出かけてみると面白い、株主総会は会社を知る良いチャンス

ここ数回は、株式や株式市場の見方についてお話ししてきましたが、今回は一足飛びに株主になったつもりで、株主総会について見てみましょう。

株式に投資すると株主になり、株主総会に出席することができます。6月は株主総会が数多く開かれることもあり、ニュースで耳にした人も多かったのではないでしょうか。


株主総会に出席できるのは…

株主総会に出席することができるのは、「単元株数」保有している株主で、そのような株主は株主総会における「議決権」を持っています。「単元株数」というのは、実際には100株のことです。株式を取引する時の最低単位を意味します。ですから、たとえば株価が1200円であれば、その株に投資するために最低1200×100=12万円必要になります。

単元株数は本来何株と決まってはいなくて、以前は千株であったり一株であったり、バラバラだったのですが、最近統一されて分かりやすくなりました。

株主総会は、株主が会社の重要な意思決定を行う機関で、事業年度が終わって3カ月以内に開催されます。日本の上場企業はその6割以上が3月決算なので、6月は株主総会ラッシュです。

議決権を持つ株主は、賛否を投票で示すことで議決に参加するわけです。株主総会に出席する場合は、送られてくる「議決権行使書」を持って会場に出かけ、出席しない場合は、議決権行使書に賛否を記して郵送します。インターネットを通じて投票することもできます。

株主総会で重要な議決が行われる、などと聞くと、敷居が高く感じられるかもしれませんが、現実にはほとんどの場合、株主総会の当日までに、郵送による投票などですでに結果は出ています。

株主総会の場は、「議決」という意味では、形式的なことが多いのです。ですから、株式に投資して手元に「議決権行使書」が送られてきたら、ぜひ気を楽にして、株主総会に出かけてみてください。そこで株主気分を存分に味わってください。

行ってがっかりな株主総会もある

さて、株主総会では何が行われているのでしょうか。たった今、ぜひ出かけてみてください、とは言ったものの、実は株主総会の充実度は、会社によってかなり差があります。大いに満足して帰って来る場合もあれば、行って損した、というレベルのものもあるのです。

行って損したと思うような総会を再現してみましょう。

開会宣言のあと、事業報告が始まります。議決権行使書とともに送付される「招集通知」に、事業報告の内容が載っていて、これに沿って報告がなされるのですが、必要最低限で済まそうという会社であれば、議長による棒読みです。文章の部分が終わると、「あとはお手元の招集通知をご覧ください」ということになります。

続いて質疑応答に移ります。株主はここで、報告された内容について、そのほか事業に関わることについて質問することができます。質問がいくつかでも出ればいいのですが、出ない場合もあります。事業内容が地味で、報告が棒読みだったりすると、往々にして質問ゼロ、という事態が起こります。

その後、議案の提示がなされます。多くの場合は配当金額の承認、そして新年度に役職に就く取締役や監査役の承認などです。「招集通知」に載っている通りに金額や取締役候補者名が読み上げられ、そのまま採決となります。採決と言っても、挙手して数えるわけではなく、賛同の拍手を送るのです。

これでおしまいです。たいていそのあと、新任の取締役の紹介などがありますが、こういう株主総会ですと、30分もあれば終わります。せっかく足を運んでこれだと、はっきり言ってがっかりですね。せめて自分でも一つぐらい質問を準備して来るんだった、と後悔しても後の祭り。

熱く盛り上がる株主総会も

今度は満足度の高い株主総会をのぞいてみましょう。個人の好みもあるでしょうが、ここは私の独断で参ります。

まず、事業報告は予め準備されたビデオで、多くの映像や図表を交えて見せてくれます。各部門別に、事業の成果と事業環境が示され、今後の見通しも示されます。ビデオのあとで社長自ら、中期・長期にわたる事業計画が語られます。

そして盛り上がる総会の真骨頂は、株主との質疑応答です。

投資の参考になる質問ばかりとは限りませんが、私の思いもしない視点からの質問であったり、会社に対する熱い思いが現れていたり、ともかく活発に質問が出る総会は面白いし、色々考えさせられることもあります。

参加者の年齢層は、やはりある程度若い方が活気があります。会社のことを知ろうという意欲がより旺盛だからでしょう。本来働いているであろう時間を割いて足を運ぶわけですからね。

私が気に入っている株主総会の一つに、ゲームやアニメキャラクターの会社がありますが、総会での質問は総じてオタクっぽく、その手のことに疎い私には全く意味が分からない質問も多々あります。

ただ、とにかく株主の参加意識が強く、熱気にあふれているのです。質問の善し悪しはともかく、聴いていて気持ちのいいものです。

質疑応答も多ければいいというものではなく、総会全体は2時間ぐらいに収まるのが理想的。長すぎるのはやはり疲れます。質疑を適当なところで切り上げ、議案の採決となります。

さらりと終わらせる会社が多い中、このゲーム会社は各取締役がひと言ずつ抱負を述べ、それに対する質疑がまた交わされます。形式的とはいえ、そこに並ぶ取締役の候補者を承認する場なのですから、こうして各候補者の話を聞けるのは、とても良いと思います。

株主総会は会社を理解する良い機会

総会が終わると、会場の外で商品の展示を見て回ります。展示スペースを設けている会社は多いようですね。事業の内容や商品について、その場に控えている社員に根掘り葉掘り質問でき、会社の理解にとても役立ちます。

最初に書いたように、重要なことを議決する機関ということにはなっていますが、実質的には会社のことを理解する良い機会となっています。どの会社も、行ってよかったと思える株主総会にしてくれると嬉しいですね。

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