どうしたらいいの?海外旅行中の健康トラブルの予防や対策法

国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターが、海外旅行中の健康トラブルや薬の取扱いに関するアンケート結果と対策を発表しました。旅行中に体調が悪くなった時、どのように対応していますか?専門家が推奨する対応策もご紹介します。

海外旅行での健康トラブルについてのアンケート

世界で問題化している、抗菌薬が効かない薬剤耐性(AMR)の対策に向け、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターが、海外旅行での健康トラブルや薬の取扱いについてのアンケートを実施しました。東南アジア、南アジアへ渡航歴がある人の中で、旅行中に腹痛などの健康トラブルにあった人は多いようです。

海外旅行での腹痛などの健康トラブル

「海外で下痢・腹痛になったことがありますか?」という質問には、63%が「はい」と回答。男女年齢別にみると著しく多かったのは、20代男性で85%という結果だったそうです。途上国などでは、まな板や包丁が不衛生な事も多く、サラダやフルーツなどに食中毒を起こす菌が付着している可能性も。調理せずに食べるものは特に注意が必要です。

薬の持参ついて

「海外旅行に薬を持っていきますか?」という質問に対しては、8割以上が「はい」と回答。旅先で医者に行くよりも、慣れた薬を持参してすぐに対処できる体制を整えているようです。ただ、抗菌薬の使用法には注意が必要なようですよ。例えば、お医者さんから以前処方されて余った薬を自己判断で服用するのは、薬剤耐性(AMR)菌をつくってしまうリスクがあるようです。

海外旅行に持参した抗生物質の服用について

今回のアンケート回答者の約40%が、海外旅行に抗生物質(抗菌薬)を持参したり、服用したりしたことがあると回答。特に20代男性は78.8%と著しく高い割合に。

抗菌薬が効かないAMR菌とは

世界では、AMR(Antimicrobial Resistance)として知られる「薬剤耐性」。細菌などの増加を抑制したり壊す抗菌薬(抗生物質)に対抗しようと、微生物は薬から逃げようとし、その結果微生物に対して薬が効かなくなってしまうことを「薬剤耐性」というそうです。

抗菌薬を自己判断で飲んでしまうと、AMRが体内で増殖する事にもつながってしまうそう。気づかないうちに、日本国内へAMR菌を持ち込む可能性もあるそうです。専門家による処方のもと服用することが大切ですね。

自己判断で抗菌薬を服用する3つのリスク

【1】薬剤耐性菌が体内に残り、腸内で増殖し国内へ持ち込んでしまう危険性

抗菌薬を服用することで、身体に有益な菌も死んでしまい、現地で体内に入った抗菌薬が効かないAMR菌だけが残ってしまうことも。それが腸内で増殖し身体の中に残ったまま、日本へ持ち込む可能性が高くなるそうです。

【2】命にかかわる感染症の診断と治療が遅れる

旅行者下痢症ではない下痢の場合に抗菌薬を服用してしまうと、診断や治療が遅れてしまう恐れが。マラリアや腸チフスなど、命にかかわるような感染症の可能性も否定できない中で、診断が遅れてしまう恐れがあるそうです。

【3】抗菌薬の服用による下痢と区別がつかなくなる

抗菌薬を自己判断で服用すると、腸内細菌のバランスが崩れて下痢を起こすことも。熱が出たからと抗菌薬を自己判断で服用してしまうと、他の原因の下痢症状との区別がつきにくくなってしまうそうです。

どうしたらいいの?AMRの予防や対策

アンケートを実施した国立研究開発法人国立国際医療研究センター国際感染症センター、国際感染症対策室医長国際診療部副部長(併任)の忽那 賢志(くつな さとし)先生による、AMR対策についてご紹介します。

まめに手洗いする

手洗いは、感染を防ぐ重要な手段のひとつ。慣れない場所だと手を洗う場所が見つかりにくい場合もありますが、ウェットティシュで拭くよりも水で流すことが効果的のようです。ペットボトルの水など常備しているとよさそうですね。

加熱した食品を食べる

野菜サラダやフルーツなどの生もの、特にカットされたものは菌がついているリスクが高いそう。食事をする場所にもよりますが、加熱のものを選んだ方がよさそうです。

屋台の食品は食べない

地元の人たちで賑わう屋台などは、観光として雰囲気を楽しめる場所でもありますが、衛生上のリスクは否定できません。途上国での屋台食は菌に汚染されている可能性が高いので、加熱されたものでも口に入れない方がいいそうです。

ペットボトルや密閉容器に入った飲料を飲む

途上国では水道水や氷にも注意が必要。水分をとる際、ペットボトルや密閉容器に入ったものを選ぶのがよいそうです。

旅行1カ月前にワクチン接種

ワクチンで予防できる感染症は多くあるので、事前に予防接種を行うというのもひとつの手段です。ワクチンはなくても予防薬があるマラリアなどの感染症もあるそうです。トラベルクリニックを受診する際は、1か月以上前と推奨されています。

軽い下痢なら整腸剤で様子をみる

万が一渡航先で下痢を起こした場合、軽い場合は抗菌薬ではなく整腸剤などで様子をみてみるという手段も。軽い場合は、2~3日で自然治癒することが多いそうです。

ひどい下痢になったら現地の医療機関へ

もし下痢が重い場合は、医療機関にかかることが大切なようです。現地の薬局で薬を買ったり、自己判断で抗菌薬を服用するのは、AMR菌のリスクにつながってしまうようです。

自己判断で抗菌薬を服用しない

楽しい旅行中に熱や腹痛に悩まされたら、すぐに症状を和らげるべく自己判断で薬を服用したくなりますが、抗菌薬は必ず医師の指示どおりに服用することが重要だそうです。

慣れない土地での健康トラブル、不安になってしまいますよね。早く治して旅行を楽しみたいという気持ちから、持参の薬で対応してしまいがち。まずは体調管理や予防対策をしっかりし、万が一の時は先のことを考えて慎重な対応が必要なようです。

【海外旅行緊急調査レポート】

調査対象: 東南アジア、南アジアへの海外旅行経験のある一般人331名、男女各50%、20代~60代年代別に調査

調査期間: 2019年6月

実施: 国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター

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