【管理栄養士から学ぶ山ごはん#3】“熱中症”にならないためのアレンジレシピ 夏の登山で特に気を付けないといけないトラブルの一つが「熱中症」。想像以上に大量の汗をかき、気付くとふらふらする、なんてことはないでしょうか。もちろん水分や塩分を摂取することが一番大事ですが、食事でもちょっと気を付ける事で、熱中症対策をする事ができます。管理栄養士のshihoさんが提案する栄養レシピの第3弾、今回はそんな熱中症対策のためのアレンジレシピを紹介します。

夏は特に気を付けたい「熱中症」

全国的に夏本番の陽気になってきましたが、夏の登山で怖いトラブルの一つと言えば“熱中症”

私たちの体は登山などの運動で大量のエネルギーが産生された場合、汗を蒸発させ気化熱によって体温を下げたり、皮下の血管を拡張させ、外気温で血液を冷やしたりするなどの方法で体温を一定に保とうとしています。

しかし暑熱環境がこれを上回り、体温調節機能が乱れたり、体内の水分量・塩分量のバランスが崩れたりすると、熱中症を発症します。

ほんとに怖い熱中症。甘く見ないで!

熱中症の初期症状でもある、めまいや立ちくらみ、軽いこむら返りを「まだ大丈夫でしょ」と甘くみると本当に危険!重度になると、全身の痙攣、意識障害や錯乱、昏睡など危険な症状になる場合も。

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汗によって最も失われやすいもの

言うまでもないことかもしれませんが、汗によって最も失われやすいのは「水」です。
熱中症の初期症状でもある「めまい」や「立ちくらみ」は、脱水によって脳への血流が低下することで起こります。
しかし、熱中症を予防するためにこまめに水分補給することは大切ですが、必要なのは水だけではありません。

汗の99%は水分で、残りの1%にはナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムといったミネラルが含まれています。そのため水だけでなく、ミネラルも一緒に摂取してあげる事が大切です。

ナトリウム(塩分)

汗によって特に失われやすいミネラルがナトリウムです。このナトリウムを含む「塩分」をしっかり摂ることは、登山においてとっても大切です。

熱中症の症状の一つである「こむら返り」は体内の塩分濃度が下がることで起こる筋肉の痙攣です。
水をたくさん飲んでいても、塩分を一緒に摂取しないと体内の塩分濃度は下がってしまうため、その都度水と一緒に補ってあげなければいけません。

その他のミネラル

水分と塩分の補給に加え、一緒にとりたい栄養素として、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのミネラルがあります。ミネラルが足りないと、体に十分な水分を保持できなくなってしまうため、熱中症予防には適切なミネラル補給も重要です。

熱中症にならないためには、日頃の生活習慣や登山中のこまめな水分補給が一番大事!しかしそれだけではなく、食事でも気を付けることができるんです。今回は、美味しく水分補給しながら熱中症予防できるレシピをご紹介します。

アレンジレシピ①:オニオングラタンスープ

汗をかくと自然と少し濃いめの味付けのものを欲しませんか?始めに紹介するのは、しっかりとした味付けで塩分や水分もきちんと補える”オニオングラタンスープ”。
お湯さえあればたった3分で完成するため、バーナーを持っていかずに水筒にお湯を持っていくだけで作れるのもポイントです。

材料

(材料2人分)
お湯 1カップ
A(ジップ付き袋に一緒に入れておくと便利です)
顆粒コンソメ 小さじ1
フライドオニオン 大さじ4
塩 適量
こしょう 適量
パルメザンチーズ 大さじ1

フランスパン(7~8ミリ厚さのスライス) 2枚
乾燥パセリ 少々

作り方

①カップ等にAを入れ、お湯を注ぎながらかき混ぜる。

②フランスパンを浸して、パセリを振る。

炒め玉ねぎのコクをフライドオニオンで再現しており、簡単でも満足感のある仕上がり。
山でお湯を沸かす場合も、シェラカップや鍋などでお湯を沸かしたあと上記の作り方と同様に調理してください。

shiho

フランスパンはトーストしてから持って行くとスープをよく吸うのでおすすめです!

