やっぱり重いの? メーカー純正ホイール
ムカシからいわれていることだが、自動車メーカーの純正アルミホイールは重い。そしてそれは、大体において事実といえる。とはいっても、自動車メーカーが、アフターマーケットのスポーツホイールのように軽いものを作れないということではない。
自動車メーカーが、こぞって純正アルミホイールを純正採用するようになった1980年代からすでに30年以上。今や純正ホイールのデザインは、市販ホイールと変わらないくらい洗練されてきているし、新型スープラのように、スポーツホイール並みに軽い純正ホイールだって、いくつも送り出されている。
自動車史的な例をあげれば、R32型日産スカイラインGT-Rの純正16インチホイールは、当時最新の鍛造製で軽さと強さが評判だった。また、FD3S型こと二代目マツダRX-7の純正ホイールは、世界最軽量の16インチを誇っていた。つまり90年代には、1ピースホイールに限れば、市販ホイール以上に軽量な純正ホイールを作っていたのだ。
重さはやっぱりデメリットなの?!
ではなぜ、そこまで軽さとデザイン性を高められたのに、いまだに重いといわれるままなのか?
これもムカシは「軽いホイールを作るとコストがかかり、結果クルマの値段が高くなるから」などと言われたものだ。もちろん、その通りだとは思う。しかし、現在は少し事情が変わっていて、軽さや運動性よりも、乗り心地や快適性を自動車メーカー重視するようになった結果ともいわれている。つまり、軽いホイールは走りのすべての面で優れているわけではないということだ。
確かに軽いホイールは、速く走るにはメリットが大きい。同サイズのホイールならば、軽いほど回転の立ち上がりが速くなるから、発進加速は速くなる。同じように、軽いほど回転落ちも速いから、ブレーキへの負担も小さくなるという理屈だ。
また、軽いホイールほどサスペンションが速く動かせるから、路面への追従性が高くなり、ドライバーへのインフォメーションも増える。これもよくいわれていることだ。だから軽いホイールは、走り好きには欠かすことのできない高性能の代名詞なのだ。
ただし、これらのメリットは、ユーザーによってはデメリットになることもある。とくに、ドライバーへのインフォメーションがちょっと問題だ。
路面への追従性が高まり、インフォメーションが増えるということは、それだけ運転で細かな気遣いが増えるということでもある。軽いホイールほど、路面からの突き上げや、舗装のざらざら感など、重いホイールでは気にならない程度の情報が、ステアリングなどからしっかり伝わってくるようになるのだ。これがスプリントレースなら優れたマシンなのだが、一般道を長時間走るような場合では、気持ちと体を疲れさせるマイナス要素になってしまう。
乗り味も、安全マージンも考えての設定
だから、自動車メーカーは、必ずしも純正ホイールに軽さだけを求めてはいない。市販ホイール以上の安全のマージンも考えなければならないし、そのクルマのターゲットユーザーを意識して純正ホイールの仕様を決めているのだ。輸入車では、ホイールとタイヤ、サスペンションのトータルで、日本仕様の乗り味を決めているメーカーもあるくらいで、国産メーカーのそれも推して知るべし。その点からいっても、これから先も「純正ホイールは軽い」というお約束は、当分変わることはないだろう。
[筆者:永田 トモオ]