延長戦にもつれ込んだ習志野-沖縄尚学、セイバーメトリクスの指標で分析すると…
延長戦にもつれ込む試合があるなど接戦が相次いだ夏の全国高等学校野球選手権大会第4日目後半。セイバーメトリクスの指標で各校の闘いぶりを振り返ってみます。
指標の説明は以下の通りとなっています。
OPS 出塁率+長打率 1を超えると優れている
wOBA 各プレーの得点価値を累積して算出した打撃指標
O-swing% ボールゾーンに来た球をスイングした割合
Z-swing% ストライクゾーンに来た球をスイングした割合
Swing% スイングした割合
O-contact% ボールゾーンに来た球をスイングした際にバットにボールが当たった割合
Z-contact% ストライクゾーンに来た球をスイングした際にバットにボールが当たった割合
Contact% スイングした際にバットにボールが当たった割合
Zone% ストライクゾーンを球が通過した割合
SwStr% 空振り率
WHIP:1イニングあたりに許したランナーの数
P/IP:1イニングあたりに投球した球の数
GB/FB:フライに対するゴロの割合
○習志野 5-4 沖縄尚学
攻撃指標
【習志野】
打率.333 OPS 0.830 wOBA 0.412
O-swing% 23.9% Z-swing% 76.3% Swing% 51.7%
O-contact% 50.0% Z-contact% 93.1% Contact% 83.8%
Zone% 53.1% SwStr% 8.4%
【沖縄尚学】
打率.176 OPS.458 wOBA .240
O-swing% 29.9% Z-swing% 63.0% Swing% 48.0%
O-contact% 40.0% Z-contact% 80.4% Contact% 69.0%
Zone% 54.7% SwStr% 14.9%
○習志野 投手の各指標
山内翔太
5回0/3 打者数20 投球数68
WHIP 0.80 P/IP 13.60 GB/FB 1.60
ストレート43.5% スライダー47.4% チェンジアップ5.8%
Zone% 51.0% 空振り率 4.2%
飯塚脩人
5回 打者数19 投球数80
WHIP 0.80 P/IP 16.00 GB/FB 2.00
ストレート71.3% スライダー13.8%
チェンジアップ7.5% フォーク7.5%
Zone% 48.8% 空振り率 18.8%
○沖縄尚学 投手の各指標
仲村渠春悟
3回2/3 打者数17 投球数59
WHIP 1.91 P/IP 16.09 GB/FB 1.80
ストレート47.5% スライダー40.7% フォーク11.9%
Zone% 49.2% 空振り率 8.5%
永山蒼
6回1/3 打者数27 投球数84
WHIP 1.26 P/IP 13.26 GB/FB 2.83
ストレート71.4% スライダー13.1% カットボール10.7%
Zone% 56.0% 空振り率 8.3%
延長戦にもつれ込んだ接戦で点差はわずかに1ですが、打撃成績の内容を見れば、打率、OPS、wOBAともにダブルスコアと習志野が優位でした。沖縄尚学は4回に単打、二塁打、三塁打と固め打ち。さらにはスクイズを絡めるなど効果的な攻撃で3点を奪いました。6回も習志野・飯塚投手の変わりばなを攻め込み、またもやスクイズで1点をもぎ取ります。しかし7回以降は140キロ台のストレートを主体としたピッチングに翻弄され、6連続を含む8三振を喫します。なお、習志野先発の山内投手も7奪三振ですので、沖縄尚学は計15の三振でした。
習志野の飯塚投手はトータルで18%もの三振を奪う快投で流れを引き込み、延長戦での勝利に貢献しました。なおスライダーでの空振り率は驚異の36.4%。その他の変化球でも空振りを多数奪うなど春の甲子園準優勝の実力の片鱗を見せつけました。
打率では高松商が上も、OPSとwOBAでは鶴岡東が優位に
○鶴岡東 6-4 高松商
○攻撃指標
【鶴岡東】
打率.281 OPS.847 wOBA 0.374
O-swing% 22.2% Z-swing% 56.9% Swing% 39.6%
O-contact% 37.5% Z-contact% 90.2% Contact% 75.4%
Zone% 50.0% SwStr% 9.7%
【高松商】
打率.306 OPS.736 wOBA.331
O-swing% 21.1% Z-swing% 66.3% Swing% 43.2%
O-contact% 42.1% Z-contact% 86.0% Contact% 75.0%
Zone% 48.9% SwStr% 10.8%
○鶴岡東 投手の各指標
影山雄貴
6回 打者数28 投球数117
WHIP 1.67 P/IP 19.50 GB/FB 2.17
ストレート64.1% スライダー19.7% チェンジアップ12.8%
Zone% 46.0% 空振り率 11.5%
池田康平
3回 打者数13 投球数59
WHIP 1.67 P/IP 19.67 GB/FB 0.33
ストレート62.7% スライダー13.6% カーブ15.3%
Zone% 54.0% 空振り率 9.5%
○高松商・香川卓摩投手の各指標
9回 打者数39 投球数144
WHIP 1.56 P/IP 16.00 GB/FB 1.00
ストレート40.3% スライダー25.7% カーブ30.6%
Zone% 50.0% 空振り率 9.7%
打率では高松商が上ですが、OPS、wOBAでは鶴岡東が優位となり、その差が点差として現れた形となりました。
高松商の香川投手は高低を使い分ける投球術で鶴岡東に的を絞らせていませんでしたが、5回表の攻撃では鶴岡東がそれを読み切り2本のタイムリーで3点を奪う効果的な攻撃を見せました。
登板した3投手とも、得意の変化球で10%の空振りを取るなど持ち味を発揮し接戦を演出しました。鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ・ラジオ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。