被災地の「声」乗せて 鎮魂や祈り 精霊流し

災害犠牲者を慰霊し被災者の思いを運んだ有明支縁会の精霊船=長崎市江戸町

 長崎市内では15日、424隻(2メートル以上、午後5時現在)の精霊船が流された。
災害被災地で支援活動などに取り組む諫早市のNPO法人「有明支縁会」(草野紀視子代表)は、昨年7月の西日本豪雨で亡くなった広島の犠牲者を悼む精霊船を作った。船には、熊本地震や九州北部豪雨などの200人以上の被災者が犠牲者の鎮魂や復興への願い、自らの心境をしたためたメッセージを飾り付けた。
 「長崎にしかできない形で慰霊をしたい」。その一心で、6月下旬に草野さんは船の製作を決意した。7月に毎週末、船に飾る布やメッセージカードを持参して各被災地を訪ねた。現地自治体や復興支援団体の協力を得ながら、被災者に自由にメッセージを記してもらった。
 熊本、広島、福岡、岡山の4県の子どもからお年寄りまで、200人を超える思いがしたためられた。「一歩一歩頑張っています。安心して下さい」「人のぬくもりを沢山いただき今は幸せいっぱいです」。災害に負けず前向きに生きようと自らを鼓舞する言葉や、やりきれない心境をつづった言葉もある。
 船の製作期間は約10日。高校生ボランティアにも手伝ってもらい仕上げた。全長約6メートル、高さ約3メートル。船首には「災害慰霊」、帆には「笑顔で安心できる世界へ」と書いた。西日本豪雨で亡くなった広島県坂町小屋浦地区の犠牲者の名前を記し、色鮮やかなちょうちんや千羽鶴などをあしらった。
 「長崎からも被災地を支えるんだという気持ちを発信したかった」と草野さん。「この精霊船が、これから少しでも被災者の方々の力になってくれれば」

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