ロッテの勝利呼んだ東條&松永の「一人一殺」継投 その裏にあった吉井コーチの思い

ロッテ・吉井理人コーチ【写真:岩国誠】

同点の7回に東條→松永の継投で無失点、7月30日にも同じような継投を見せたが…

■ロッテ 6-1 日本ハム(13日・東京ドーム)

 13日の日本ハム戦は最終回に一挙5得点を挙げ、6-1と逆転勝利を収めたロッテ。その布石の一つに、7回1死一、二塁で見せた「一人一殺」の継投があった。

 4連敗だったロッテは、ショートスターターからの小刻みな継投を繰り出す日本ハムに対し、7回にようやく1点を返し、同点に追いつく。しかし、直後に粘投を続けていた石川が1死一、二塁のピンチを招いた。

 6月9日以来、久々の先発登板となった石川について、井口監督は試合前に「5回くらいまで」と語っていたが、予定を大きく超える6回1/3。さらに「当初は70~80球」(井口監督)だったはずの球数は102球に達しており、先発としての役割を十分に果たしての降板となった。

「調子のいい投手から使う」と井口監督が2番手に指名したのは東條。この試合で2安打を放っている2番・大田との対戦は、外角低めへのスライダーを中心とした配球でカウント2-2と追い込むと、1球ファールを挟んだ6球目、少し内側に入った低めのスライダーを引っ掛けさせて三ゴロ。併殺とはならなかったが、二塁でアウト1つを取り、左の近藤に対しては左投手の松永をぶつけて、このピンチを無失点で乗り切った。

 もともと「回の頭から投げた方が、リリーフピッチャーも投げやすい」という吉井理人投手コーチの考えもあって、イニング内での小刻みな継投をほとんど見せてこなかったロッテ。この日は「一人一殺」の継投が成功し、勝利に結びつけたわけだが、7月30日のオリックス戦でも同じような継投を披露している。

 2-1と1点リードの7回。1死一、二塁のピンチで2番手・松永が左打席に立つ4番・モヤを見逃し三振に切って取り2アウト。右の5番・ロメロに対しては東條をマウンドへ送った。その東條がスライダー2球を振らせて、簡単に2ストライクを取ったものの、その後4球続けた外角低めへのスライダーを全て見切られ、四球で満塁に。代打・宗に押し出し死球を与え、1点を失った。

「失点したからダメとしてしまうと、誰もいなくなってしまう」

 状況は少し違うものの、この日も30日の試合同様、左には松永、右には東條の「一人一殺」継投。30日には抑え込めなかったが、今回は結果を出した東條について、吉井コーチは「まだまだですけど」と前置きした上で「前回の反省が生きていると思います。ただ、苦し紛れに投じたボールを、相手が打ち損じてのサードゴロ。今回はラッキーな面もあったが、あそこでストライクゾーンで勝負に行ける度胸がついてきたというのは、成長だと思います」と一定の評価。ただ、「本当であれば(あの場面で)空振り三振を取れるくらいの投手になってほしい。まだ修行中です」と期待は大きかった。

 その東條の後を受けたのは左の松永。最近2試合でいずれも失点を喫していたが「野球は相手のあるスポーツ。失点したからダメとしてしまうと(投げる投手が)誰もいなくなってしまう。彼の実績を考えれば、こちらは何の心配もなく出しています」と吉井コーチも全幅の信頼を寄せる左腕だ。この日は巧打を誇る左打者、3番・近藤から見逃し三振を奪い、きっちり火消しをして見せた。

「一人一殺」をしっかりやりとげた2投手について、井口監督も「ああいうところ、7、8回でやられるケースが最近ずっと続いていたので、東條、松永がしっかり押さえてくれたのは大きかった」と勝因の一つに挙げた。

 現在、守護神・益田以外は勝ちパターンを固定できていないロッテリリーフ陣。多くの失敗がある中で「ダメでも使っていかないと、成長はない」と様々な状況で投手起用を続ける吉井投手コーチの思いが、一つの実を結び、連敗を止めた大きな1勝をもたらしたと言えるのかもしれない。(岩国誠 / Makoto Iwakuni)

© 株式会社Creative2