進次郎・滝クリだけじゃない、「令和婚」が示す日本の景気動向

自民党の小泉進次郎・衆院議員とフリーアナウンサーの滝川クリステルさんの結婚をはじめ、「令和婚」が多く報道されています。厚生労働省の統計では令和婚の動向はまだ5月分しか確認できませんが、前年同月比はほぼ倍増です。令和婚を挙げたカップルが多かったことがわかります。

新元号・令和を含む最初の四半期である2019年4~6月期実質GDP(国内総生産)成長率の第1次速報値は前期比年率+1.8%と、3四半期連続のプラス成長になりました。牽引したのが個人消費と設備投資です。実質個人消費では、10連休での旅行需要のほかに、令和婚に絡んだ需要などが出たものと思われます。

このように、改元は人々の生活面に大きな影響を及ぼす出来事だといえそうです。データで詳しく確認してみたいと思います。


消費は2倍の伸び率に

現在のGDP統計は1980年までさかのぼれます。1981年から2019年までの1~3月期の前期比を高い順に並べると、第1位は平成に改元された1989年、第2位はミレニアムの2000年に当たります。

どちらも個人消費、設備投資がしっかりした伸び率になっています。時代の変わり目には個人消費と設備投資が伸びる傾向にあるようです。

2019年4~6月期実質GDP成長率の第1次速報値は前期比+0.4%、前期比年率+1.8%と、3四半期連続の増加になりました。内需は前期比寄与度+0.7%です。令和という新しい時代を迎えたこの四半期でも、内需の柱である個人消費と設備投資が堅調に増加するという内容になりました。

1980年以降2019年までの4~6月期の実質個人消費・前期比の平均は+0.3%、実質設備投資の平均は+0.5%ですが、2019年の4~6月期の実質個人消費・前期比は+0.6%と2倍の伸び率に、実質設備投資は+1.5%で3倍の伸び率になりました。

実質個人消費では10連休での旅行需要や令和婚に絡んだ需要などが出たもの、実質設備投資では改元や消費税引き上げ対応のソフトウエア投資などが出ているものと思われます。

改元は人々の景況感をどう変えたか

平成から令和への改元は景況感のプラスに寄与したようです。内閣府がまとめた「景気ウォッチャー調査」で改元関連DIを作成すると、2019年1月から4月までの先行き判断DIは景気判断の分岐点の50を大きく上回る60前後で推移しました。

4月の先行き判断で「改元」について触れたのは1,805人中111人。内訳は「良くなる」2人、「やや良くなる」53人、「変わらない」43人、「やや悪くなる」9人、「悪くなる」4人でした。

「良くなる」に1点、「やや良くなる」に0.75点、「変わらない」に0.5点、「やや悪くなる」に0.25点、「悪くなる」に0点を与え加重平均して「改元・関連先行き判断DI」を作成すると59.0になり、良くなる方向の景気判断につながったことがわかります。

また、改元前後の4月調査と5月調査の現状判断DIは58.2、55.2と、こちらも50を上回りました。5月の現状判断で「改元」について触れたのは1,850人中43人。内訳は「良くなっている」3人、「やや良くなっている」12人、「変わらない」19人、「やや悪くなっている」9人、「悪くなっている」0人でした。

加重平均して「改元・関連現状判断DI」を作成すると55.2になり、良くなっている方向の景気判断に結びついたことがわかります。これらの数字から、改元は総じて人々の景況感を高めたといえます。

<写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ>

令和前の手控え分も一気に挽回

令和婚で世の中の注目を浴びたケースを挙げると、女優の蒼井優さんとお笑いコンビ南海キャンディーズの山里亮太さんの結婚が6月5日に明らかになり、同日夜に記者会見が行われました。

政治家では、小泉進次郎議員と滝川クリステルさんが8月8日に婚姻届を神奈川県横須賀市役所に提出(代理人として秘書が提出)。2人は婚姻届提出の前日に首相官邸を訪れ、安倍晋三首相と菅義偉官房長官に結婚を報告した後に、記者団の前で発表しました。

同じ8月8日には、俳優の速水もこみちさんと平山あやさんも入籍し、話題になりました。

日本人の婚姻件数は、1972年の110.0万件をピークに、2017年の60.7万件まで減少傾向にあります。2018年は速報段階(日本における日本人、日本における外国人、外国における日本人および前年以前に発生した事象を含む)で60.3万件でした。

しかし、減少傾向の中でも前年比で大きく伸びた年があります。それは、天皇・皇后両陛下御成婚の1993年の前年比+5.1%と、ミレニアムの2000年の前年比+4.7%です。時代の変わり目は婚姻件数の増加につながりやすいようです。

離婚は平成の間にスッキリと?

厚労省「人口動態統計速報」によると、令和元年5月の婚姻件数(実数)は9万3,128件で、前年同月より4万5,675件も増えました。前年同月比は+96.3%と、ほぼ倍増です。いわゆる令和婚を挙げたカップルが多かったことがわかります。

1~4月の実数の累計の前年同期比は▲14.4%と2ケタのマイナスで婚姻届を出すのを控えた様子でしたが、5月分の大幅増加を加えると、1~5月分累計の前年同期比は+6.1%と増加に転じました。

なお、4月分の離婚件数(実数)は2万1,061件で、前年同月比+19.7%と2ケタ増加でしたが、5月分は1万6,698件で同▲6.9%の減少になりました。どうやら、平成のうちに離婚を済ませ、スッキリして新しい令和の時代を迎えようとした人が多かったようです。

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