海外生活で日本の年金は未払い、リタイア後帰国したらいくら必要?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、長年海外で暮らし日本の年金は払ってこなかったというアラフォーの共働き夫婦。充分な資産を保有していますが、セミリタイアして日本に戻ったときにいくら必要になるのか知りたいといいます。FPの飯田道子氏がお答えします。

長年海外で生活し、夫婦ともに金融機関に勤務しています。私(夫)が55歳になったら夫婦そろって日本に戻り、中古住宅を買ってセミリタイアしたいと考えています。それまでにいくら用意すれば安心でしょうか。日本の年金は支払っていないため受け取れませんが、海外で支払っている年金があります。夫婦それぞれ62歳以降、日本円にして月12万円ほど受け取れる予定です。現在住んでいる海外のマンションは、7年前に3800万円ほどで買いましたが、現時点で売れば5000万円程になる見込みです。また、今のところ親の介護の必要はありませんが、今後もし妻の母(現在71歳)に介護が必要になった場合は、同居しようと考えています。

〈相談者プロフィール〉
・男性、41歳、既婚(妻:39歳、会社員)、子供なし
・職業:会社員
・居住形態:持ち家(マンション)
・毎月の世帯の手取り金額:190万円
(夫:105万円、妻:85万円)
・年間の手取りボーナス額:100万円
・毎月の世帯の支出目安:約95万円

【資産状況】
・毎月の貯蓄額:90万円
・現在の貯蓄総額:3800万円
・現在の投資総額:1100万円
・現在の負債総額:2200万円

【支出の内訳】
・住居費:16.5万円
・食費:12万円
・水道光熱費:0.8万円
・教育費:なし
・保険料:3.6万円
・通信費:0.6万円
・車両費:4.8万円
・お小遣い:36万円
・その他:20万円


飯田:長年海外で生活し、セミリタイアを機に奥様とともに帰国を考えていらっしゃる相談者様。現在気になっていることは、セミリタイア後に生活する住まいのこと。将来的に、奥様のお母様に介護が必要になった際は同居を視野に入れているそうです。海外で支払っている年金を日本で受給する予定。相談者様の場合、どのような点に注意をして、準備を進めていくべきなのでしょうか。

まずは、どこでどのような物件に住むのかを明確に

現在は持ち家で生活されており、現状、売却すれば住宅ローンは完済でき、利益も得られるような状態であるとのこと。大変喜ばしいことですが、立地や物件の状態はもちろんのこと、経済情勢によって不動産価格は変動します。定期的にどのような値動きをしているのかをチェックし、売却するタイミングを図り、日本での不動産購入の原資にしてください。

リタイアまでにいくら用意すれば安心か? とのことですが、まずは、どの地域でどのような物件を購入するのかを明確にしておく必要があります。

ご存知のように日本は土地が高く、東京や横浜、大阪等の都市部の不動産価格は高めです。たとえば、東京都のJR中央線沿線の23区内にあるファミリー向け新築マンションの物件価格は、諸経費込で目安は6000万円から。お隣の埼玉県のJR埼京線沿線では、諸経費込で目安は4000万円からとなります。一戸建ての場合は、これ以上の費用がかかりますし、中古であればこれ以下で済みます。

一度お義母様を含めて、どの地域でどのような家に住みたいのかを話し合い、必要となる費用はいくらなのかを算出。足りない分を準備するようにしましょう。

タイミングによっては、日本で年金の支払いが発生することも?

日本の年金はないとのことですが、日本在住者は60歳まで年金の支払い義務が発生します。どうしても支払いたくないのであれば、リタイアのタイミングを60歳以降にずらすなどの対策が必要です。

ただし平成29年8月より、海外在住者で日本の年金を支払ったことがある方の場合、年金を受給するために必要な期間が25年から10年に短縮されています。滞在国によっては社会保障協定が発効されており、年金の加入期間を通算することも可能です。国によって特例等もありますので、日本で年金を支払うべきかどうか、できるだけ損をしないためにはどのようにするべきかを知るためにも、リタイアを決める前に必ず、社会保険事務所で相談するようにしてください。

令和元年の年金保険料は1万6410円ですが、保険料は年々上昇しています。仮に保険料を1万7000円とした場合、ご本人が日本で支払う年金保険料は1万7000円×12ヵ月×5年(60歳まで)=102万円。奥様が支払う年金保険料は1万7000円×12ヵ月×7年(60歳まで)=142.8万円。夫婦で244.8万円、支払うことになります。

セミリタイアとのことですので、働き続け社会保険に加入する場合は給料天引きで半額の負担で済みますが、社会保険に加入しない場合は自分たちで負担しなければならないことをお忘れなく。

リタイア後を見据えて支出をセーブすることも視野に

現状の資産内容で推移した場合、現地での住宅ローンは物件を売却することで完済が可能。預貯金として毎月90万円、年間で1080万円貯蓄できていますので、相談者様がセミリタイアするまでの14年間で1億5120万円貯蓄できる計算です。現在の貯蓄残高3800万円、投資額は1100万円ですので、リタイア時には2億20万円貯まっていることになります。

この数字から考えていくと、購入する物件にもよりますが、現状のままの生活を続けていけば特別なことをする必要はありません。

しかしながら、気になるのが食費とお小遣い。ある程度の収入を得るためには、必要となる経費はかさみます。これは仕方ないことなのですが、夫婦2人で食費が12万円なのはかかりすぎです。すべて外食なのかもしれませんが、手作りの日を増やす等、支出を抑えることを考えてみてください。

お小遣いは36万円! 充分な収入があるので家計的には問題はないのですが、セミリタイア後にも同じ水準で生活できるのかは疑問です。

相談者様の場合は、貯蓄をするために支出をセーブするというよりも、将来の生活を見据えて支出をセーブすることを考えて欲しいと思います。多くの人がうらやむ生活を手に入れていらっしゃる相談者様ですので、セミリタイア後にも素敵な生活が送られることでしょう。

将来のビジョンを明確にし、お二人のライフスタイルを確立するようなプランを考えて欲しいと思います。

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