【高校野球】星稜奥川、最速154キロも空振り5%、強打の履正社…データで楽しむ甲子園【8日目第1、第2試合】

星稜・奥川恭伸【写真:沢井史】

履正社に敗れた津田学園はボール球に手を出す傾向が…

 近畿地方の有力校がすべての試合で出場するため、朝から満員札止めとなった夏の全国高等学校野球選手権大会第8日目(13日)。その第1試合、第2試合をセイバーメトリクスの指標で振り返ってみます。

 使用している指標の説明は以下の通りとなっています。

OPS 出塁率+長打率 1を超えると優れている
wOBA 各プレーの得点価値を累積して算出した打撃指標
O-swing% ボールゾーンに来た球をスイングした割合
Z-swing% ストライクゾーンに来た球をスイングした割合
Swing% スイングした割合
O-contact% ボールゾーンに来た球をスイングした際にバットにボールが当たった割合
Z-contact% ストライクゾーンに来た球をスイングした際にバットにボールが当たった割合
Contact% スイングした際にバットにボールが当たった割合
Zone% ストライクゾーンを球が通過した割合
SwStr% 空振り率
WHIP 1イニングあたりに許したランナーの数
P/IP 1イニングあたりに投球した球の数
GB/FB フライに対するゴロの割合

履正社7-3津田学園

攻撃指標
履正社 打率.343  OPS.943   wOBA 0.436   
O-swing% 32.4%  Z-swing% 72.2%  Swing% 53.7%
O-contact% 50.0%  Z-contact% 86.0%  Contact% 75.9%  Zone% 53.7%  SwStr%  12.9%

津田学園 打率.273  OPS.609  wOBA.269
O-swing% 35.6%  Z-swing% 57.1%  Swing% 46.2%  O-contact% 65.4%  Z-contact% 95.0%  Contact% 83.3%
Zone% 49.0%  SwStr% 7.7%

履正社・清水大成投手の各指標
9回 打者数38 投球数143
WHIP 1.22  P/IP 15.89  GB/FB 0.93
ストレート60.1% スライダー35.7% 
Zone% 49.0% 空振り率 7.7%

津田学園の投手の各指標
前佑囲斗 3回1/3 打者数21 投球数76
WHIP 3.30  P/IP  22.80  GB/FB 1.40
ストレート51.4% スライダー31.1% カットボール8.1% ツーシーム8.1%  
Zone% 56.8%  空振り率 8.1%

降井隼斗 4回2/3 打者数20 投球数71 
WHIP 1.19  P/IP 16.90  GB/FB 1.75
ストレート32.4% スライダー59.2% チェンジアップ8.5%
Zone% 50.7%   空振り率18.3%

 履正社は本塁打こそなかったものの、12安打でOPS.943と、強打で序盤3回までに6点を奪いました。津田学園の前投手は配球の50%が高めへ。スライダーが浮き気味だったり、ストレートが抜け気味だったりと意図とは違いコントロールに苦しんだように見えました。

 その高めの球を的確に捉え大量得点につなげた履正社が初戦に続きまたも優位に試合を進める展開に持ち込みました。津田学園は6回に履正社の清水投手のコントロールが甘くなったところを3連打するなど、安打は放ちましたが、O-swing%35.6%とボール球に手を出す傾向も見受けられました。

 津田学園2番手の降井投手は全投球の60%の割合で投じたスライダーを主体に、WHIP1.19、3安打1失点と強打の履正社打線を抑えました。なおスライダーでの空振り率は21.4%、チェンジアップの空振り率は33.3%と変化球に威力がありました。

星稜・奥川は6回2死一、二塁のピンチで登板し、2回1/3を無失点

○星稜6-3立命館宇治

攻撃指標
星稜 打率.389  OPS.961  wOBA 0.426
O-swing% 24.4%  Z-swing% 68.2%  Swing% 42.9%  O-contact% 77.3%  Z-contact% 91.1%  Contact% 86.6%  Zone% 42.3%  SwStr% 5.3%

立命館宇治 打率.161 OPS.477 wOBA 0.242 
O-swing% 20.7%  Z-swing% 53.8%  Swing% 34.9%  O-contact% 55.5%  Z-contact% 82.9%  Contact% 73.6%  Zone% 42.8%  SwStr% 9.2%

星稜の投手の各指標
荻原吟哉 5回 打者数18 投球数77 
WHIP 0.80  P/IP 15.40  GB/FB 2.33
ストレート35.1% スライダー50.6% フォーク13.0%
Zone% 44.2% 空振り率13.0%

奥川恭伸 2回1/3 打者数10 投球数39 
WHIP 1.29 P/IP 16.71 GB/FB 5.00
ストレート66.7%  スライダー28.2% チェンジアップ5.1%
Zone% 46.2% 空振り率5.1%

立命館宇治・高木要投手の各指標
9回 打者数46 投球数170
WHIP 2.33 P/IP 18.89 GB/FB 1.00
ストレート51.2% スライダー35.9% チェンジアップ8.8%
Zone% 42.3%  空振り率5.3%

 星稜のOPSが.961となったのに対し、立命館宇治は.477と出塁力に大きな差が出ました。5回以外は、全イニングで走者を出した星稜が終始優位に試合を展開していました。

 2試合連続で先発完投となった立命館宇治の高木投手ですが、立ち上がりからチェンジアップなどのコントロールが定まらず、初回は1イニング3与四球という苦しいスタートとなりました。変化球でなかなか空振りが取れず、空振り率は5.3%。9回で14安打、7与四死球と星稜打線に大量の出塁を許す形となりました。

 星稜先発の荻原投手はスライダーが50%と変化球を中心とした組み立てで、立命館宇治打線をWHIP0.80、空振り率13%としっかり抑え先発としての役目を果たしました。6回裏2死一、二塁という苦しい場面から登板した奥川投手ですが、最初のバッターにヒットは打たれたものの、後続を153キロのストレートでゴロに仕留めピンチを切り抜けました。

 8回には自己最速を更新する154キロをマークしましたが、この日の奥川投手は空振り率5.1%と、空振りはそれほど取っていません。ゴロに仕留める投球術で、その後は7回、8回と2イニングを無失点で切り抜け、相手の反撃の芽を摘みました。鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ・ラジオ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。

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