【高校野球】宇部鴻城・岡田、驚異の空振り奪取率 …データで楽しむ夏の甲子園【7日目・第1、2試合】

第101回全国高等学校野球選手権、7日目第1、2試合の結果一覧

ボール球に手を出した宇和島東、12三振を喫して敗退

 夏の全国高校野球選手権大会第7日(12日)の第1、第2試合は、ストレートが持ち味の先発投手が実力を遺憾なく発揮しました。セイバーメトリクスの指標で各校の戦いぶりを振り返ってみます。

 指標の説明は以下の通りとなっています。

OPS 出塁率+長打率 1を超えると優れている
wOBA 各プレーの得点価値を累積して算出した打撃指標
O-swing% ボールゾーンに来た球をスイングした割合
Z-swing% ストライクゾーンに来た球をスイングした割合
Swing% スイングした割合
O-contact% ボールゾーンに来た球をスイングした際にバットにボールが当たった割合
Z-contact% ストライクゾーンに来た球をスイングした際にバットにボールが当たった割合
Contact% スイングした際にバットにボールが当たった割合
Zone% ストライクゾーンを球が通過した割合
SwStr% 空振り率
WHIP:1イニングあたりに許したランナーの数
P/IP:1イニングあたりに投球した球の数
GB/FB:フライに対するゴロの割合

〇宇部鴻城7-3宇和島東

【宇部鴻城】
打率.385 OPS1.032 wOBA.448
O-swing% 30.3% Z-swing% 65.7% Swing% 45.9%
O-contact% 74.1% Z-contact% 87.0% Contact% 82.2%
Zone% 44.0% SwStr% 8.2%

【宇和島東】
打率.351 OPS.791 wOBA.341
O-swing% 39.1% Z-swing% 59.0% Swing% 49.7%
O-contact% 40.7% Z-contact% 89.1% Contact% 71.2%
Zone% 53.1% SwStr% 14.3%

宇部鴻城・岡田佑斗投手の各指数

9回 打者数40 投球数147
WHIP1.56 P/IP16.33 GB/FB0.69
ストレート80.3% スライダー15.6%
Zone% 53.1% 空振り率14.3%

宇和島東・舩田清志投手の各指数

6回 打者数30 投球数104
WHIP 2.17 P/IP 17.33 GB/FB 1.18
ストレート54.8% スライダー38.5% フォーク4.8%
Zone% 43.3% 空振り率 7.7%

 宇部鴻城がOPS1超えの打棒で7点を挙げ、7年ぶりの甲子園勝利を手にしました。岡田投手は実に約80%の割合でストレートを投げこみ、奪った12三振のうち11個はストレートで決めました。ストレートでの空振り奪取率は16.1%。球速は130キロ前半ですが、この奪取率は驚異的です。ボールの回転数が多いためキレのあるボールとなると想像されます。
 宇和島東打線はキレのある外角高めのボール球に手を出してしまい、O-swing%は39.1%に達しました。

両投手無四球の投手戦 本塁打以外の長打許さなかった海星・柴田に軍配

〇海星3-2聖光学院

【海星】
打率.229 OPS.565 wOBA.272
O-swing% 38.8% Z-swing% 55.0% Swing% 47.7%
O-contact% 68.4% Z-contact% 93.9% Contact% 84.6%
Zone% 55.0% SwStr% 7.3%

【聖光学院】
打率.212 OPS.606 wOBA.295
O-swing% 26.8% Z-swing% 69.2% Swing% 50.5%
O-contact% 90.9% Z-contact% 97.2% Contact% 95.7%
Zone% 55.9% SwStr% 2.2%

海星・柴田蓮人投手の各指数

9回 打者数33 投球数93
WHIP 0.78 P/IP 10.33 GB/FB 1.38
ストレート77.4% カーブ8.6% チェンジアップ7.5% スライダー6.5%
Zone% 55.9% 空振り率 2.2%

聖光学院・須藤翔投手の各指数

9回 打者数36 投球数109
WHIP 0.89 P/IP12.11 GB/FB2.09
ストレート43.1% スライダー38.5% フォーク15.6%
Zone% 55.0% 空振り率7.3%

 両投手とも無四球。締まった投手戦になりました。海星・柴田投手は77.4%の割合でストレートを投じ、うち60%がストライクゾーンというコントロールで聖光学院に対峙。空振りは取れないものの打たせてとる投球で抑えていきました。聖光学院の荒牧選手にはストレートを2度スタンドに持っていかれましたが、それ以外はすべて単打。集中打を浴びることなく2失点で勝利に貢献しました。
 聖光学院の須藤投手もストレート、スライダーの6割近くがストライクゾーンをという丁寧な投球。ゴロの山を築いてGB/FBは2.09に達しました。OPSでは聖光学院が上回りましたが、少ないチャンスを確実にものにした海星が17年ぶりの夏の甲子園勝利となりました。鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ・ラジオ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。

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