年間40個に参加!フェス・ジャーナリストが語るフェスの魅力

写真左から田中里奈、津田昌太朗

InterFM897が土曜の夜に放送している『Feel the moment』(DJ: 田中里奈)。8月10日は、ゲストに津田昌太朗(フェス・ジャーナリスト)を迎え、世界の音楽フェスティバルについてお話を伺いました。

初めて「グラストンベリー」に行った帰りの飛行機で、辞表を書いた

田中里奈(以下、田中):リストバンドがすごいですね!何個くらいついてますか?

津田昌太朗(以下、津田):10本くらいですね。この春から行った海外のフェスのものだけつけてきました。

田中:えー!この春だけでですか?まだ夏ですよ!

津田:フェスって一年中やってるものなんで、僕からしたら夏は折り返しみたいな感じですよ。みんな夏だ!フェスだ!ってなってるじゃないですか。でも春フェスとか冬フェスとかもあるので。

田中:世界中のフェスに行ってらっしゃるんですね。

津田:そうですね。アジアとかは夏でも、逆に南半球は冬なので、日本が冬の間は逆に夏フェスをやってるので、そういう風に世界中を飛び回ってます。

田中:津田さんは「グラストンベリー」(イギリス)に参加したことがきっかけで、会社を辞めてイギリスに移住したことから活動を始めたんですよね。

津田:もともと僕サラリーマンをやっていて、5年ぐらい広告会社で働いていたんですよね。その時に「フェスティバルライブ」っていうサイトを運営していて、それがボランティアのライターさんで成り立ってるサイトだったんです。それをライターとしてボランティアでやっていて。それとは別に海外のフェスにも行ってみたいなと思っていて、そこで「フジロック」のモデルになったフェスの「グラストンベリー」に行ってみたいなと。そしたら当時、海外フェスによく行ってる友達がチケットだけ取ってくれて、じゃあ一緒に行こうとなって、行ったんです。その時のヘッドライナーがThe Rolling Stonesでした。イギリスでストーンズを見るっていうのが夢だったので、「グラストンベリー」に行くというのとストーンズを見るという2つが重なったので、ライブですごく感動して、帰りの飛行機で辞表を書いてそのままやめて、イギリスに移住しました。

田中:すごい!それは何年前ですか?

津田:7年前ですね。それまでは日本中のフェスを回ってたんですけど、今はそれの世界版をやってるって感じです。

田中:今まで、どれくらいのフェスに参加したんですか?

津田:海外だと120くらいですね。僕は年間40くらいのフェスに行くんですよ。それを15年ぐらい続けてます。

田中:フェスって地域的にはどこで開催されることが多いですか?

津田:僕はイギリスに住んでいたんでイギリスを中心にするんですけど、スペインとかベルギーは多いですね。ヨーロッパは全体的に多いです。あんまり南欧とかが少なくて。最近はアメリカも強いです。「コーチェラ」とか。最近は中継されるんで、日本人の方も来年は行ってみたいなとなったりしてますよね。

田中:中継といえば、この前行った「トゥモローランド」(ベルギー)、「YouTubeで中継見てたら田中さん出てましたよ!」って言われて(笑)。確かに一番前の場所を陣取ってたんで。

津田:すごく前に行って見るタイプなんですね。

田中:いや、気づいたらスルッと。

津田:後ろから見るタイプの人もいるじゃないですか。じゃあ田中さんはわりと前に行かれるタイプなんですね。

田中:なんか自分ごとにしたいんですよ。外からHPを温存して静かに見るときもあれば、メインとかラストだと前に行って自分ごとで楽しみたいっていう感じの流派なんですけど(笑)。

津田:友達と踊るタイプですか?一人でも踊れますか?

