを感じます。

今後も環境を考えた上で過ごしやすい住居づくりを考えていくことは必須です。

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