本日8月14日は岡村靖幸の誕生日~岡村ちゃんはカルアミルクを飲むと今でも甘酸っぱい気持ちになるのだろうか

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8月14日は、シンガー・ソングライター岡村靖幸の誕生日。1986年のデビュー以来、ファンクを基調とする鮮烈なサウンドと独創的な言語感覚が炸裂するリリック、そして独自のブッ飛んだ美意識が貫かれたヴィジュアルで、今もなお熱狂的な支持を集める彼は、2010年代に入り完全復活。今年も1月には通算31作目となるシングル「少年サタデー」を発表。春には全国15ヵ所16公演を回るツアー『セレブリティ』を成功させたばかりだ。

筆者もこの『セレブリティ』ツアーの東京公演を目撃することができたが、完全復活以来何度か観た彼のライヴの中でも最高といえる内容。2010年代以降のライヴで歌い続けてきたいわゆる「新しい曲」と、彼のヒストリーを華々しく彩ってきた「名曲たち」が遜色なく溶け合い、オーディエンスを盛り上げていく。岡村靖幸は、まさに今、アーティストとしての成熟期を迎えつつある。

そんな岡村靖幸は、1965年8月14日に兵庫県神戸市で生まれた。19歳の時、まずは作曲家として本格的な音楽活動を開始。渡辺美里、吉川晃司、鈴木雅之らに楽曲を提供してきた岡村だが、自身もソロ・シンガーとしてデビューすることになったきっかけは、渡辺美里の楽曲にコーラスとして参加した際に、レコーディング・スタジオで踊りまくっていた姿がプロデューサーの目に留まったから、というのは有名な話だ。

1986年12月1日、シングル「Out of Blue」でデビュー。以降、『yellow』『DATE』『靖幸』と傑作アルバムを生み出してきた彼が1990年11月にリリースしたのが、多くのリスナーが最高傑作と称賛する4thアルバム『家庭教師』だった。「どぉなっちゃってんだよ」「家庭教師」「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」「祈りの季節」……などなど、手のつけられない熱量を発しながら、「聖」と「生」と「性」そして「青春」がドロドロに溶け合っていく。その濃密なアルバムの中である意味で異彩を放っていたのが、2曲目に収録された「カルアミルク」だ。のちにクラムボンやBank Band、土岐麻子、DAOKOなどにもカヴァーされたこの曲は、時代を超えて幅広いリスナーに愛される楽曲となった。

あの頃の僕はカルアミルク飲んで赤くなっていた。今なら、仲間とバーボンソーダも飲めるけれど、あんまり美味しいと思えない。もう一度、君とカルアミルクを飲んで仲直りしたい──と、かつての彼女(もしくはそれ未満の関係?)との切ない思い出を、甘いお酒になぞらえて歌った、岡村靖幸の作品群の中でも珍しくストレートな失恋ソングといえるものだ。その歌詞には「ファミコン」「ディスコ」「レンタルビデオ」など、その当時の世相を反映するようなワードが頻出するのだが、今聴いても古臭さを感じさせないどころか、ポップ・ミュージックとしての普遍性や煌めきがいつまでも失われていないのが、この曲の魅力であり、岡村靖幸というソングライターの類稀なる才なのであろう。

ところで、この曲の中では、「彼女」が「僕」に「誕生日にカルアミルクをくれた」と歌っているのだが、この誕生日とは岡村ちゃん自身の誕生日のことなのだろうか? だとしたら、岡村ちゃんはカルアミルクを飲むと今でも甘酸っぱい気持ちになるのだろうか──今では仲間と焼酎ハイボールを美味しく飲み干してる僕だが、たまーにカルアミルクを飲んだ時に、そんなことを思い巡らしたりするのだ。

岡村靖幸「Out of Blue」『家庭教師』写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト
ソニーミュージック 岡村靖幸公式サイトはこちら>
http://www.sonymusic.co.jp/artist/YasuyukiOkamura/

【著者】宮内健(みやうち・たけし)ライター/編集者。音楽誌『bounce』『ramblin’』編集長や、東京スカパラダイスオーケストラ、EGO-WRAPPIN’の書籍編集を歴任。現在は音楽コラムサイト「TAP the POP」の編集/執筆、食の雑誌『dancyu』の編集などを担当している。