猛暑での危険性を指摘される東京オリンピック 無理やり開催する仰天理由|プチ鹿島

さぁ東京五輪まであと1年。各紙盛り上がって参りました。さっそく紹介しよう。

『ボート五輪テスト大会で熱中症続出 34度超の過酷環境』(スポニチ8月12日)

あれ?

《海の森水上競技場(東京都内臨海部)で開催された来年の東京五輪のテスト大会を兼ねたボートの世界ジュニア選手権最終日の11日、熱中症のような症状になる選手が相次いだ。 》

次にいこう。

『正直、くさい。トイレみたい」水泳オープンウオーター五輪本番コース テストイベントで参加選手“悲鳴連発”』(サンスポ8月12日)

あら?

《日本の男子選手が顔をしかめた。テスト大会には日本代表経験のある選手をはじめ、海外からも多数の選手が参加。テスト大会で正式な記録が出ないこともあり、水温と水質を確認すると途中でレースをやめる選手も多かった。》

おい、もっと景気がいい記事はないのか。 ではこれいきます。

『史上最悪 東京五輪でバタバタ死者が出る』(日刊ゲンダイ8月10日)

なんてオーバーな記事だ!

いや、しかし読んでみると競歩の鈴木雄介選手が東京五輪のコース変更を求めていたのだ。7月31日の早朝に東京五輪のコースを歩いたところ、「全く日陰がない。脱水になってもおかしくない」という厳しい環境を実感したという。全然オーバーな記事ではなかった。選手の悲鳴を伝えていただけ。

でもご安心ください。我らが森喜朗・大会組織委員会会長は1年前にこうおっしゃっています。この猛暑は、
『ある意味、五輪関係者にとってチャンス』(日刊スポーツ2018年7月24日)

え、チャンス?

インタビューの見出しには、

「”現実”を今、”経験”できた・・・」
「実証実験のチャンス」
「日本のイノベーションを世界に発信するチャンス」

とある。つまり日本の技術でこの暑さを乗り越え、世界に見せつける機会なのだと。

ではどんな実証実験がおこなわれたのだろう。日刊スポーツが五輪テスト大会の暑さ対策をまとめていた(8月7日)。

それによると、

・ミストタワー
・かぶる日傘
・医者いる救護所
・ゲートにアサガオ
・涼しい休憩所
・土産的冷涼グッズ

世界よ、これ東京五輪のイノベーションだ!

これらは観客用の対策なのだが、実験結果が東京新聞に書いてあった(8月7日)。冷涼グッズは「冷たさをあまり感じない。意味がないのかも」(都内の女性)。で、ミストの効果は限定的……。

驚くのは次だ。組織委員会のある理事は「最後は観客の自己責任になるのではないか」と述べたという(7月30日理事会)。

さらに驚いたのは朝日新聞の記事。「五輪の猛暑 観客も備えよう」(8月10日)。記事の最後、気象の専門家の言葉。

「一般の人も、事前にアスリートと同じように暑さに慣れる体作りが必要」

ええええええ!

《観戦する2週間前から、朝などに屋外を30分以上歩いたり、湯船につかったりして、汗をかく習慣を身につけることを勧める。》

まじか……。森喜朗会長が「ある意味チャンス」って言ってたじゃないか……。こうして日本はかつて戦争に突き進んでいったのだな。 しかしどうしてそんなに五輪にこだわるのだろう。開催する必然性はあるのか?

ひとつのヒントになるのはこちらの記事。

『神宮外苑 高層化なし崩し』(朝日・7月25日)

わかりやすく言うと、美しい景観を守るために高さ制限「15メートル」だった明治神宮外苑が新国立競技場をつくることで一気に「80メートル」に引き上げられたのだ。港区青山通り協議会の方はこうコメントしている。

《五輪開催にも、再開発にも、反対ではない。それでも、民間事業者の利益優先に見える開発計画と、引きずられるように規制を緩める行政の姿勢に違和感を覚える》

だれのため、何のための再開発なのか。東京五輪は本当にアスリートファーストなのか。

神宮再開発が第一の目標(開発ファースト)だと見立ててみると、このクソ暑い時期ですら五輪をやる意味も理解できる。ここらへん、もっとメディアに深掘りしてほしいです。(文◎プチ鹿島 連載「余計な下世話」)

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