【月間ベストファイター・7月】志朗、不利の予想を覆し現役ラジャ王者ルンキットを撃破した勝因とは

©株式会社ヨシクラデザイン

ラジャ王者・ルンキットを破り月間ベストファイターに輝いた志朗(右)

 優勝賞金1,000万円をかけたRISE初の世界トーナメント『RISE WORLD SERIES 2019』。
 -58kg級と-61kg級の2階級に世界中の強豪が参戦し、志朗は-58kg級に出場。トーナメント参加8名中日本人はわずか2名。トーナメントを見て、志朗は「日本人を勝たせるつもりがない」と評したほど強豪ぞろい。

 3月の1回戦で志朗は、WAK-1F K-1ルール世界王者のウラジスラフ・ミキータス(ウクライナ)を3RKOで撃破。そして7月には不利な下馬評の中、ラジャダムナンスタジアム認定スーパーフェザー級王者ルンキット・ウォーサンプラパイ(タイ)を延長判定で撃破し、那須川天心との日本人同士の決勝を実現させた。

 ルンキットとの対戦が決まり、「ロッタン、スアキムといった一流どころにも勝っているし、階級的にも上の選手だったので不安がありました」と志朗は語る。リングに上がってみて、実際に「結構体格差がある」と感じたという。

3月のミキータス戦では志朗はローキックでKO勝利を収めた

 試合開始直後、ルンキットは3月のフレッド・コルデイロ戦とは打って変わって積極的に前に出る。リーチの長い左のロー・ミドルにより距離を詰めさせてもらえない志朗は、「本当は自分がプレッシャーかけて、タイ人が1ラウンド目に攻められ慣れていないところを攻めようと思った」という事前の作戦の裏をかかれる。

 想定外のルンキットの行動に「心が乱れた部分もあった」といい1ラウンドを落とした志朗だったが、「1ラウンド目にミドルを受けて、そんなに痛くなかった。緊張していたせいもあるかもしれないけど、全然痛くなくて、前に攻めていける確信があった」と突破口を見出した。「カットしてもよかったし、食らってローを返すのもできた。どちらでも行ける安心感があったので、攻めることに自信があった」と、2ラウンドから反撃を開始する。

■迎えるタイ人の転換期「自分の方がルールに対応しようという意志が強かった。そろそろタイ人もRISEルールに対応した練習をした方がよい」

ルンキット(左)を迎えた準決勝の戦前予想は不利の声も少なくなかった

 2ラウンド終盤には、ボディによりルンキットが顔をゆがめるシーンも増えた。「ボディが入ったら『ウッ』と声が漏れていたし、三日月蹴りも入れていたので、ボディが効いているのがわかった」3ラウンドにはルンキットは完全に失速し、志朗のペースのまま終了のゴング。「延長はあるんじゃないかと思っていた」という志朗の目論見通りに延長ラウンドへ突入。蹴りもなくなり息を切らせていたルンキットを突き放し、2-1ながら志朗が判定をものにした。

公開練習では梅野源治(左)を相手にRISEルールに適応した姿を見せていた志朗(右)

 不利の声が大きく、那須川とルンキットの戦いを望む声も耳に入っていたという志朗は、「それを覆したいという気持ちもあった」と当時の心境を語る。そして勝利の瞬間には、不利の予想の中にも支え続けてくれた周囲への感謝で満たされたと語った。

 改めて勝因を尋ねると、「自分の方がルールに対応しようという意志が強かった」と、準備に対する姿勢を挙げた。ムエタイにおける武器であるヒジと首相撲が使えないことで戦いの距離が変わるため、「そろそろタイ人もRISEルールに対応した練習をした方がよいというタイのファンからの意見も多い」と、RISEに対するムエタイのエースたちの取り組み方に一つの転換期が来ているという考えを示した。

伊藤RISE代表「全く考えられなかった」という日本人同士の決勝で顔を合わせる志朗(左)と那須川天心(右)

 志朗の躍進の影には、ボクシングの井上尚弥のバンデージ巻きで注目を集めたトレーナー・永末"ニック"貴之氏の存在がある。永末氏とは7~8年の付き合いになるという志朗。「減量はリカバリーまで含めて」という永末氏の指導により、減量は失敗知らず。フィジカル面の不安は一切ないと志朗は全幅の信頼を寄せる。

 バンデージ巻きについても「デビューしてから片方のパンチを打てない状態で試合をしていることもあったけど、ニックさんにバンデージを巻いてもらってからは、試合後に痛いことは全くなくなった」と信頼を見せた。

 9月に迫る那須川天心戦。ここ1年くらいで話をする機会が増えたという那須川の印象を「年下でも尊敬する面が多い」と語る。

「会見も一緒にするようになったが、発言がすごくしっかりしている。記者会見でのいいコメントを聞くと、本当に格闘技界を変えるために発言していると感じる」

 その那須川との戦いのキーワードは「スピード」。「天心君はパンチも移動もスピードが速いので、そのスピードとの勝負になる」と展開を予想する志朗は、「(那須川は)RISEの看板選手でもあるので、アウェイ覚悟で試合をしないとダメ。流れを変える技やパターンをいくつか用意している」と、すでに武器が準備できていることを明かした。

 最後に「9月16日は世界一が決まる戦い。-58kg級だけ日本人が2人だけだったので、決勝が日本人対決というのはとてもドラマチック。本当に運命的な巡り合わせなので、ぜひ勝って世界一になりたい」と強く意気込みを見せた。

■受賞者・志朗が喜びを語る

 今回のベストファイター受賞は、ベストファイターの前身である月間MVP(2017年1月度)と合わせて2度目の受賞となる。そのことについて志朗は「選んでいただいたと聞いたときは素直にうれしかった。自分的には内容に納得できない部分もありますが、関係者の方に評価していただいたのはうれしく思います」と語った。

 なお今回受賞した志朗には、イーファイトより記念の盾と、ゴールドジムからアルティメットリカバリーなどのサプリメント3種類が贈られる。

 志朗にサプリメントの利用方法について聞くと、「練習前にプロテイン、練習中はBCAAを飲んでいます。ニックさんに出会ってから、プロテインを勧められて飲むようになった。今回の試合もしっかりたんぱく質を取って体作り重視でやって、いつもとは違う体に仕上がったので、効果を再確認できました」と答えた。