『メランコリック』皆川暢二、イケメンな素顔に注目

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主演・プロデューサーの皆川暢二

 現在、口コミで話題になっている映画『メランコリック』で、人殺しに加担してしまう気弱な銭湯従業員・鍋岡和彦を好演した俳優の皆川暢二(みながわようじ・31)。その素顔は、野球に青春を注ぎ、一時期、体育教師を目指していただけあって、考え方も、行動力も、風貌も、主人公・和彦とは180度異なる体育会系の好青年だ。「待っていても仕事は来ない」という持論のもと、企画の立ち上げから資金集め、ロケハン、宣伝、街中でのチラシ配りまで、プロデューサーとしても身を粉にして奔走した皆川の“人間力”に迫る。

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劇中では気弱でさえない男を好演

 本作は、第31回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門監督賞などを獲得した田中征爾監督の長編デビュー作。名門大学を卒業しながら、ニート生活を送る和彦(皆川)は、高校時代の同級生・副島百合(吉田芽吹)に勧められ銭湯でアルバイトを始める。だが、一見平和そうに見えるその銭湯は、閉店後の深夜、“人を殺す場所”として貸し出され、同僚の松本(磯崎義知)も実は殺し屋だった。

 引きこもりがちな主人公・和彦とは対照的に、皆川は実に明るくフレンドリーで、笑顔が絶えない。それだけに、演技にはかなり苦労したと述懐する。「正直、今までこういう役をやったことがなかったので、とにかく振り切りたかった。普段はしないメガネを日常的にかけて、髪もあえて整えたりせず、うつむき加減でトボトボ歩いてみたり。動きのなかから和彦の内面をつくり上げていった感じですね」。

体育教師を目指した大学時代

 さかのぼること、体育教師を目指していた大学3年生のとき、皆川は社会勉強のつもりでエキストラのアルバイトに応募する。だが、これが人生の大きな分岐点となる。「松田翔太さん主演の映画『イキガミ』をはじめ、さまざまな作品に出演しているうちに、第一線で活躍する役者さん、スタッフさんの姿がものすごく輝いて見えて……」。すっかり芝居の虜になった皆川は、4年生のときに養成所(ワタナベエンターテイメントカレッジ)の門を叩き、当時、講師だった演出家に誘われ、演劇の世界に足を踏み入れる。

 それから約3年間、さまざまな小劇場で演出助手や俳優として活動するが、次第に日々のルーティンワークに対する息苦しさを感じ、さらに「役者とはこうあるべきだ」という固定観念にも疑問を持ち始めた皆川。自身をもう一度見つめ直すために、ワーキングホリデーを使ってカナダへ旅立ち、自転車でアメリカ横断を試みるなど、武者修行の日々を送ることに。そして、さまざまなチャレンジを通して一つの答えを導き出す。

 「この旅を通して、自分で何かを決断し、最後までやり通すことの喜びを心から実感しました。自分の直感を信じ、やると決めたら、それをイメージして突き進むこと、これができるようになった」と力説する皆川。「僕も以前はそうでしたが、役者仲間で飲みに行くと『なんで俺を使ってくれないんだ』とか、人まかせの愚痴が多くなる。それがすごく情けなくて。だったら自分たちで立ち上げるしかないと思い、小劇場時代に知り合った田中くん、そして映画の共演で知り合った磯崎くんに声をかけ、映画製作ユニット『One Goose』を結成しました」と振り返る。

完成前から「劇場公開してみせる」と宣言

 映画『メランコリック』は、まさにその夢と情熱の結晶。製作費300万円という低予算の自主制作映画ではあるが、皆川はあくまでも強気だった。「自主制作映画だから『完成して満足』じゃ、役者もスタッフも士気が上がらない。だから僕は、作品が完成する前から『必ず劇場公開してみせる!』と断言しました。今から考えれば無謀ですが、そのくらい負荷をかけないと、気合いも入らなかった」と笑顔を見せる。

 そして今月3日、その思いが成就し、晴れて劇場公開。映画も高評価を博し、大盛況となっている。自身も俳優として新作『シャドウ(仮)』(谷健二監督)への出演が決まるなど、まさに追い風が吹く中、「できるだけ多くの方に観ていただきたい」といまだに街中でチラシ配りに汗を流している皆川。「初心を忘れることなく、今後もこれまでと変わらず、新しいものにどんどんチャレンジしていきたい」と語るその目には、一点の曇りもなかった。(取材・文:坂田正樹)

映画『メランコリック』はアップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺、イオンシネマ港北ニュータウンほか全国順次公開中