田中:フェスってそのときその瞬間で行ってるメンバーも違うし一人では行かないので、それとの化学変化みたいなところがあって。例えばこの子とだったら前に行きたいとか、今日は遠くからチルってても良いかなとか。でも、日本のフェスだと前の方は後ろからどんどん人が来ちゃいそうだし、そもそもずっと前から陣取ってる人が多くて前に行けないじゃないですか。でも「トゥモローランド」行った時に、前の方でもパーソナルスペースが確保されているというか。

津田:スルスルっと行けるし意外と空いてますよね。

田中:それが意外で。

津田:日本とかだと前はギュウギュウに詰めてるんですけど、海外だと前もどうぞどうぞって感じで。

田中:みんなで楽しむっていうハッピー感がありますよね。

津田:フェスって国民性とかも出るんですよ。例えばアメリカとかヨーロッパとかはあまり並ばないんですけど、北欧って割と並ぶんですよ。でも面白い仕組みで、日本だと前にいて待っとかなきゃいけないじゃないですか。僕が行ったデンマークの「ロスキレ」ってフェスは、メインの隣に列ができてるんですよ。ライブやってないところに。それは先頭集団をライブごとに入れ替えするための列なんですよ。

田中:じゃあ人生で一番見たいライブが2つ続いちゃったら(笑)。

津田:そしたら一回ハケて並び直したりしないといけないですね(笑)。

田中:いろんな文化があるんですね。

”愛しかなかった”、ベルギーのフェス「トゥモローランド」

津田:僕は音楽を聴くこともメインですけど、その国の人と仲良くなって、そこで流行ってる音楽を教えてもらうのも好きなんですよ。そのためには話しかけないといけなくて、話しかけたりすると、観光地にいる人とは違う普通の人と接して仲良くなるということはあるので。そうやって友達を作っていって次の年は、その人に会いに行くみたいな。それが楽しみの1つですね。

田中:すごいですね。フェスを中心にいろんなことを楽しむみたいな。

津田:そうですね。フェスを理由に海外に行ってるんですよね。最近、旅系だと絶景とか流行ってるじゃないですか。でも絶景もいいけど旅の中にフェスを入れても面白いと思っていて。音楽好きの人はフェス楽しんだ後に他の街も楽しんで欲しいし、旅行好きの方は、フェスに行くことで今までにない経験ができるというか。

田中:オープニングでも最近ベルギーの「トゥモローランド」というフェスに行った話をしたんですけど、津田さんの本読んでると結構「トゥモローランド」の写真使ってますよね。

津田:そうです。なんか絵になるというか、温度感が違う絵が撮れるというか。ここでしか味わえない体験ができますよね。

田中:「トゥモローランド」、初めての参戦だったんですけど、シビレました。行く前からリストバンドが届く時とか。

津田:感動しますよね。箱で届きました?

田中:箱でした。海外から小包で忘れた頃に届くから、開けたらリストバンドと、今年は本が入っていて。その本もすごく作り込まれていて、分厚い物語に途中で付箋とかランドリーチケットとか、マップが挟んであって。

津田:チケット買うところから「トゥモローランド」は楽しいんですよね。

田中:津田さんが「トゥモローランド」に初めて行かれたのは、いつですか?

津田;僕は2013年ですね。でも今年は相当変わってると思います。

田中:その時は何送られてきたんですか?

津田:その時はイギリスに住んでたんですよ。友達同士で買って友達からリストバンドだけ渡されました。箱はいろんなパターンがあって、いろんなツアーパッケージがあるんですよ。買ってるのってワールドパッケージなんですけど、ヨーロッパだと、もっと簡単な仕様もあったりとか、それが違うんですよ。

田中:友達は、以前はオルゴールが入ってたって言ってました。

津田:「コーチェラ」も結構そうで。「トゥモローランド」と「コーチェラ」は、物が届くところから楽しめるというか。最近は安めでそういうのがない電子チケットのフェスもあったりするんですけど、この2つはチケットを買った時から家に帰るまでがフェスティバルっていうような世界観を提案してます。

田中:本当にめちゃくちゃ夢を見させてくれました。

津田:なんで「トゥモローランド」に行こうってなったんですか?