アレンジレシピ②:サバ缶で作る冷や汁

次は、必要な栄養素が補えて、暑い夏でもさらっと食べられる“冷や汁”を紹介します。
日本各地の郷土料理でもある冷や汁は、本来焼いた魚や味噌をすったものに、冷たいだし汁をかけて作ります。今回は山ごはん向けに、火も特別な道具も使わずに作れるレシピに!
さっぱりとしているので、「山ではいつも疲れて食欲が落ちてしまう…」という方にもおすすめです。

材料

(材料2人分)
サバ缶 1缶
豆腐 小1パック(150g)
きゅうり 小1本
ミニトマト 4個
みょうが 1個
大葉 4枚
冷水 150ml
液体みそ(だし入り) 大さじ2
すりごま 大さじ1

下準備

・きゅうりは薄くスライスしてから塩(分量外)で揉んで、水気を切っておく。
・みょうが・大葉は千切りにしておく。
・ミニトマトは4等分にする。
・水は冷凍庫であらかじめ凍らせておき、飲むときに冷たい状態で調理出来るように解凍する。

作り方

①ボール等にサバ缶をすべて空け、ほぐしたら液体みそ(だし入り)・すりごま・冷水を加え、混ぜ合わせる。

②豆腐を崩しながら入れ、ミニトマト・きゅうりも加えたら器に盛り付け、みょうが・大葉を上に添える。

バランスよく栄養を摂取できるので、登山にぴったり。缶詰を使うので、調理も簡単で美味しい!

shiho

コンビニの塩むすびと一緒に混ぜながら食べるのがお勧め。
出来れば主食を一緒に摂取して、エネルギーが不足しないようにしましょう。

アレンジレシピ③:ソルティはちみつレモン

スポーツで”レモンのはちみつ漬け”を食べることがある人、多いのではないでしょうか?
実はこれは理にかなっていて、はちみつに含まれる糖質とレモンに含まれるクエン酸はどちらとも疲労回復に一役買ってくれる栄養素なんです。

最後は、このレモンのはちみつ漬けに、汗で失われやすい「塩分」を補ったドリンクを紹介。夏の暑さも怖くない!?美味しくてちょっとおしゃれなドリンクです。

材料

材料(1人分)
レモン 1個
はちみつ 適量
冷水 100ml
塩 適量

ミント 適宜
*レモンとはちみつは作りやすい分量で表記しています。

下準備

・レモンのはちみつ漬けを作る。(清潔な容器に薄く輪切りにスライスしたレモンを入れ、はちみつをひたひたになるくらいまで注ぎ入れ、冷蔵庫で一晩寝かせる)
・水は冷凍庫であらかじめ凍らせておき、飲むときに冷たい状態で飲めるように解凍する。

作り方

①コップを軽く水で濡らし、平らな皿に塩を広げたら飲み口を下にしてふちにまんべんなく塩を付ける。

②コップに冷水・レモン1~2枚・はちみつ漬けの汁大さじ2を入れて混ぜ、あればミントを添える。

はちみつ漬けの汁はお好みの甘さで増減してください。
水を炭酸水に変えても美味しいですが、その場合破裂の恐れがあるため、冷凍は出来ません。

shiho

定番のはちみつレモンですが、そこに塩分をプラスしたパーフェクトドリンク!
歩きながら飲みたい人は、最初から塩を混ぜてしてしまってもOK。

アレンジレシピで熱中症対策!簡単&美味しい山ごはんで楽しい山行を

今回は、火や特別な調理道具を使わず、簡単に作れるレシピを中心に紹介しました。
熱中症予防としては、登山中の食事に加え、登山前後にもしっかり食べる事がポイント。簡単なものでもきちんと食事を食べることで、必要な栄養を蓄えておくことが出来るので欠食しないことも大切です。しっかりとした熱中症対策で、楽しい山行を!

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