有意義な北方四島訪問期待 根室で結団式、県民20人参加

大野団長があいさつした結団式=北海道根室市

 県民20人が参加する北方四島交流訪問団は14日、北海道根室市で結団式を行った。15日から国後島と色丹島を巡る。元島民の数が北海道に次いで多い富山県。安倍政権は北方領土問題の解決に力を入れるものの展望は見えず、団員の島民2世らは、訪問を契機に富山をはじめ各地で返還運動が盛り上っていくことに期待する。

 四島への訪問は、北方領土返還要求運動富山県民会議(会長・中川忠昭県議会議長)が実施主体となる。県民会議が主体になるのは3度目で、背景には富山と北方領土との関わりの深さがある。

 県内では明治時代、不漁や災害で困窮した多数の漁民が、漁場を求めて歯舞群島や色丹島に渡った。忍耐強くよく働いた県民は「越中衆」と呼ばれ、コンブ漁の発展に貢献した。

 終戦後に県内に引き揚げた元島民は1425人と北海道に次いで2番目に多く、2019年3月現在でも478人に上る。返還運動も早期に始まり、1958年には元島民の団体「千島歯舞諸島居住者連盟」の富山支部が設立された。本州にある支部は富山支部と関東支部だけだ。

 今回の訪問には、県内から若手経営者らも参加する。副団長で元島民2世の濱松禎高さん(62)=黒部市生地=は「返還交渉がなかなか進まない中で、交流は大事な取り組みだ。訪問を機に、若い人にも返還運動や現地のことを知ってもらいたい」と話している。(政治部・吉崎美喜)

■運動拡大へ体験発信を 結団式  結団式には団員64人が参加し、北方領土問題対策協会の古矢一郎専務理事が「現地で見たことや聞いたことを発信し、返還運動の輪を広げてもらいたい」と呼び掛けた。

 石垣雅敏根室市長はあいさつで、5月のビザなし交流の際、戦争で領土を取り返すことの是非に言及した丸山穂高衆院議員について「一部の国会議員の方に思いが届かなかったのは残念」と述べた。

 訪問団は全国の返還運動関係者や国会議員、大学教授らでつくり、県内からは元島民2世や獅子舞保存会員らが参加する。

 訪問は旅券(パスポート)を持たないビザなし交流で、15日に根室市の根室港を船で出発。16、17日に国後島、18日に色丹島を訪れる。住民との交流会などを行い、19日に根室に戻る。

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