「ニューヨークの建物の音がする!」 ロン・マン監督作品『カーマイン・ストリート・ギター』公開記念トークショーに鈴木慶一と長門芳郎が登壇!

ニューヨークにあるギターショップのドキュメンタリー映画『カーマイン・ストリート・ギター』が全国で大ヒット公開していることを記念し、さる8月12日(月)に鈴木慶一(ミュージシャン / ムーンライダーズ)と長門芳郎(パイドパイパーハウス)が登壇するトークショーが行なわれた。

グリニッジ・ヴィレッジに位置する「カーマイン・ストリート・ギター」。世界中のギタリストを魅了する、この店だけの“ルール”。──それは、ニューヨークの建物の廃材を使ってギターを作ること。

チェルシー・ホテル、街で最古のバー・マクソリーズ…、それらは長年愛されてきた街のシンボル。工事の知らせを聞きつけるたびに現場からヴィンテージ廃材を持ち帰るリックは、傷も染みもそのままにギターへ形を変えるのだった。

ルー・リード、ボブ・ディラン、パティ・スミスら大御所が彼のギターを愛用し、人気ギタリストたちが次々と来店。さらには映画監督、ジム・ジャームッシュの姿も。足早に表情を変えゆくニューヨークと、変わらずにあり続けるギターショップの1週間を捉えたドキュメンタリーが、本作『カーマイン・ストリート・ギター』だ。

新宿シネマカリテで行なわれたトークショーは満員御礼。

上映後に鈴木慶一と長門芳郎が登壇すると、会場は大きな拍手で包まれ、トークショーはスタート。

開口一番、鈴木は「とても素晴らしい作品だった!」と絶賛。「本作の主人公リック・ケリーのように強いこだわりを持ってギターを作る人は知り合いに一人や二人いるけど、みんな彼に似たような職人が多い。そしてこういう人が作ったギターに惹かれてしまうんだよね」と語った。

本作の舞台となるニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジについて、長門は「ニューヨークは建物が大きくて圧倒される。けれど舞台となるグリニッジ・ヴィレッジはビルとかは少なくて、路地とかに味があって良い街ですよね」と語る。

それに対して鈴木も「そうそう! 雰囲気が良いんだよね。ここに60年代に活躍したバンド、ラヴィン・スプーンフルやフィフス・アベニューがいたと思うと、感慨深いなぁ」と昔を思い出し、懐かしそうな様子。

本作では、人気アーティストやギタリストが続々と「カーマイン・ストリート・ギター」へ訪れる。

劇中の気になったアーティストについて聞かれると、鈴木は「僕は知らなかったんだけど、エレノア・フリードバーガーという女性が、リックの弟子・シンディがトラヴェリング・ウィルベリーズのデザインを施したギターを弾いていて、歌声もとても良く…。あのギター、もう売れちゃったのかなぁ」と欲しそうにため息をつき、さらに「すっかりシンディのファンになってしまって、彼女のツイッターもインスタグラムもフォローしちゃいました」と茶目っ気たっぷりに明かすと、会場からは笑いが。長門さんも「フォローするのが早いですね!」と驚きの表情。

リックは現代では珍しく携帯もパソコンも使わないことについても「僕の周りにも何人かいますけど、同年代だからこそ『分かる!』という要素がたくさんあって、そういう部分も楽しめる」と長門も国境を越えた世代あるあるを披露。

鈴木は「リックとシンディの師弟関係を超えた、家族のような関係性もとても良いよね。孫娘のようにシンディを可愛がっているリックの気持ちが分かります。リックのSNSもシンディが更新してあげていて、お互い支え合っているんですよ!」と調べすぎてシンディにべた惚れの鈴木に会場も大盛り上がり。

そしてなんと、当日会場にはリックが実際に作ったギターが持ち込まれ、鈴木が弾くというサプライズが。

持った瞬間、「重いね! そしてネックが聞いていたとおり太い! これは腰が痛くなっちゃうよ」と笑いを取りつつ試奏。

弾いてみるなり鈴木は、「驚いた。完全にソリッドギターなんだけど、木が響くんです。ニューヨークの建物の音がする。とても良い音!」と満足げ。

長門は「このギターはチェルシーホテルの廃材から出来ているんですよね。本作のテーマとなっていますけど、ニューヨークの建物の廃材からというのもとても面白い」とリックのギターに興味津々。続けて「ほぼ同年代ですが、こういうお店がずっと続いてくれたら本当に嬉しい。自分も頑張ろうと思います」と長きに渡ってファンに支持されるレコード店主としての顔を覗かせた。

興奮気味の鈴木は「そうだよね。今日、リックのギターを弾けて本当に幸せな気持ちです。とても満足です」とギターを最後まで離さず、弾きながらマスコミのフォトセッションに応じた。

昔話に花も咲き、音楽好きの観客もお腹いっぱいの贅沢なトークショーと相成った。

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