田中:友達が一昨年に行って、「うまく言えないけど、愛しかなかったよ」って言ってて。みんなで行こうってなって、友達が調べてコンセプトホテルとかコンセプトレストランとか予約してくれて。

津田:レストラン、僕は食べてないんですよ。

田中:レストランも売り出した直後に即完売するくらい人気みたいなんですけど、私が行ったのはメインステージを見渡せてコース料理が食べられるところでした。メニューとかもめちゃくちゃ「トゥモローランド」仕様で、箱開けたら手紙が入ってて、それが食べられるとか。

津田:音楽を聴きながら、それを楽しめるって感じ?

田中:音楽はあんまり聞こえないようになってる。じゃないと長居しちゃうから。急かさないけど回転させてるっぽくて。あとはホテル楽しかったです。

津田:ホテル泊まったことなかったです。

田中:「ワールドジャーニー」だったかな?で、ホテルとセットだと「トゥモローランド」仕様になったホテルに泊まれて、世界観が作り込まれて。

津田:じゃあホテルに帰ったら「トゥモローランド」仕様の夜食が?

田中:そう。部屋のアメニティも「トゥモローランド」になってたり、あと毎日プレゼントがもらえました。

津田:そういうのはお土産になったりしますよね。

田中:本当に、主催している人たちが誰かを喜ばせるためにやってるってのが伝わってくるというか。印象的だったのが、おじいちゃんおばあちゃんみたいな他のフェスでは見ない層の人たちがいたのが印象的で。それって世界的にはどうですか?

津田:最近日本でも、二世代で行くフェス流行ってますけど、ヨーロッパはフェス文化が長いので三世代で行ったりすることありますからね。「グラストンベリー」、この前行ったんですけど、そこで僕が話した中でいちばん歳が上の人で83歳ぐらいの人がいました。地元の人で。ずっと来てるらしくて。日本だって秋祭りとかあるじゃないですか、向こうの人にとってはあんな感じなんでしょうね。

フェスがスタートして50年、文化として根付いてきている

田中:フェス文化ってどれくらい前からのものなんですか?

津田:今年は大事な年で、1969年にアメリカで「ウッドストック」ってフェスが行われたんですけど、今年が50周年で。その記念フェスが開催される予定だったんですけど、キャンセルになって。なので50年前からフェスってあって。日本の歴史でいうと70、80年代からフェスってあったんですけど、1997年の「フジロック」からフェス文化が育ってきたって感じですね。僕が行き始めた2000年代前半とかは、フェスの決まりってなくて、初めは山ガールの文化と結びついたりだとかしてました。世界のフェス見てると、あんなにきっちり防寒対策してる国民はいないので、逆にあの文化は輸出できるくらい独自のものだと思うんですけど、その中で変わり目になったのは、2010年代前半の「ウルトラ」(アメリカ)っていうのが入ってきたり、「EDC」(Electric Daisy Carnival:アメリカ)っていうのが入ってきたり、そういうダンスミュージック系のフェスが海外から入ってきたことによってフェスの幅が広がったというか。今になって出揃った感じがありますね。

田中:フェスって言葉がどんどん根付いてきてるんですね。

津田:そうなんですよ。でも「ロッキンジャパン」と「ウルトラ」って全然雰囲気が違うじゃないですか。ファッションも全然違うし。僕は音楽が好きなので「ウルトラ」でロックを見て面白いと思ったり、逆もあると思いますけど、そういうクロスオーバーがあればと。凝り固まって、ずっと同じ音楽を聴くんじゃなくて、もっといろんな音楽に出会えばいいのになとは思いますね。

Feel the moment

放送局:InterFM897

放送日時:毎週土曜 24時00分~24時30分

出演者:田中里奈

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ハッシュタグ:#feel897
メール:feel897@interfm.jp

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