【高校野球】光った鳴門のボールの見極め データで楽しむ夏の甲子園【4日目・第1、2試合】

第101回全国高等学校野球選手権、4日目の結果一覧

9与四球と苦しんだ花巻東の投手陣、鳴門打線はボール球に手を出さず

 注目の東北勢の高校が出場した夏の全国高等学校野球選手権大会第4日目前半。セイバーメトリクスの指標で各校の闘いぶりを振り返ってみます。

 指標の説明は以下の通りとなっています。

OPS:出塁率+長打率 1を超えると優れている
wOBA:各プレーの得点価値を累積して算出した打撃指標
O-swing%:ボールゾーンに来た球をスイングした割合
Z-swing%:ストライクゾーンに来た球をスイングした割合
Swing%:スイングした割合
O-contact%:ボールゾーンに来た球をスイングした際にバットにボールが当たった割合
Z-contact%:ストライクゾーンに来た球をスイングした際にバットにボールが当たった割合
Contact%:スイングした際にバットにボールが当たった割合
Zone%:ストライクゾーンを球が通過した割合
SwStr%:空振り率

WHIP:1イニングあたりに許したランナーの数
P/IP:1イニングあたりに投球した球の数
GB/FB:フライに対するゴロの割合

○鳴門 10-4 花巻東

攻撃指標
【鳴門】
打率.323 OPS 0.904 wOBA 0.451   
O-swing% 14.0% Z-swing% 61.7% Swing% 37.1%
O-contact% 50.0% Z-contact% 91.4% Contact% 83.3%
Zone% 48.5% SwStr% 6.2%

【花巻東】
打率.278 OPS .755 wOBA .396 
O-swing% 20.9% Z-swing% 64.4% Swing% 45.5%
O-contact% 50.0% Z-contact% 96.4% Contact% 87.1%
Zone% 56.5% SwStr% 5.8%

鳴門・西野知輝投手の各指標

9イニング 打者数42 投球数154 
WHIP1.67 P/IP17.11 GB/FB0.75
ストレート43.5% スライダー 47.4% チェンジアップ5.8%
Zone% 56.5%  空振り率 5.8%

花巻東・西館勇陽投手の各指標
5回2/3 打者数30 投球数121 
WHIP1.94 P/IP21.35 GB/FB1.10
ストレート62.0% スライダー19.0% チェンジアップ 17.4%
Zone% 49.6% 空振り率 5.8%

 両チームともに10安打ずつでしたが、得点は10-4と大きな差になりました。その要因は四死球。花巻東の与四死球は9とコントロールに苦しみペースをつかめなかった様子が伺えます。また鳴門の打線もO-swing%「14.0%」とボール球に手を出さず、冷静にボールを見極めていました。そのためホームランはなくてもOPS.904と高水準に達しました。

 鳴門の西野投手はZone%「56.5%」からもわかるように終始ストライク先行のピッチングでペースをつかんでいました。特に低めへの投球が全体の58.4%と、低めへの丁寧なコントロールが花巻東打線をうまく抑えた要因ともいえるでしょう。

仙台育英は20得点もOPSは1.204にとどまる

○仙台育英 20-1 飯山

攻撃指標
【仙台育英】
打率.471 OPS 1.204 wOBA 0.563
O-swing% 35.1% Z-swing% 77.5% Swing% 54.2%
O-contact% 58.8% Z-contact% 83.9% Contact% 75.0%
Zone% 45.2% SwStr% 11.8%

【飯山】
打率.071 OPS .175 wOBA .084 
O-swing% 25.5% Z-swing% 85.5% Swing% 56.6%
O-contact% 30.8% Z-contact% 80.9% Contact% 70.0%
Zone% 51.9% SwStr% 17.0%

 24安打10得点と仙台育英が飯山を圧倒しました。ただOPSは1.204と20得点の割にそこまで大きくないと感じた方もいるのではないでしょうか。2日目に出場し11得点した履正社のOPSは1.276ですので、それを超えていないのです。履正社は42打数5本塁打36塁打で長打率.857であるのに対し、仙台育英は51打数ホームラン0、35塁打で長打率が.686。この差が影響していたのです。

 飯山の投手陣は球が上ずっていたのでしょうか、高めへの投球が48.6%もありました。それを仙台育英が少々強引に打ち返して行きました。それはO-swing%「35.1%」、O-contact%「58.8%」からもうかがえます。

 飯山は3回に四球とヒットで先制点を奪いましたが、結局ランナーが出たのはその回と7回のみ。OPS.175と苦しい戦いとなりました。鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ・ラジオ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。

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