「しっかり踊ってしっかり歌う」 モーニング娘。’19がロックフェスで発見された唯一つの理由|大塚ナギサ

本サイト記者も見た、あの「飛天の間」で行われたディーナーショーが映像に! 記事は下記にリンク(画像は、Hello! Project 20th Anniversary!! モーニング娘。'19 ディナーショー「Happy Night」より)

8月10日、モーニング娘。’19が、国内最大級のロックフェス『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019』(以下RIJF)の最大ステージである「GRASS STAGE」に登場。圧巻のパフォーマンスを見せ、大絶賛されています。

6万人以上を収容するというGRASS STAGEにモーニング娘。が現れたのは、午前10時30分。この日のトップバッターでした。昨年に続いて2回目のRIJF出演となる彼女たちは、約50分の持ち時間をほぼMCなしでフルに使って14曲を披露。炎天下の中、激しいダンスと歌で、観客と一体になって大いに盛り上がったのです。

GRASS STAGEでは、RIJFを主催する株式会社ロッキング・オンの渋谷陽一社長がステージ上で前説をするのが恒例となっています。もちろん、この日も渋谷社長が登場したわけですが、昨年初めてRIJFに出演したモーニング娘。について、こう話しています。

「(昨年のRIJFで)きっと初めて(モーニング娘。のライブを)観た人も多かったと思うんですが、彼女たちは本当に鮮烈な印象を残してくれました。何がすごかったかと言えば、彼女たちはロックフェスだからといってロック仕様になったわけではなくて、いつも通りのパフォーマンスをやって、あれだけの熱狂を繰り広げてくれたのです。まさに、モーニング娘。をこのフェスが発見したわけです」

つまり、モーニング娘。は、つねに多くの音楽ファンを熱狂させられるようなパフォーマンスをし続けており、昨年のRIJFに出演したことで、多くの人がその事実に気づいたということです。

昨年のRIJFでモーニング娘。’18が立ったステージは、収容人数1万人規模のLAKE STAGE。ライブが進むにつれてどんどん観客が増え、最終的には入場規制されるほどの大盛り上がりとなりました。現場にいた多くの音楽ファンたちが “モーニング娘。のパフォーマンスがすごいぞ”ということをその場で発見し、その結果LAKE STAGEが満員になったのです。

そんな昨年の“発見”を受けての、今年のGRASS STAGE。公式バスツアーのバスが事故渋滞にハマって、モーニング娘。’19のライブ開始時間に到着できないというハプニングがあったものの、満杯になった会場を存分に盛り上げました。昨年の何倍もの音楽ファンがまた、今年もモーニング娘。を発見したわけです。

RIJFはモーニング娘。のメンバーたちにとっても憧れのステージであり、昨年も今年も相当な意気込みで臨んでいたことは間違いありません。でも、渋谷社長が言うように、モーニング娘。のパフォーマンスはいつも通り。しっかり踊って、しっかり歌うという、結成から20年以上も変わらずに続けてきたことを、愚直なまでに発揮していただけです。

それならば、どうして2018年までモーニング娘。は発見されなかったのでしょうか? モーニング娘。’17のパフォーマンスだってとんでもなく素晴らしかったし、道重さゆみがリーダーだったモーニング娘。’14がRIJFに出ていたとしたら、間違いなく発見されていたはず。あるいは、後に“プラチナ期”と呼ばれることとなる2009年のモーニング娘。であっても、発見されていたに違いない。モーニング娘。はもう何年もずっと素晴らしいパフォーマンスをし続けているのですから。

動き続ける音楽シーンの中で、“アイドル”や“ロック”といった概念が変化し、その結果として、今やっとモーニング娘。がRIJFで発見されたということもあるででょう。しかし、モーニング娘。の基本である「しっかり踊ってしっかり歌う」ということはずっと変わらないわけだし、それはライブパフォーマンスにおける普遍的な魅力そのものです。だからこそ、モーニング娘。が何年も発見されなかったことにもどかしさを感じずにはいられません。

もしも、モーニング娘。が素晴らしいということを運営サイドが猛烈にアピールしていたならば、もっと早く発見されていたかもしれない。しかし、残念ながらそういった動きはあまりなかったように思います。それこそ48グループや坂道シリーズ、ももいろクローバーZなどが、世の中を巻き込んでムーブメントを作るなか、モーニング娘。を含むハロー!プロジェクトは積極的なメディア展開ではなく、コンサートを通してパフォーマンスを磨くことに心血を注いでいたのです。

では、なぜモーニング娘。は世間にアピールしなかったのか? その答えは分かりませんが、あまりに愚直にパフォーマンスを磨き続けているがゆえ、現在のパフォーマンスのレベルにまったく満足できず、「こんなもんじゃ世間にアピールすべきではない」と判断したのではないか……とさえ思えてきます。あるいは、ただただパフォーマンスを洗練することだけに打ち込みすぎた結果、音楽シーンや世間がまったく視界に入ってこなくなり、自らの価値を見失ってしまったのではないか……そんな妄想すら湧いてきます。どう考えても、出るところに出れば、一発で“発見される”のに!

ここ何年もモーニング娘。が発見されずにいたことは、たしかにもったいないことなのかもしれませんが、発見されなかった時間の中でライブパフォーマンスのクオリティーが青天井に高くなっていったのも事実。そして、ついには発見されてしまったのだから、あとはもう多くの人々を巻き込んで、その魅力を発散し続けるだけ。RIJFで発見された以上、「今のモーニング娘。は知らない」というのは単なる時代遅れの唾棄すべき言葉でしかないし、「モーニング娘。のパフォーマンスはすごい」ということは大前提にして何の問題もないということです。

そして、メディア戦略などのカラクリの中で発見されたのではなく、ただただ愚直にパフォーマンスを磨き続けた結果、その評価を勝ち取ったという事実は、間違いなくメンバーたちの自信となるはず。さらには、その自信がより素晴らしいモノを生み出してくるであろうことに期待せずにはいられません。

RIJFにおけるモーニング娘。やアンジュルム、Juice=Juiceのパフォーマンスに対する高い評価について、「何を今さら発見してくれてんだよ」という感想を抱いているハロヲタは少なくないでしょう。そりゃあもう、何年もすごいパフォーマンスをし続けているんだし、RIJFで見せたパフォーマンス以上のモノが通常のコンサートで観られるんですから、ハロヲタがそう思うのは当然です。

渋谷社長はRIJFのモーニング娘。を「いつも通り」と表現しましたが、いつものモーニング娘。やハロー!プロジェクトは、はっきり言ってRIJFのそれよりもすごい。近い将来、この事実が発見されることでしょう。(文◎大塚ナギサ)

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